第13話 人払い

《西暦2061年5月13日・牢屋》


ケンタ

「報告ゥゥゥゥゥゥゥ!!」


 とんでもない叫び声と共に、ケンタが飛んできた。


牛丼

「ど、どうした!?」


ケンタ

「鍵、見つけた!!」


牛丼

「おー! なら、早く出してくれ!!」


ケンタ

「任せとけってやつ!!」


―― カチャ


牛丼

「シャバってやつぅ?」


ケンタ

「提案。急いで外に出よう。」


牛丼

「分かってるっちゅーの!」


 牛丼たちは、牢屋のある建物の外へ向かった。


 そして、外に出た牛丼たちは、その光景に驚いた。


牛丼

「ここは、確かにカマームなんだよな。」


ケンタ

「解答。そのはずだ。」


牛丼

「人が……いねぇ。誰もいねぇ。」


牛丼

「不気味な程に静かすぎる。」


 牛丼は少し、人が全くいないカマームを探索した。


 少し探索した時。


―― ドンッ!!


 巨大な地響きと共に、牛丼を拳が襲った。


―― キンッ!!


 その拳を剣で受け止める。


牛丼

「誰だよ、アンタ!!」


―― スッ!!

―― ズン!!


 その背後からも拳が襲う。


 牛丼は、その時気がついた。


牛丼

(囲まれてる……!?)


 2人だけじゃない。もっといる。


 それに、この気配はまさか……。


牛丼

「テメェら、魔物か。」


 そのセリフと同時に、牛丼を取り囲んだ魔物が一斉に襲いかかる。


牛丼

「【ボルケイノ】!!」


―― キュイィィンッ!!

―― ゴンッ!!


 【ボルケイノ】の一振で魔物を吹き飛ばした牛丼は、カマームの広場へと向かった。


牛丼

「ここで、迎え撃つ!!」


 大量の魔物が牛丼を追いかけてきた。


 牛丼はその大量の魔物を【ボルケイノ】や【オーバーカウンター】を駆使して対応した。


―― キン!!

―― シュ!!

―― ドン!!


 だが……。


 牛丼の体力にも限界が近づいてきた。


牛丼

「はぁ、はぁ、このままじゃやばい!!」


 そう言った時、大量の魔物が一斉に牛丼を襲った。


牛丼

「くっ!!」




―――――

――――

―――

――




―― キンッ!!


牛丼

「なんだ!?」


 牛丼はゆっくりと目の前を見た。


 するとそこには、1人の男が立っていた。


 そして、大量にいた魔物が誰一人いなかった。


???

「大丈夫かい? 牛丼くん。」


牛丼

「あなた……は?」


社長

「私は社長だよ。」


牛丼

「しゃ、社長!?」


スライムくん

「ボクもいるよ!!」


 社長の肩にはスライムくんが乗っていた。


社長

「このスライムが私を呼んだんだ。」


社長

「牛丼が大変な目にあってるから助けてくれ、と。」


社長

「それで、街へ来てみれば【人払い】で誰もいなかった。」


社長

「つまり、今この街は何者かに狙われてるという事だ。」


牛丼

「なんでですか?」


社長

「それは分からないが、恐らくこの私をこの街から出さないためであろう。」


牛丼

「?」


社長

「私にバレてはいけない何かが、この世界で行われようとしているという事だな。」


社長

「とても嫌な予感がする。」


社長

「それよりも牛丼くん。君は何故ここに来たんだい?」


社長

「君は、タクトの森に行ったはずでは?」


牛丼

「それが、社長に相談したいことがあって。」


社長

「なんだ?」


牛丼

「タクトの森にしっかりとした家が欲しくて。」


牛丼

「それで、社長の人脈でタクトの森でも大丈夫そうな大工の情報が欲しいんです。」


社長

「なるほど、そういう事か。」


社長

「……。」


社長

「それなら、ピッタリな人間が1人いる。」


社長

「名前をテドンという。」


社長

「既に勇者を引退している奴でな、今は現実世界で大工をしている。」


社長

「直接話をすれば、もしかしたら力になって貰えるかもしれない。」


牛丼

「本当ですか!!」


牛丼

「じゃあ早速、現実世界に行かせてください!!」


社長

「別に、現実世界にはいつ行ってもいいんだがな。」


牛丼

「え? でも、現実世界にはどうやって行くんですか?」


社長

「あー、その方法を知らないのか。」


社長

「会社の最上階にある扉のドアノブに君のユウホをかざした後に、扉を通ると君の登録住所の近くに移動出来るぞ。」


社長

「確か、君の登録住所の近くにテドンもいたはずだな。」


牛丼

「おぉ! では、行ってまいります!!」


 その時だった。


 突然、黒い影が不機嫌に出現した。


 その黒い影は、だんだんと立体になっていき、次第にモンスターのような形になっていった。


牛丼

「魔物!?」


社長

「まずいな。街を囲まれてる。」


牛丼

「え!?」


社長

「牛丼くん! 君は早く会社へ行くんだ!!」


社長

「そして、扉を通って現実世界へ逃げろ!!」


牛丼

「分かりました!!」


 牛丼は社長からスライムくんを受け取り、会社へ向けて走り出した。


 だが、その行方を魔物が塞いだ。


牛丼

「くっそ!!」


 その時だ。


 突然、牛丼の足元から氷が出現した。


 勢いよく出現したその氷は、牛丼を空中へそして、前へと飛ばした。


牛丼

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


牛丼

(でも、これで会社に近づけた!!!)


 牛丼は、地面に着地した。


 そして、そのままの勢いで会社へ向けて走り出した。


 会社への道は、既に魔物だらけになってしまっている。


 とても遠く感じる。


 それでも、牛丼は剣を握り走り出した。


牛丼

「【ボルケイノ】第肆奥義【乱れ打ち】!!」


 そのまま走り出した牛丼は会社の中へ入り、そして最上階まで上り扉を開き、現実世界へと入ったのだった。

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