第7話  日常①

週が明けた月曜日

教室の扉を開け『おはよー』と、声を掛けたら何故か女子に囲まれ

「おはよう蒼井君。コレ見て貰っていい?」

と、挨拶もそこそこに出されたスマホ画面には、後ろ姿だが俺と母さんの写真が写っていた

「これは?」


偶々とか盗撮とかの思いは有るが…


「これ蒼井君だよね!?隣の女の人って誰?どんな関係?まさか恋人とかじゃないよねっ!?凄い仲良さそうだけどっ!?お姉さん…じゃないのは何となく解かる雰囲気だけど、ホント誰っ!?」


おぉぅ…正に怒涛の勢いだな‥‥‥

その勢いに言い及んでるが


「言えないの!?」

「もうそんな関係!?」

「違うよね?違うって言って!?」

「終わったー私の人生終わったー‥‥‥」

「‥‥‥‥‥」

「私…決めてたのに‥‥‥‥‥」


ん~~~~何言ってんだこいつら?


「‥‥‥‥‥えっと母さんだけど?」


「「「「「「はっっっぁぁぁっっっ!?」」」」」」


「そんな訳無いじゃん!!」

「こんな綺麗なお母さん居てたまるかっ!?」

「今更そんな嘘言われてても…ヒッグッ…」

「こんなお母さん…うちのお母さんに謝って…」

「こんな…綺麗な人と付き合ってるなら…早く…言ってよぉ‥‥‥‥‥」

「ねぇ…蒼井君…」


支離滅裂?何だこれ?

「いやマジで母さんなんだけど」


「え?」

「えっ!?」

「ホントに?」

うんうん

「えっ!?」

「なんで!?」

何でって?

「ホントにお母さん!?」


「うん。俺の大好きな自慢の母さんだよ」

えっへん!


‥‥‥‥‥あれ?


「えっと‥‥‥朝からゴメンね、ちょっと少し色々勘違いしちゃって。じゃ私達はこれで、ホントにゴメンね」


そそくさと去って行く女子を見送り、首を傾げながら席に着く



「(お母さんなんだって…)」

「(あり得ないでしょ?あんなお母さん!)」

「(見なよコレ!どーみても夫婦じゃん!?)」

「(こんなモデルさんみたいなお母さんと私達は比べられるの?)」

「(ほんとだよ!もはやラスボスだよね)」

「(私等どんだけ磨けばこのお母さんに立ち向かえるのかな?)」

「(あたしには無理かな~)」

「(諦めるな!)」

「(でも、ぶっちゃけ無理有るよね?このお母さんの前立って裕翔君の彼女です!って言える?)」

「(((((無理ゲーでしかない!!)))))」

「(だよね?本人すらハードル高いのにさらにメッチャ高くなったよね?)」



ガラッと扉が開き

「おはよ~みんな席に着いてー!はぃはぃ早速だけど、とうかなお兄ちゃん?」


お兄ちゃんで反応しちゃってる時点で俺も駄目かもしれない…が、ふむ

「良く似合ってますよ。悪く無い組み合わせじゃないですか?」


「えへへ~一昨日帰ってから色んな組み合わせ試してみたんだ~ホントありがとね!また選んで貰っていい?」


「またって…一昨日みたいな偶然があったらですよ?」


「うん!」


「先生!?一昨日ってショッピングモールに居ました?」

と、女子からの声が


「ん?服を買いに行ったんだけど偶々お兄ちゃんとお母さんに会ってね、お兄ちゃんに色々服を選んで貰ってね~だけど私、お金足りなくって、お兄ちゃんに買って貰っちゃった~お兄ちゃんってねスッゴイセンス良いんだよ~♪」


!?


「ギルティーだよ先生!」


と、クラスの女子に連行された先生はしばし囲まれた後、泣きながら教室を出て行った…

あれ?HRは…出席すら取ってねーよ?




