第16話  テドン

牛丼

「……。」


 身体が、動かない。


 思えば、今日は戦闘続きの1日だった。


 体力の限界が近づいているのだろう。


 牛丼は、重たい金属のように動かない身体を無理やり動かす。


 そして、ヒナのいる場所へと向かおうとした。


牛丼

「ヒナ……、だい、じょうぶ……か。」


―― バタン


 だが、その途中で身体が傾き、そして倒れていった。


 そんな牛丼の身体を、ヒナが抱き寄せた。


ヒナ

「牛丼の方が大丈夫じゃないでしょ。」


 ヒナが微笑んでいる。


 牛丼はその顔を見ると、なぜか安心感が生まれてしまい、そのままヒナの腕の中で眠ってしまった。




――――――――――




牛丼

「ん……ん……。」


 かなりの時間が経過した時、牛丼は目を覚ました。


 まだ重たい身体を起こし、周りを見渡す。


 だが、どこにもヒナの姿がなかった。


牛丼

「ヒナ……。」


???

「目が覚めて第一声が女の名前とはな。」


 牛丼の後ろから聞いたことの無い声が聞こえた。


牛丼

「え? だ、誰ですか?」


???

「はぁ? お前さんが呼んだのではないか? 佐藤牛丼。」


牛丼

「えっと……、もしかしてあなたがテドンさん?」


テドン

「その通り。儂がテドンだ。そして、儂の後ろにいるのが、儂の弟子たちだ。」


牛丼

「は、はぁ。」


 状況がいまいち理解出来ていない。


 まるで、何の説明もしてないのに、俺の手伝いをしてくれるみたいな感じなんだが。


テドン

「社長や吉田から事情は聞いてる。是非、お前さんの為に働こう。」


牛丼

「え、いいんですか?」


テドン

「そう言っておるのだが。」


牛丼

「や、やったぁ!!」


 頑張って戦って良かったのかもしれない。


 それから、牛丼たちは現実世界にある株式会社勇者へと向かった。


 そこで、異世界に帰るための扉を通った。




―――――――――




《西暦2061年5月13日・カマームの街》


 扉をくぐり会社を出た牛丼たちは、その光景に驚くこととなる。


 全く人がいなかったはずのカマームの街が、いつものような景色に戻っていたからだ。


牛丼

(社長が全部解決させたのか?)


社長

「お! 牛丼くん!!」


牛丼

「社長! 」


社長

「無事にテドンくんと会えたみたいだね。良かった良かった。」


社長

「テドンくん、牛丼くんを頼んだよ。」


テドン

「任せておけというところかの。」


 そして、牛丼たちはタクトの森へと帰った。


 タクトの森では、森に残っていた仲間たちが暖かく出迎えてくれた。


 そして、傷だらけになっている牛丼の治療が始まったのだった。

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