第15話 再会

魔物

「グヌウオォォオォオォォォォオオオォォ!!」


 魔物の叫び声が鼓膜を突き破るかと思うほどに聞こえてきた。


 恐らく、他の勇者のパーティが戦っているのかもしれない。


牛丼

(すぐに俺も参戦しないと!!)


 そして、しばらく走ると少し開け場所に出た。


 そこでは、巨大な植物型の魔物と3,4人ほどの勇者がいた。


 前線では、剣を持った勇者が戦っている。


牛丼

(俺も前線に行かないと!!)


 牛丼は走り出した。


牛丼

「【ボルケイノ】!!」


―― キーン!!

――キン!! シュ!! キーン!!


 剣で植物のつるを斬っていく。


 そして、かなり植物に近づいた牛丼は、剣を強く握り、低い姿勢から一直線に突き上げた。


牛丼

「【ボルケイノ】第参奥義【音速一閃突】!!」


 だが、牛丼はその奥義を途中で止めてしまった。


 理由は簡単。


 植物の蔓が再生し、牛丼の後ろで戦っていた剣を持った勇者を襲おうとしていたからだ。


牛丼

「まずい、あの蔓はヤバい!!」


 まるで、槍のようなその蔓は、先程のように何かを掴むのではなく、突き刺してしまいそうだった。


牛丼

「危ない!!」


 牛丼らそう叫ぶと、その勇者を抱き抱え、横に転がった。


 幸い、突き刺されはしなかったが、蔓の攻撃は当たってしまい、遠くへと飛ばされてしまった。


 建物の壁に強く激突した牛丼。


 激痛が牛丼を襲ったのだ。


牛丼

「くっ……!!」


???

「だ、大丈夫!?」


 牛丼が助けようとした勇者は、無傷のようだ。


牛丼

「だ、大丈夫だ。」


???

「それなら、良かった。」


 助けた勇者は、フードを深く被ってしまっている為、顔が見えなかったが、声からして女勇者であることは分かった。


???

「まだ戦える?」


牛丼

「余裕だ。」


???

「じゃあ、行くよ!!」


 そう言うと、勇者はとある剣を取り出した。


牛丼

「ま、待て。その剣は……。」


 そのとある剣とは、師匠が家に飾っていた剣だ。


牛丼

「なんで、あの剣をあなたが……。」


???

「ふっ。」


 フードを被っている女勇者は、何故か少し笑った。


 そして、その被っていたフードを取った。


牛丼

「!?」


牛丼

「お前……。」


牛丼

「ヒナ!?」


ヒナ

「随分と早い再会だね、牛丼。」


ヒナ

「話は後で、今はこのモンスターを倒そう!」


 牛丼も驚いたいたが、ヒナのその言葉を聞くと、なぜか笑っていた。


牛丼

「りょーかい!!」


―― ドン!

―― キン!!

――シュ!!


 そして、牛丼とヒナによる攻撃が始まった。


―― キンキンキン!

―― ゴゴゴゴゴゴゴコゴゴゴ!!

―― ドォォォォォォン!!

―― ブサァァァァ!!


 だが、


牛丼

「ぐわ!!」


 植物の蔓が牛丼の体を遠くへと吹き飛ばした。


 そして、植物の鋭そうな蔓がヒナの身体を貫こうとした。


牛丼

「くそ!!」


 やめろ、やめてくれ。


 嫌な記憶が走馬灯のように駆け巡る。


 俺はまた失うのか。


 大事な人を。


 何度も何度も失うのか。


 また、何も守れないのか。


 違う、守れないんじゃない。


 守らなかったんだ。


 守る力を持とうと努力もせずに、ただ俺の運命のせいだって言い訳して。


 守りたいなら、守れ!


 今度は、守りきれ!!


牛丼

(俺が持つ【ボルケイノ】や【オーバーカウンター】では、魔物に近づかなくては行けない。)


牛丼

(それでは、今ここから助ける事は出来ない。)


牛丼

(遠距離で攻撃出来る術はないのか!?)


 いや、ある。


 スライムくんが使っていたじゃないか。


 そうだ、あの技なら。


 いつものように見様見真似。


 やり方なんて分からない。


 でも。


 それで良い。


 それで守れるなら。


 どんなに不格好でも。


 どんなに不完全でも。


 牛丼はイメージする。


 スライムくんが使っていた技である【水鉄砲】を。


 すると、牛丼の手のひらに1つの水球が出来上がった。


牛丼

「これだ!!」


牛丼

「いけ!!」


 瞬間。


 【水鉄砲】がヒナを貫こうとする蔓へ向けて発射された。


 しかも、ただの【水鉄砲】のように真っ直ぐ飛んでいくのではなく、曲線を描きながら。


 予測なんて出来ないような軌道で。


 そう、これは【水鉄砲】ではない。


 この瞬間、牛丼は【水操作】を獲得したのだ。


 牛丼は、同じ要領で自身の背中に水を作り出し、建物に激突した。


 すると、先程よりかは身体への痛みが軽減されたような気がした。


牛丼

「これだ。」


 牛丼は、そのまま走り出す。


 掴め。


 倒せ。


 守れ。


 走れ。


 全てを守ると誓ったのだから!!


牛丼

「【水操作】!!」


 作り上げられた水がランダムな軌道を描き、植物の蔓を破壊していく。


 そして、牛丼はヒナの身体を抱えるようにキャッチし、地面にゆっくりと寝かせた。


牛丼

「大丈夫だったか?」


ヒナ

「う、うん、大丈夫、だよ……。」


 牛丼は、魔物の方を向いた。


 蔓の再生にはもう少し時間がかかりそうだった。


牛丼

「これで終わりにする。」


―― ドンッ!!


 牛丼が地面を蹴りあげる力強い音が鳴り響いた。


 そして。


牛丼

「【ボルケイノ】第参奥義【音速一閃突】!!」

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