第2章 キャンパスライフ
第5話 服と美醜
あるアパート。ミチエの部屋には朝日がさしこんでいた。
部屋は散らかり
特にファッション誌が何冊も開きっぱなしで床に放り出されていた。ある雑誌の開かれたページでは、足の長すぎるモデルの女性が、淡い
ミチエはといえば、全身が見える立ち鏡の前に立ち、にいっと笑ったり口をすぼめたりしていた。
メガネは外してコンタクトに。
髪も明るく染めた。
服はファッション誌のモデルと全く同じワンピースだった。
だが、太ったミチエには服がきつくてはち切れそうだった。それから
ミチエは鏡とスマホを交互に見る。
スマホに写っているのは、動画サイト、Youtsube《ようつべ》の動画だ。
『はい笑顔。はい口をすぼめる。この動きを1日20回すれば小顔と笑顔が手に入りまあす』
急にばんっと効果音がして、広告動画が入った。
「広告うざいなあ」
ミチエは広告動画を消そうとした。だが、広告の『
『
まぶたのビフォーアフターの写真が画面いっぱいにでた。
ミチエはつい、その広告のURLを押してみてしまった。
美容外科のページだった。さまざまな症例が紹介されている。目や鼻や、
手術直後の、はれたり傷あとが目立つ『ダウンタイム』という期間の紹介ページでは、赤黒いカサブタや、皮膚が紫にむくんでいる写真があった。
「痛そう。こんなのやる人いるの?」
ミチエは痛みに弱い。インフルエンザの予防注射でさえ怖いのに、手術なんか絶対したくない。
だがミチエは症例写真から目が離せなかった。
ページの最後に『ラインの友達登録でさらに症例を紹介!クーポンも!』と書いてあったので、ミチエは操られるようにクリニックのラインを友達に追加してしまった。
そこでやっと、スマホの左上のデジタル時計の数字に気づいた。
「あれ?もうこんな時間?授業始まっちゃう」
ミチエは急いで部屋を出た。
まだ授業は始まっていない。
生徒たちが続々と入ってきていた。
カンナは机に座り、
化粧っけはなく、着ているのは灰色の地味なワンピースだった。高校時代、しまうまむらのセール期間中に九百円くらいで買った。
そこへ男子学生がやってきた。
「ねえ、キミ
「え?あ、
「かわいいね。名前何て言うの?ライン交換しない?
「え?えー……?」
そこへ
「あ、おはようミチエちゃん。こっち来て」
カンナはすがるようにミチエに声をかけた。
男子学生はミチエを見ると、むすっとして少し離れた別の席に座った。
ミチエはカンナの
「今の友達?」
「ううん。知らない人。ナンパっぽかった」
ミチエは少し落ち込んだ。
笑顔の筋トレも、マッサージも、なけなしのおこづかいで買った雑誌のワンピースも、ブスなミチエの価値をカンナの千円もしなさそうな地味な服以上には高めてくれなかった。
まあ、仕方がないよね。
私、
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