第6話  お母さんの休日①

本日はお母さんの休日

先日クラス委員決まってから連絡手段を聞かれ、やたらチャットアプリ推しだったから、今までガラケー使いだった俺はスマホに変える気分になったのだ。なので今日は買い物に行こうと思う


「ねぇ母さん」

「なぁに?」

「今日は買い物付き合って欲しんだけど」

「ん?それは良いけど何買うの?」

「んっとね。まずスマホそれから時計と財布かな」

「スマホ?時計とお財布は持ってるでしょ?」

「スマホは連絡手段が電話とメールだけじゃ不便になって来たからだよ。時計に財布は俺が使ってるヤツってなんか高校生っぽくないじゃん、だから使い分けしようかと思ってね」

「そっか、確かにそうよね…でもスマホってお母さんには解らないわよ?」

「大丈夫だよ母さん。俺も解らないから…店員のお勧めなら問題無いんじゃない?」

「じゃぁ~今日はゆう君とデートね♪」

「そうだね。じゃチャチャっと家の用事済ませて偶には外でお昼食べようか?」

「じゃぁ…お母さんはお洗濯するわね」

「それはダメ!俺の仕事だよ。母さんはゆっくり出かける準備でもしててね」

「むぅ~」



バイトを始めて一年半。ある程度貯蓄出来るようになってから、AIアドバイザーなる資産運用方法を教えて貰い全く知識のない俺はそこへ全部ぶち込んでしまった。

だが思いのほか上げ幅が大きかったので気付けば貯蓄が300を超えいた。

無駄使いするつもりは無いが余裕が出来た事は有難いと思う。何か有った時の為そして何時かこのボロアパートから出ていきたいから、まだまだバイトは頑張ろうと思う



さて行ってみよー

普段から運動してない俺は徒歩も十分運動の範囲。一時間ほど歩き大型ショッピングモールへ到着

まずは悩まなくても済むであろうスマホから。案内板に従いテクテクと…母さんが腕を絡めて来るのはむしろバッチコイなんだけど、四月とはいえポカポカ陽気で一時間以上もこの状況は流石に暑い…がご機嫌な様子の母の顔を見れば何も言えなくなる


携帯ショップ店内の様子を観ながら色々な機種のスマホを眺めるが、そのお値段にビックリだよ!中には10万を超える物も…その他も見比べるが7万・9万・12万等々…たかが電話でこのお値段っておかしくない?クラスの連中みんな持ってたけど、子供にこんな高額な物を買い与えるとか、最近のご家庭は子供にちゃんと金銭感覚を教えてるのかどうか心配になってくるよ…


店員さんを捕まえて色々質問してみて納得。ノートPCを持ち歩くのは不便だが画面が小さいのを除けば携帯するのに十分な機能が備わってた

5万もあれば買えるだろうと思ってたが足りないので母をショップに留めATMへ向かいお金を下ろす


店員さんのお勧めのままにそれを選び、いざ清算ってなった時に利用料金+分割なのを聞いた時になるほど…と何か良く解らない納得感があった

さっきの徒労は…と思わなくもないが、悔しさの思いも有り一括で払ってしまった‥‥‥


新装備を手に入れ、次は時計だな…母さんに選んで貰いそれを購入、財布も同様。ん~…買い物に来たんだけどサックリ終わったな。ま、男の買い物なんてこんなもんだ


丁度良い時間だし、散歩もした事だし少し多めにって事でステーキハウスへGo

「俺の買い物は終わったけど、どうする?」

「ん~…あっそのお肉も美味しそうね」

「ん?食べる?」

一口サイズに切り分けフォークを母の口元へ差し出す

「ありがと~♪」

パクッ、もぐもぐ…

「ん~美味しい…偶にはお肉もいぃわね~」

「うちは和食がほとんどだからなぁ、ガッツリお肉も偶には良いかもね」

「こっちのハンバーグも美味しぃわよ~はい、あぁ~ん♪」

「ん、ありがと」

照れる仕草も無く、まるで熟年夫婦の様な母子の様子に、その関係を知らない周囲の客は生暖かい視線やら嫉妬や妬みの視線を向けるが、しかしそんな視線は何処へやらと全く意に介さずイチャコラする母子である


食休みも終わりモール内をテクテクぶらぶら…


(えっ?あれって蒼井君じゃない?)

(あっホントだ!ってか腕組んでる隣の人って…)

(えぇっ?なにあれ?めっちゃきれー!どっかのモデルさん?)

(取り敢えず写メ取って情報流さないとだよね?)

