最終話 ブスと言われたあの日からの自分へ
ミチエもマサキの頭から
マサキはハゲて顔はくすみ、シワとシミだらけ、
顔はくすみたるんでいるのに、
今は
「
「ああ、うん」
「お前美人になったな。42期一べっぴんだ」
「私なんて。マサキくんには美人の彼女がいたじゃん」
「あんな女知らねえよ。あのブス、彼氏ができたとか言って3ヶ月で俺を
「あ、そ」
「それより
「ねえ。私なんかよりカンナちゃんいるよ」
「え?ああ。いやあ、
マサキはそばにいるカンナの方には
カンナはさみしそうに立っていた。悲しそうな目をしている。
「なあ、このあとにメシいかね?」
怒りがこみあげてきた。
「
「何でだよ」
「ご飯がまずくなりそうだから」
マサキは赤い顔をさらに赤くした。
「何だと?調子乗んなこのブス!
「その
「はあ?何のことだよ」
「さんざん人のことをブスブス言って追いつめたモンスターは誰かって聞いてんの」
「知らねえよ」
「あっそ。ま、どっちにしろ私あんたのこと
「てめえ、ブス女。
「侮辱罪はあんただろ!大体人の外見をどうこう言えるなりをあんたはしてるの?」
「うう」
「うせろ。このモンスター野郎」
「お、俺トイレ行くから」
マサキはおろおろとして会場から出て行った。
カンナとサトミ、それから近くにいた元オケ部員たちが、ミチエに
「
「マサキは
「え?そうだったんですか?」
サトミもゆっくり手をたたきながら、
「そうよ。ですからあたくしはあなたにプライドをお持ちなさいと言ったの」
言われてみればそうだったかもしれない。
もし当時もミチエが今のようにマサキに言い返していたら、大学時代はまた違ったものになっていたのだろうか。
「俺たち、サークルでマサキのいじりをとめなくてごめんな」
「私たちも一緒に
元オケ部員たちは、口々にミチエに
「いえ、もういいんです。それより私も
ミチエはカンナの方をむいた。
「あのさカンナちゃん」
「うん?」
「その、あのときラインであんなこと言ってほんとにごめん。許されることじゃないけど、あのときは
「ううん。こっちこそごめん。ミチエちゃんが
「カンナちゃん」
「実は私もあのとき悩んでたの。みんな私のことをかわいいって寄ってきて、最初は
「そうだったの」
「女の人からものけ者のされたり悪口言われてつらかった。私はただミチエちゃんたちと楽しく過ごせればそれでよかったのに。私の顔も、マサキくんやミチエちゃんの言うブスだったらよかったのかなって、考えることもあったよ」
カンナは
ミチエも涙をぬぐった。
そういえば、大学のころ、カンナのよそおいが急に
「ごめん。本当に。私の心がせまかったせいでカンナちゃんのこと傷つけた」
「ううん。ミチエちゃんのせいじゃないよ。これからも友達でいてくれる?」
「うん。こんな私でよければ」
サトミは2人たちをながめ、上を向き、涙がこぼれないようにした。
「あれ?サトミ
周りにいる元オケ部員たちがほほえんだ。
「ふん。あなたたちはどうなのよ」
元オケ部員の中にも、もらい泣きをしている者がいた。
ミチエとカンナは涙ぐみながら、顔を見合わせて笑った。
「顔ってなんなんだろうね」
「ね。よく考えたら目と鼻と口がついただけの、何十センチの肉と骨の
「そんなものにあーだこーだ振り回されるなんて、人間は
「うん、バカだよね」
サトミが少し
「でもねお2人さん。顔はとても大事なパーツよ」
「そうですか?」
「だって、年を重ねればその人の生き方が現れるじゃない。優しい心でいれば優しい顔に、いじわるな心でいればいじわるな顔になるの。しわくちゃになったあと残るのは、骨と肉の位置や高さよりそういう
「そうですよね」
「それは確かに」
ミチエもカンナも、他のオケ部員たちもうんうんとうなずいた。
ミチエは考える。
中学生のあの日、ブスと言われてミチエは深く傷ついた。
そのため、大人になったミチエは
だが、どんなに
学生の頃、自分たちははっきり目に見える
社会は情報であふれているから、
大人は忙しく、長い人生の中で
子供は世界がまだせまいから、目にはっきり見えることしかわからない。だから外見を
でも本当は、人にはもっと目に見えないいろいろな面があり、年を重ねれば重ねるほど、
すべての人に好かれる必要はない。マサキのようにブスと言ってくる人ではなく、カンナやサトミ
そしてそんな顔になるために、自分が大切だと思える場で、まっすぐ
ブスと言われたあの日から傷ついた自分へ、そう言ってやりたかった。
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