第22話 サバイバル試験⑨(MとLの悲劇)

「なるほど、それは大変でしたね……」


 どうやら、マクスウェルさんとローレンスさん。

 昨夜、ボクが帰った後、ゴブちゃんの集落に立ち寄ったらしい。

 それにしても凄いな。ゴブちゃん達、半日と経たず集落を完成させたのか。


「ああ、大変だった……。建物の扉を開けたら、そこではゴブリンキングとゴブリナがうっふーんであっはーんな行為に及んでいたんだ……」

「見たくなかった……。あれはトラウマものだ……」

「坊主にわかるか? 藁にも縋る思いで助けを求め、パンツ一丁のまま扉を開けてすぐ、ゴブリンの交尾シーンを見せつけられた俺達の気持ちがっ!」

「裸のゴブリンが俺達に寄って来るんだ……。その時奴らは交尾中……。ギンギンにおっ立てたゴブリンキングがパンツ一丁の俺達に向かってくる気持ちが坊主にわかるか? わからねえだろっ!?」


「そ、それは恐ろしいですね……」


 そんなシーンを見せつけられた上、ギンギンにおっ立てたままのゴブリンキングに縛られるなんて、恐怖以外のなにものでもない。


「ううっ……。しかも、あの野郎。俺達を縛り上げた後、なにをしたと思う? あいつ等はなぁ、俺達の目の前でまた事に及びやがったんだ」

「交尾再開だよ……。恐怖シーンの再来だよ……」

「目を閉じたら聞こえてくるんだ……。『ゴブッ、ゴブゥ!』というゴブリンの喘ぎ声が……」

「それが朝まで続くんだ……。お陰で一睡もできなかったよ……」


「そ、そうなんですか……」


 ゴブリン達、昨夜はお楽しみだったようだ。

 それを間近で見せつけられたマクスウェルさんとローレンスさんに心の中で合掌する。


「ま、まあ無事で良かったじゃないですか! そうだ。気分転換にお風呂に入ってきてはいかがですか? その間に朝食の準備をしておきますよ」


 暗い話題を払拭する為、そう提案するとマクスウェルさんとローレンスさんが顔を上げる。


「い、いいのか?」

「本当にいいのか!?」


「ええ、もちろんです」


 ログハウスの外にボク専用の露天風呂を作ってある。

『治癒』『活力』『順応』そして『浄化』の呪符を付した特製の露天風呂だ。

 いつでも入れるよう常時、お湯は張ってある。


 マクスウェルさんとローレンスさんには心身共に負った重い傷を癒すため、温泉に浸かってきて欲しい。


「お二人が着る服もこちらで用意させて頂きます。パンツ一丁のままは試験官としてまずいでしょう?」


 そう指摘すると、マクスウェルさんとローレンスさんが苦笑いを浮かべた。

 痛い所を突かれたと、そんな表情だ。


「ああ、そうだな……」

「坊主の言う通りパンツ一丁じゃ試験官失格だ。頼んでもいいか?」


「はい。もちろんです。ボクに任せて下さい!」


 今の二人は細身で血色の悪いヒョロヒョロのヒョロ太君だ。

 ボクが二人を試験官として相応しい体格にして見せる!

 謎の使命感に燃えたボクは、ボクが考えるかっこいい試験官像を想像する。


 試験官、試験官……。

 うん。なんだかイメージが湧いてきた。


「お風呂はこちらです。ここにタオルを置いておくので使って下さい。服は二人がお風呂に入っている間に用意しますね」


「おう! なにからなにまで悪いな」

「すまねぇな、坊主!」


「ええ、それではまた後でっ!」


 二人を露天風呂に送り届けた俺は、早速、服の用意をすることにした。


 試験官といえば、やっぱりアレだ。


 ボクは亜空間から身長が伸びた時に着ようと思って作ったダークカラーのスーツを取り出す。

 ここはダンジョンの中だから、普通のスーツでは多分、使い物にならない。

 しかし、ここにあるスーツは元いた世界で売られているような普遍的な代物ではない。

 ダークドラゴンの皮で作成した摩擦強度、耐防御性、型崩れのしにくさに優れ、見た目もカッコいい至極の逸品だ。

 布地に呪を印しているので、これを着用すれば冒険者ギルドの試験官として相応しい力を得ることもできる。


 ふふふっ……。完璧だ。

 問題点があるとすれば、男物のスーツが一着しかないという点。

 残る一着はレディーススーツということ。


 ほとんど洒落で作ったようなものなんだけど……。まあいいか。

 男から見ても魅力的で着用したくなるよう『魅惑』の呪を印しておこう。

『魅了』の呪は効果が強すぎるから流石にね。


「マクスウェルさん、ローレンスさん! 着る服を置いておきますね!」


 マクスウェルさんとローレンスさんが露天風呂から上がる前にメンズスーツ・レディーススーツ一式を脱衣所の籠に入れると、次に食事の支度をするため、ダイニングに向かった。


 食事の支度をするといっても簡単だ。


「豚ちゃん、豚ちゃん! お願いがあるんだけど、この肉と野菜を使ってなにか料理を作ってくれない? ボクとお客さんの三人分でいいんだけど……」


 そう言って、ログハウスの警備をしてくれているオークキングにお願いをすればいい。


「ブヒッ? ブヒブヒッ!(料理ですか? わかりました。お任せ下さい!)」

「うんうん。豚ちゃん、ありがとう! 愛してるっ!」


 流石はオークキング。一体、ダンジョンの外に持って帰りたい。ダメかな?


 ---------------------------------------------------------------


 いつも★、応援コメントありがとうございます!

 もし面白いと思って頂けましたら、★~★★★で、本作の応援を頂けると、とっても嬉しいですw

 ★評価を付けてくれている御方に最大限の感謝を!

 これからも更新頑張りますので、よろしくお願い致します。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る