第14話 サバイバル試験①

 サバイバル試験当日。

 ボクはバトルホールのバトちゃんと、ポメラニアンのポメちゃんの声で目を覚ます。


「ブルッ、ブルッ(起きろっ、飯はまだか)」

「キャン、キャン(起きてー、もう朝だよー)」


「うーん……」


 時計を見ると、今の時間は午前七時。

 そろそろ、冒険者ギルドに向かわないとヤバい時間帯だ。


 蹴伸びをして起き上がり、バトちゃんとポメちゃんにご飯を上げる。


「ブルッ、ブルッ(うん。不味い)」

「キャン、キャン(そうかな。固いけど不味くないよー)」

「そうだねー。固くて凄く肉々しいよね」


 バトちゃんとポメちゃんに出したご飯は干し肉だ。

 サバイバル試験には干し肉が一番と聞き、冒険者ギルドの帰りに買ってきた。

 でも、あんまり美味しくないから、ポメちゃん達に上げることにした。

 犬とかって干し肉好きなイメージだし、喜んでくれるよね! 馬はわからないけど。


 ポメちゃん達と共に固い干し肉を食べると、首輪を付けたポメちゃん達と共に冒険者ギルドへ向かう。


「ブルッ、ブルッ、ブルッ」

「ハッ、ハッ、ハッ」


 荒い息を吐きながら歩くバトちゃんとポメちゃんを連れ冒険者ギルドに入ると、笑顔を浮かべたマクスウェルとローレンスの姿が目に映る。


「マクスウェルさん、ローレンスさん! おはようございます!」

「ああ、おはよう」

「ペット連れでサバイバル試験を受けようなんて、中々、やるじゃねーか。くくくっ、面白すぎる」


 なにが面白いのかはまったくわからなかったけど、マクスウェルさんもローレンスさんも楽しそうだ。サバイバル試験。さぞかし楽しい試験なのだろう。

 しかし、楽しい試験とは如何に……。冒険者ギルド的にそれでいいのだろうか?


 そんな事を考えていると、『リーンゴーン』と午前八時を告げる鐘がなる。


「皆様。お待たせ致しました。それでは、これよりサバイバル試験の説明を行います。試験内容はとても簡単です。これより二日間、ダンジョンの中で生活を送ること。冒険者たる者、ダンジョンの中で二、三日過ごす事はざらにあることです。そのため、皆様には冒険者ギルドが管理するダンジョンの中で二日間、生活を送って頂きます」


 受付嬢さんがそう言うと、サバイバル試験を受ける冒険者見習いに一枚一枚、番号の書いた木の板を配っていく。


「今、お渡しした札を冒険者ギルドからの依頼品と見立てます。冒険者は時に、依頼に応じて依頼人や依頼品の運搬を行うこともある仕事です。ダンジョンで生活を送るだけではなく、その木の札を守ること。これもサバイバル試験の内容と致します。もし守れなかった場合や死の危機に陥りそうになった場合はその場で失格。その際には、試験官である冒険者があなた方をダンジョンの外に送り届けますので、安心して試験に挑むようにして下さい」


 なるほど。つまり、サバイバル試験を受ける冒険者見習いの一人一人に見張りを付けると、そういうことか。そして、危機に陥った時は守ってくれると……。凄いな。致せり尽くせりだ。


「説明は以上となります。それでは、皆様。私について来て下さい」


 修練場の奥の扉の前まで移動すると、受付嬢が扉を開く。

 するとそこには、森林が広がっていた。

 地下にいる筈なのに森林がある。これは凄い!


「ここが、冒険者ギルドが管理する森林ダンジョンです。それでは、皆様。中にお入り下さい」


 受付嬢さんに言われるがまま中に入ると、全員、ダンジョン内に入った所で扉を閉める。


「これより二日間。この扉を閉ざします。それでは皆様、頑張って下さい。あっ、言い忘れました。二日後の午前八時。札を持ってこの場にお集まり下さい。それでは、試験スタート」


 受付嬢が扉を閉めると、冒険者見習い達が一人、また一人と森に向かっていく。


「さあ、僕達も移動しようか。キャンプなんて久しぶりだね♪」

「ブルッ、ブルッ(マジか、今日は野宿かよ)」

「キャン、キャン(二日間、野宿みだいだよー)」


 バトちゃんもポメちゃんも楽しそうだ。

 キャンキャン鳴きながらはしゃいでる。


「あっ、折角だし元の大きさに戻そうか」


 バトちゃんとポメちゃんから『縮小』の呪符を取ると、元の姿に戻っていく。


「ブルッ、ブルッ(おお、元の姿に戻った)」

「キャン、キャン(体が重いよー)」

「おお、バトちゃんもポメちゃんもこんなに凛々しくなって……。でも心配だから、二匹とも身体を強化しておこうねー」


 宙をなぞり亜空間から『身体強化』の呪符を取り出すと二匹に呪符を貼り付ける。


「これで良しと……。それじゃあ、森にログハウスでも建てようか。バトちゃんとポメちゃんはボクがログハウスを建ててる間、遊んでいていいからねー」

「ブルッ、ブルッ(よし、逃げるぞ)」

「キャン、キャン(駄目だよー、ご主人様からは逃げられないよー)」


 うん。バトちゃんもポメちゃんも楽しそうだ。

 ボクがそう言うと、森の中に駆けて行った。


「さて、ログハウスを建てるために、まずは大地を真っ新にしないとね」


 バトちゃんとポメちゃんを見送ると、宙をなぞり亜空間から妖刀ムラマサを取り出し、構えると開合を呟く。


『起きろ。ムラマサ』


 そして妖刀ムラマサをゆっくり薙ぐと黒い奔流が森を覆った。

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