第12話 牛丼捕まる

《西暦2061年5月13日・カマーム前》


牛丼

「やっと、ついた……。」


 1週間ほど、牛丼とスライムくんはカマームへ向けての旅をしていた。


牛丼

「そんじゃぁ、一旦街に入るとするか。」


スライムくん

「そうだね! ボクお腹すいたかも。」


牛丼

「じゃあ、先に宿の受付に行くか。」


 そう言うと、牛丼はカマームの入口へと向かった。


 カマームの入口の門から中へ入ろうとした牛丼。


 しかし、その歩みを誰かに止められた。


牛丼

「?」


???

「これ以上の侵入は許せない。」


牛丼

「え、なんで?」


牛丼

「てか、お前は誰?」


門番

「俺はカマームの門番だ。」


牛丼

「門番って……。」


牛丼

「俺がカマームにいた時は、門番なんていなかったんだけど。」


門番

「とにかく、今は門番がいるんだ。」


門番

「それよりも、身分証明書の提示を。」


牛丼

「身分証明書?」


 牛丼はそう言われると、懐にあるユウホを取り出した。


 そして、勇者証明書と書かれているページを門番に見せた。


牛丼

「これで良い?」


門番

「うむ、確かに勇者であることには間違いないな。」


門番

「だが、そのスライムは?」


 門番は、牛丼の肩に乗っていたスライムくんを指さした。


牛丼

「俺の仲間だよ。絆も結んでる。」


門番

「なるほどな。」


牛丼

「通っていいか?」


門番

「敵。」


牛丼

「は?」


門番

「敵だ! 敵が現れたぞ!!」


門番

「スライムを連れた、勇者に扮した敵だ!」


 門番がそう叫ぶと、同じような格好をした門番がたくさん出てきた。


牛丼

「は!? いや、俺は本物の勇者だ!」


牛丼

「敵でもなんでもない!」


門番

「だまれ! そんなに魔物と同じ匂いをさせておきながら、言い逃れ出来ると思うなよ!!」


牛丼

「ちょっ、なんのつもりだ!」


―― シュッ!!


 牛丼のすぐ横を金属が通過した。


牛丼

「おい、おいおいおい。」


牛丼

「警棒なんて持って、随分とカマームは物騒になったんだな。」


―― シュッ!

――スンッ!!


 それからも、牛丼は門番たちの攻撃を避ける。


牛丼

(くっそ、何か打開策は無いのかッ!?)


牛丼

(流石に剣抜いて戦う訳にはいかないしな。)


 牛丼は、足元にあった木の棒を足で蹴り上げ、手でキャッチした。


 そして、警棒による攻撃を【ボルケイノ】で強化させた木の棒で受け止めた。


――ゴォォォッ!


牛丼

「何かの手違いだって!」


牛丼

「ちゃんと俺の話も聞いてくれ!!」


 だが。


 その瞬間、牛丼の首裏から猛烈な痛みが襲ってきた。


牛丼

「え?」


 そして、だんだんと意思が遠のいていった。


牛丼

(嘘……でしょ……?)


―― バタン




◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇




 目を覚ました牛丼は、見覚えのない景色を眺めていた。


牛丼

「どこだよ、ここ。」


牛丼

「牢屋の中?」


牛丼

「マジかよ。やべぇな。」


牛丼

「てか、スライムくんは?」


牛丼

「何がなんだか、マジで分からん。」


 牛丼は、牢屋の鉄格子の隙間から周りの様子を覗いた。


牛丼

「人もいねぇ。」


牛丼

「誰かぁ!」


牛丼

「助けてくれませんかぁ!」


 しかし、返答はない。


 牛丼は、ユウホを取り出した。


牛丼

「おいケンタ、目を覚ませ。」


ケンタ

「報告。いつだって起きてる!」


牛丼

「お前、ピッキングとか出来ねぇの?」


ケンタ

「解答。出来るわけないだろ。」


牛丼

「じゃあ、鉄格子の間から抜けて、この牢屋の鍵を探してきてよ。」


ケンタ

「質問。お前、もしやアレをやるつもりなんだな。」


牛丼

「なに、アレって。」


ケンタ

「解答。脱獄だよ。」


牛丼

「あー、脱獄ね。」


牛丼

「当たり前だろ、スライムくんの居場所も分からなくなってるし、ずっとここにいる訳にもいかないだろ?」


牛丼

「早く出ようぜ、こんな場所。」


ケンタ

「了解。すぐに行ってくる!!」


牛丼

「任せたぞ!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る