第6話 第参奥義

ラドリー

「お前たち、飛びかかるダネ!!」


 牛丼めがけて、数多の魔物が飛びかかろうとした。


 一方、牛丼は目を閉じながら『魂の星域』内で言われた事を思い出しつつ、コレルとのこの1年間を振り返った。


 木こりも釣りも畑仕事も。


 ただのスローライフだと思っていた事、その全てがこれから得ようとしている【ボルケイノ】というスキルへと繋がっているように思えた。


 スローライフこそが、【ボルケイノ】となった。


 牛丼は、閉じていた目をゆっくりと開いた。


 瞬間、牛丼を中心に巨大な衝撃波が発生した。


 【ボルケイノ】を継承した証拠だった。


 牛丼を襲おうとしていた魔物たちは、その衝撃波によって吹き飛ばされた。


ラドリー

「な、ぜダネ。」


ラドリー

「なぜ、【ボルケイノ】の継承が完了しているダネ!?」


 牛丼は、そんなラドリーの発言を気にもとめず、師匠の剣を握り、ラドリーへその剣を振り下ろす。


――シュッ!!


 牛丼が振るうその剣は、白く輝いていた。


牛丼

「【ボルケイノ】!!」


―― キュイィィンッ! キンッッッ!!


 ラドリーはそんな牛丼の剣を闇の力で受け止める。


ラドリー

「ククククク。ヌゥワアハハハハハハハハ!!」


ラドリー

「不完全!」


ラドリー

「その程度の【ボルケイノ】であるならば、まだ【ストラッシュ】の方が強かったダネ!!」


―― キュイィィンッ! キィィンッッッ!!


ラドリー

「!?」


 しかし。


 不完全と言われた【ボルケイノ】は、ラドリーの闇の力で作り上げられた腕を、簡単に斬り落としていた。


牛丼

「お前の負けだ、ラドリー。」


 牛丼は剣を強く握り、スキルの発動の源となる力、『魔力』を剣へと送った。


牛丼

「【ボルケイノ】」


―― キュイィィン


 そして、牛丼はラドリーへ剣を振り下ろそうとした。


 だが。


―― ドォォン! キィィンッ!!


 牛丼の背後から、ビッグゴブリンが襲ってきた。


牛丼

「ウッ!?」


 牛丼はビッグゴブリンの攻撃を受け止める。


 その一瞬の隙に、ラドリーは魔物を呼び出す。


 そして、牛丼から一気に距離をとった。


ラドリー

「新世代の継承者。続きはまた今度までお預けダネ。」


ラドリー

「私もアナタも、もっと万全な状態で戦った方が楽しいダネ。」


ラドリー

「次会う時までに、アナタが成長していることを楽しみにしているダネ!!」


牛丼

「くそ! 待て!!」


 牛丼は、離れていったラドリーを追おうとしたが、その進路をビッグゴブリンや魔物に塞がれてしう。


 その間にも、ラドリーは闇の扉のような物を作り、そしてその中へと消えていく。


 牛丼はラドリーを追うことを諦め、目の前にいる敵に集中する。


 あまりにも多すぎる魔物。


 そんな大量の魔物を相手に牛丼は何をするべきなのか。


 答えは1つだった。


牛丼

「スゥーーッ」


 息をたっぷりと吸う。


牛丼

「【ボルケイノ】第肆奥義……」


 牛丼の持っている剣が白く輝く。


 そして、牛丼は勢いよく地面を蹴り出した。


牛丼

「【乱れ打ち】!!」


 目に追えない速さで、乱雑に振り回されていくその剣は、牛丼を取り囲もうとしていた魔物たちを一瞬で斬り落としていく。


 そのまま、牛丼はビッグゴブリンへと向かっていった。


 そして、【乱れ打ち】のとある一打ちがビッグゴブリンの腹部に当たった。


―― キィィン!!


 だが、ビッグゴブリンにその剣が通ることはなかった。


 それでけでは無い。


 腹部に当たった剣は、そのまま牛丼へと跳ね返って来た。


牛丼

(か、カウンター技だと!?)


 剣が徐々に牛丼へ向かってくる。


牛丼

(まずい、このままじゃ。自分の技に自分がやられる。)


牛丼

(このままじゃ、死んじまう!!)


牛丼

(まだ、まだ、死ねない!)


 刹那、牛丼が思い出したのは、コレルの言葉と昔の記憶。


 ――【ボルケイノ】の第参奥義は突き技らしい。


 ――「【音速一閃突】」


牛丼

「!?」


牛丼

(自分に跳ね返ってきているこの剣を、真っ直ぐの方向に力強く力を加えることによって相殺させる。)


牛丼

(それだけじゃない。本当に弟の使っていたあのスキルが第参奥義として使えるなら、その速度は音速のはず。)


牛丼

(相殺どころじゃない。その流れのままビッグゴブリンだって倒せるはずだ。)


牛丼

(でも、違かったら? 俺のただの勘違いだったら?)


牛丼

(弟の使っていたあの技は、待ったく関係の無いものだったら?)


牛丼

「いや、」


牛丼

「悩んでる暇なんてない。」


牛丼

「やるか、やらないか、悩んでるくらいなら、やるしかないだろ。」


牛丼

「【ボルケイノ】第参奥義……」


 牛丼の握る剣が、白く、そして緑色へ変色していく。


牛丼

「【音速一閃突】!!」


 跳ね返ってきている剣の勢いと止め、さらに真っ直ぐ一直線に、ビッグゴブリンの腹部をめがけて、剣が走っていく。


 これこそが【ボルケイノ】の第参奥義だった。


牛丼

「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


―― ドォォンッッ!!


 そして、牛丼の剣がビッグゴブリンを貫いた。


 ビッグゴブリンは、その場に倒れた。


 そして、ガラスのようにその身体は割れていった。


―― バタン……。


 牛丼はその場に倒れてしう。


牛丼

(足に、手に、身体に、力が……入ら、ない。)


 そして、意識もそこで飛んでしまった。














「じゃあな、俺の可愛い弟子。」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る