そんなやり取りがあった現在昼休み

弁当を食べ終え愛読書になりつつであろうビジネス書に目を落としてれば、ふと声が掛かる

「蒼井裕翔君かな?」


視線を上げればショートカットの目鼻立ちがスッキリとした恰好の良い女性だった


ん?と目線を合わせれば、その人は

「蒼井裕翔君だね?」


「そうですが?何か?」

何となくの上からの言葉にそんな返事を返したが


「えっと私の事は知らないか?」


「ええ、ご存じないですね」


「‥‥‥そうか…それは済まなかったね。私は今の生徒会長を務めてる大和小春やまとこはると言う。まぁ初めましてだね」

凛としたその佇まいで日本人形の様な容姿と黒髪に、着物が似合いそう等思いは有るが


「生徒会長でしたか…こちらこそ初めまして、蒼井裕翔です。宜しくお願いします」


ペコリと挨拶をしたが何故か生徒会長はとてもビックリした様相で

「えっと…そのだな…コホン!えっと新入生代表には生徒会に入って貰うのが毎年の決まり事なので誘いに来たのだよ」


「決まり事ですか?本人のやる気の有無を確認せず、問答無用で強制労働ですか‥‥‥?なかなか…ずいぶんな学校ですね?」


何そのメンドイの?


「あっイヤ…まぁ確かにその通りなんだが、そう言葉にされると此方も何も言えなくなってしまうな…それで、どうだろうか?」


「お断りします!興味の欠片も沸かないですね」


「興味の欠片も無い…か」


「ええ、今年は例外と言う事で他を当たってください」


「そっと…そのだな…私の立場も考慮してくれると有難いのだが?」


「立場ですか?こちらの都合や事情を全く理解されてないのに、貴女の立場を考慮しろですか?生徒会長とは随分と素敵な立場ですね?」


「あっ…いや…その…すまない…断られると思って無かったのでな…少々慌ててしまったよ…だが確かにその通りだな。そうだな、放課後少し時間を貰えないか?君ともう少し話がしたくなってね」


「放課後こそ時間が無いので無理ですね」


あれ?もしかしなくてもこの人自己中?

相手の都合って気にしない人?

大分棘付けて反論したんだけど伝わらない?

ヤベ~人に絡まれたな…兎に角駄目を伝えないとだな


「‥‥‥そうか。では、明日の昼休みに時間を貰えないだろうか?場所は生徒会室だが食事を取りながら話をしようじゃないか!なに、心配しなくて良い、ただ少し君と親睦をと思っただけだ!それでは明日待って居るからな!!それでは失礼する。」


と、逃げる様に言い切って立ち去ったが?あれ?こっちの都合は??





何?何なのよ!?あの子は…

まるでお父様と話をしてるような…

拒絶の言葉を貰ったのは初めてかしら…

私の言葉に堂々と目を合わせてからの否定…


あれ?私は‥‥‥




「聞いて下さいよ!黒崎さん—」


と、何やら学校の愚痴を言い始めた裕翔君だけど、当然とゆうか、本人が理解してないとゆうか…この子自分の事全く理解して無いのよね?お母さんと、バイトの事しか頭に無い。ほんと素敵な男の子…そして、ホント同級生じゃなくて良かった…クラスにこんな男子が居たら、その気になるしかないでしょう?舞い上がってたかもしれない。

だけどこの子を知ってからは年上で本当に良かったと思ってる。


会える時間が少ないから


仕事を教えて貰えるから


ミスをしての苦笑いも


仕事が一段落した時の凄くホッとした笑顔が


缶コーヒーを飲みながらふとした大人な顔を見せる横顔が


怒らないけど叱る顔が辛そうな雰囲気が


毎日の課題を出す意地悪そうな彼の顔が


幸せそうに語るお母さんとの出来事に


『良かったね』と言える自分に




入社するしかなかった私だけど、今はこの状況?出会い?は、もしかして奇跡?この子なんだけど彼?じゃない男の子は、凄くすっっっごくマザコンで、凄く素敵な裕翔君でした



「ねぇ黒崎さん、JKの生態系について色々教えて貰えませんか?」


…それは無理かな…お母さんじゃなくて、女の事を…ね


「あー私には無理じゃないかなぁ~裕翔君が気づかないとね!」


「何なんですか?母さんにも言われたし…全くもって全然解らん!俺なんかほっとけよ!俺は俺でメッチャ忙しいのにスゲーマジでうぜぇ~何なんだもう‥‥‥あっ!?ゴメンさない!今の無しで!」



だから頑張ってね裕翔君♪





































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