第21話 黒炎

―― ドンッ!

―― ドドドドドドドドドっ!!

―― ドカァァァァンッ!!

―― ゴンッ!!

―― キィィィィンッッ!!


 イフリートは、肉弾戦でサミと戦う。


 牛丼は、サミの作り上げた分身体と戦っている。


―― ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴォォ!


 そして、牛丼は戦いながらイフリートの生み出す炎を見ていた。


牛丼

(もしかしたら、【水操作】と同じような感じで、炎も作り出せるんじゃないか?)


 牛丼はそう考えると、【水操作】と同じ要領で、目の前から襲いかかって来ているサミの分身体へ向けて手を向けた。


牛丼

「【炎操作】!!」


 牛丼はそう叫んだ。


 その時だった。


―― ドクッ

―― ドクッ

―― ドクッ


 嫌な気配


 嫌な予感


 嫌な空気


 嫌な匂い


 嫌な鼓動


 嫌な汗


 嫌な世界


 嫌な顔


 ……、嫌な……炎


 世界が止まったように見えた。


 世界が無くなったように感じた。


 世界がモノクロに見えた。


 世界が滅びたように感じた。


 何が起きた。


 ……


 ――


 ……………


 ―――――


 牛丼の手から飛び出したのは、黒い炎だった。


 ―――――


 ……………


 ――


 ……


イフリート

「牛丼殿!!」


牛丼

「な、なに!?」


イフリート

「その炎は……、【黒炎】は、もう使わない方が良いかもしれません。」


牛丼

「な、なんで。」


イフリート

「全てを燃やしてしまうからです。」


 牛丼はそう言われると、自分が手を伸ばした方を見た。


 そこには、先程まで居たはずのサミの分身体はいなかった。


 跡形もなく。


 それだけでは無い。


 そこにあった木々も跡形もなく無くなっていた。


イフリート

「その炎は、この世の物全てを破壊しかねない炎です。」


イフリート

「だから、使うのはやめた方が良いかもしれません。」


牛丼

「分かった、もうこいつは使わない。」


 牛丼とイフリートがそう話し合っていた時だった。


 サミの分身体の1人が牛丼へと近づき、右手を蹴りあげた。


 その結果、牛丼は持っていた剣を手放してしまう。


 サミの分身体は、その剣を掴み、崖の上へと投げた。


牛丼

「おいおい、マジかよ。」


 牛丼は、腹の傷を見る。


 そして、あまりモタモタしていられないと考えた。


 そして、その間にもイフリートはサミと戦っている。


 そして、サミの分身体の残りが牛丼を襲おうとしている。


 そして、牛丼はもう動けずにいた。


 身体が思うように動かない。


 もうダメだ。


 そう思ったその時だった。


カツ丼

「牛丼!!」


 崖の上から声が聞こえた。


牛丼

「カツ……丼。」


カツ丼

「俺は、お前に助けられた! だから、俺もお前を助ける!!」


カツ丼

「俺は、救ってくれた恩人を助ける!!」


カツ丼

「コレを受け取れ!!」


カツ丼

「そして、生きてくれ!!」


 カツ丼はそう叫び、何かを投げ落とした。


 そう、その何かとは牛丼の剣。


 牛丼はカツ丼の叫びに後押しされ、最後の力を振り絞った。


 だが、サミの分身体と牛丼に剣を取らせないために、先に掴もうとしていた。


 しかし、牛丼はそれを上回る速度で、地面を蹴りだし、空中へ浮かび、その剣を手に取った。


牛丼

「【ボルケイノ】第参奥義【音速一閃突】ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!」


牛丼

「ぬうぉをををぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」


―― ドンッ!!!!!!!


 牛丼は奥義で達した速度のまま地面に落下した。


 同タイミングで、イフリートもサミを倒したようだった。


 だが。


イフリート

「今、牛丼殿が倒したサミと俺が倒したサミは、分身体だった。」


イフリート

「まだ、本体がどこかにいる。」


サミ

「意外と楽しませてくれるのね。」


 背後から声が聞こえた。


 牛丼は、痛む身体を何とか動かす。


サミ

「またいつか会いましょ?」


サミ

「きっと、すぐに会えるわ。」


 サミはそう言い残すと、影の中に消えていった。


 直後、牛丼はその場に倒れ込んでしまった。

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