第20話 炎の精霊、イフリート

カツ丼

「ウッ……。」


 カツ丼は目を覚ました。


 どうやら、気を失っていたらしい。


リコ

「やっと目を覚ましましたね!!」


カツ丼

「えっと、君は……。」


リコ

「私の名前は、リコです! ぎゅーどんさんの仲間です!!」


カツ丼

「そっか、牛丼の……。」


 カツ丼は、横になっている自身の身体を起こし、周りを見渡した。


カツ丼

「イフリート……。」


 そして、カツ丼は木の影に体育座りで座っているイフリートを見つけた。


 どうやら、かなり落ち込んでいるらしい。


 カツ丼は、イフリートに近づいた。


カツ丼

「イフリート……、無事でよかった。」


イフリート

「……、俺は、」


イフリート

「俺は、お前を殺しかけた。」


イフリート

「もう、合わせる顔もない。」


カツ丼

「……。」


カツ丼

「俺はさ、才能も何も無いから、イフリートが羨ましかったんだ。」


カツ丼

「憧れの存在みたいな感じだったんだよ。」


カツ丼

「俺が追いかけたいって思うような奴だったんだよ。」


イフリート

「……。」


カツ丼

「だからさ、イフリート。1つお願いがあるんだ。」


イフリート

「なんだ?」


カツ丼

「きっと、牛丼は今も戦ってる。」


カツ丼

「牛丼の為に、お前が戦ってくれ。」


カツ丼

「何の関わりもなかったはずなのに、俺達のために戦ってる。」


カツ丼

「だから、頼む。」


イフリート

「……。」


イフリート

「あぁ、そうだな。」


イフリート

「お前の頼み、ちゃんと受け取った。」


イフリート

「任せておけ、牛丼は必ず助けてやる。」




―――――――――




―― ドンッッ!!

―― キンッ!!


 牛丼と牛丼を襲った刺客の戦いが続いていた。


牛丼

「くっそ!!」


 刺客は、物の影となっている部分から、自身の分身体を3体召喚し、牛丼と戦わせている。


 実質、4対1の構図が続いていた。


―― キン!!


 そして、とある1つの攻撃により、牛丼の持っていた剣が手から抜け、空中に放り投げ出された。


牛丼

「くっ!!」


 牛丼はその剣に手を伸ばし、掴もうとするが、その隙を刺客は逃さなかった。


 刺客の右手の爪が勢いよく伸び、そして鋭くなった。


 その爪が、牛丼の腹部を斬り裂いた。


牛丼

「!?」


牛丼

「ぐぬぅわぁぁぁぁぁ!!」


 更に。


 刺客の分身体が、牛丼の腹部を蹴り飛ばし、遠くへ飛ばした。


牛丼

「……。」


 猛烈な痛みが牛丼を襲う。


 もう、立つことも出来ない。


牛丼

「……。」


???

「フフ、頑張った方なんじゃないかしら。」


???

「最期に私の名前だけ教えておいてあげる。」


サミ

「私の名前は、サミ。」


サミ

「いずれ、王国を支配するであろうラドリー様の右腕よ。」


牛丼

「らど……りー。」


サミ

「じゃあね、佐藤牛丼♡」


 サミはその爪を牛丼へと振り下ろそうとした。


 その時だった。


―― ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴォォ!!


 サミを巨大な炎の塊が襲った。


牛丼

「この炎……まさか。」


牛丼

「お前は……、カツ丼から出てきてた……。」


牛丼

「テメェ、……、カツ丼……をどうし……た。」


 すると、イフリートは牛丼に向けてどけざをした。


牛丼

「?」


イフリート

「本当に申し訳なかった。」


イフリート

「俺のせいで、あなたを牛丼殿を……。」


イフリート

「もう、なんと言えばいいのか。なんと頭を下げればいいのか。」


牛丼

「……。」


牛丼

「フッ」


牛丼

「どうやら……、解決したみたいだな。」


牛丼

「アンタ、名前は?」


イフリート

「炎の精霊、イフリートだ。」


牛丼

「俺は、佐藤牛丼。よろしくな。」


 牛丼は、重たい右手をイフリートへ向けた。


 そして、2人は互いに握手をした。


 そのまま、イフリートは牛丼の手を引っ張った。


 そして、牛丼は立ち上がった。


牛丼

「力を貸してくれ、イフリート。そして、一緒にアイツを倒してくれ。」


イフリート

「あぁ、俺はそのつもりで来てる。」


牛丼

「いくぞ。」


イフリート

「あぁ。」

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