(それはそうだけど…)

(ね?あの二人の雰囲気って…)

((だよねぇ~))



いつの間にか婦人服が並ぶ階をうろうろしてたようだ

「ん?あれって母さんに似合いそうじゃない?行ってみよう」


何時からだろう…俺の服は母が選び、母の服は俺が選ぶようになってた‥‥‥


「えぇ~ちょっと若過ぎない?」

「大丈夫じゃない?可愛い母さんも見てみたいな」

「もぅ!そんな事言われたら着るしか無くなるじゃない」

あれやこれやと服を選び試着室に向かった母を見送り他の服を選ぼうかと思ったその時、隣のカーテンが開き大量の服を抱えた人と…目が合った


「あ…ゆう…と…くん?」

「あっ先生こんにちは」

「なんで?」

「ん?何でとは?」

「こんな所で裕翔君が…じゃなくって此処は…えっと…なんで居るの?」

「今日は買い物に来たからですが?」

「そーじゃなくってーーー」


何故か混乱気味の先生との進まない会話をしてたら目の前のカーテンが開いた

「どぅ?」

「うん、良いと思う似合ってる」

「そぅかしら‥‥‥」

「大丈夫だよ、すごく可愛い。これから温かくなるしちょうど良いんじゃない?」


そんな母子の会話を遮って

「裕翔君!その人は誰!?」


そーいえば会話中だったな…

「あー先生、俺の母です。そして母さん、この人はうちのクラスの担任の鮎原先生だよ」


「ゆう君の先生でしたか、息子がいつもお世話になってます」

と、挨拶をしたが当の本人はパクパクと口を開き何やら驚愕してる様子は見て取れる


「はい!こ、こちらこそ裕翔君は私のお兄ちゃんです!!」


んーその自己紹介?は、おかしくない!?


「先生。一旦落ち着こうか」


「あっ、うん。ごめんね?こんな綺麗な人テレビでしか見た事無いから少し慌てちゃって…初めまして裕翔君の担任の鮎原です」


「ふふ…可愛らしい先生で良かったわね。ゆう君」


「あーうん、そうだね。じゃー俺は次の服選んでくるからちょっと待ってて」


次の服を選び終え試着室の前まで戻って見れば、先生が抱えてたであろう服を広げた母があれやこれやと何やら説明?してるようだ


「お待たせ母さん、次はこれね」

「あっうん、ありがと。それでねゆう君、先生の服も選んでやって♪」

と、試着室の中へ


「ん?先生の?あーうん、それは良いけど先生?その手に有る服はお気に召さなかったの?」

と、問いかけるが


「ん~と、色々持ちすぎて良く分かんなくなっちゃって…えへへ」

「そうですか、ではそれを戻しながら選びに行きましょう」

「えっ?裕翔君が選んでくれるの?」

「ええ、母さんに頼まれたので、取り敢えず3着くらい選びますか…」

「わ~い」


何て言うか…ほんと妹みたいだな…


それなりの時間を要し先生の服を選んだ後、試着室まで戻ると既に母が待って居た

「どうかしら?なんかぁ若過ぎる気がするんだけど…」

「そんな事ないよ、良く似合う!ねぇ先生?」

「うん。すっごく似合ってます!モデルさんみたい」

「だよね!よし全部買おう!」


テンション上がり気味の先生と俺の言葉に頬を染めながら試着室へと入って行く母を見送り


「次は先生ですね。どれを併せても大丈夫だと思いますよ」

「うん着てみるね」



その後わいわいと俺と母で先生の品評会が始まり、結果俺が選んだ服全て購入との事で一緒にレジへ向い先生の後ろへ並び順番を待つが、いざ清算となった時、財布を出す先生の動きがピタッと止まり、ゆっくりとこちらを振り向くその瞳はウルウルと…


「裕翔君…」

と、縋る様な声を出す先生にまさかとは思いつつ声を掛ける


「もしかして先生?手持ちが足りなかったりします?」


そう問いかけてみたが案の定コクコクと、肯定の頷きがあると同時に隣の母からトントンと肩を叩かれ母の様子を伺って見れば、ニッコリ笑顔でレジを指さす


その行動の意味を察した俺は先生の横に並び店員に声を掛ける

「すみません。これも一緒に清算お願いします」

店「畏まりました(きゃぁ~イケメンがイケメンしてるー)」

「いいの…?」

「ええ、せっかく似合う服が見つかったのに買えないのは残念ですからね」

店(えー言動までイケメンなんて完璧すぎる!ヤバい!!)

「あ、そっちとこれ、袋分けて貰っていいですか?」

「ごめんね…」

「謝らなくても良いですよ。服を選んだのは俺なので遠慮しないで下さい。その服を着て笑顔を見せてくれれば十分ですから」

店(ほんと何なのこの子慣れすぎでしょ?関係ない私が惚れちゃいそうなんだから隣の人はもうダメよね…モジモジしちゃってるし)

「えっと…その…ありがと♪」

店「(あっ落ちた)お待たせしました~お買い上げ有難う御座います(何番目でも良いから私も…)」




ペコペコと頭を下げる先生と別れ、その帰り道

「うふふ♪さっきのゆう君95点だったわよ~♪」

「ん?残りの5点は?」

「お母さんが言う前に動かないとね~」

「えっ?それ厳し過ぎない!?」































































  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る