第6話 特訓

 情報部隊が調査を終えるまで特攻隊は特訓をしている。もしかしたらヴィオレットとの決着がつくかもしれない。だからこそ広い訓練場で特攻隊全員を鍛え上げなくてはいけない。古代の吸血鬼は簡単に勝てるわけがない相手だからだ。

 新人であるプリスの実力を見てみたがどうやら彼女はレイピアという細剣が得意ということが判明した。彼女は女性であるため力は弱いが、俊敏性がある。速さで戦う彼女に大ぶりの武器など持たせたら彼女の強みが生かされない。だからこそ軽いレイピアが彼女に一番いい武器だと思った。

 俺の予想は合っていて、彼女はレイピアを持って特攻隊の隊員と模擬試合をしてみたところ、速さを生かして撹乱したり、相手が見えないほどのスピードから斬撃を繰り出したりしていて彼女の強みがはっきりと生かされていると確信した。

 「プリスはレイピアで確定するからな」

 「あ、は、はい!」

 特攻隊の隊員全員はそれぞれの得意武器を持ち合わせている。遠距離武器が得意なやつは弓矢や銃を持ち、近距離武器が得意なやつは剣や槍などを持つ。武器の重量もちゃんと考えている。小柄で力があまりないやつには軽い武器、力があって巨体なやつには重い武器。一人一人の強みに合わせて武器を選ぶ。これは特攻隊の中で当たり前と呼べる知識だ。

 「ちゃんと手入れしておけ。いざという時に刃こぼれしたら大変なことになるからな」

 「て、手入れの方法は…?」

 「ローズ、プリスに手入れの方法を教えてやってくれ。俺は他の隊員のコンディションやフォームなどをチェックしてくるから」

 「え?わ、分かったっす!後輩!レイピアの手入れはこうやって…」

 遠くでタオルでレイピアを磨いているプリスとそれを教えているローズがいる。指南は順調そうで良かった。情報部隊が手がかりを掴むまで最善のコンディションにしておかなくては。今の世代で全てを終わらせるためにも。もうこれ以上犠牲者を出さないためにも。

 隊員のみんなはちゃんと特訓できていた。筋肉痛にならないためにも無理をしない範囲で特訓しろと命令する。筋肉痛になった場合、本番で致命的な弱点となるからさせたくない。いつ情報部隊が手かがりを掴むか分からないから今日からは無理をしない特訓をさせる。

 武器の手入れなどもしっかり。刃こぼれしていたら研ぐ。武器も最高の状態にしておかなければだめだ。自分の武器もちゃんと手入れしている。隊員がしているのに隊長ポジションである俺が出来ていないのは恥の他ないからな。隊長は隊員の見本にならなければならない。それは上に立つ者の責務だ。

 特訓をしていると訓練場にあるスピーカーから放送が流れた。

 ー特攻隊に報告!情報部隊が紫の古代の吸血鬼の居場所を特定!明日、紫と戦う!戦略やコンディションの見直しを!ー

 どうやらプリスの読みは当たっていたようだ。あのマリーフォレストにいたようだ。これで紫とは決着がつくかもしれない。いや、つかせる。絶対にこれ以上紫に殺される人間を増やさないためにも。

 「が、がんばります…」

 後ろにいつの間にかプリスが居た。彼女が持っているレイピアは綺麗に手入れされたようにピカピカと光っていた。刀身が白色のためそれはダイヤモンドのようだった。ローズは手入れのプロフェッショナルでもあるから教えておいて正解だった。

 「それじゃあ、全員明日の準備を!」

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