第2話  新人

4月2日 入社式


「この5人が今年うちに入ってくれた新人だ。みんなよろしく頼むな!」


社長の簡単な挨拶が終わり式とは言えない入社式が終わる

後で簡単な挨拶でも良いかと、俺は自分のデスクへ向かう…


「おい裕翔!」


呼び止められキョロキョロと声の主を探し社長が手招きしてるのが見えたのでそちらへ向かう

「何ですか社長?」

今日は特に急ぎの作業は無かったはず‥‥‥


「あぁこいつなんだけどお前が面倒見ろ!」


ん?


「‥‥‥‥‥えっ?」

面倒見ろとは一体‥‥‥


俺が首を傾げてるのが解ったんだろう社長は

「だからぁ~お前が新人の面倒見るんだよ!」


解るよな!?みたいな顔しないでよ!

ふむ…つまりはメンドクサイ仕事を俺に投げたと?

只のバイトの俺に‥‥‥マジ?


「いやいやいやいや、俺只のバイトですよ!?そんな無責任な丸投げダメでしょ!俺には無理ですって!!そんなんだから未だに彼女も出来ないんでしょう?」


「うるせーよ!!俺は摩弥さんだけだっつーの!!いや。お前も充分うちに慣れたじゃねーか?それに新人教育も経験の内だぜ?」


くっ…尤もらしい事言いやがってこのクソ社長が‥‥‥って、うん慣れたねうん、思考が…うん


上手い言い訳が思いつかずチラリと隣の人物を見ればショートカットの太陽の下が似合いそうな‥‥‥‥‥引き攣った顔の女性だった…

何でこんな所に子供が?みたいな顔してるよ!?


「そんな嫌そうな顔してんじゃねーよ!他の奴は手いっぱいで任せられんんの裕翔しか居ねんだよ。いいな!これは、め・い・れ・い・だ!」


はぁぁ~と盛大に溜息を吐き

「この野郎母さんはやらね~っつてんだろ!!わ・か・り・ま・し・た!でもどうするんです?学校始まっちゃったら此処へ来るのは夜ですよ?」

嫌味を込めて了承してやったぜ!今度から飲み物頼まれたら常におしるこ買ってやる!!



「取り合えず春休み中だけで。その後は…ん~~考える‥‥‥じゃ後は任せた」

ホントちゃんと考えてね!?


名ばかりの社長室(仮眠室)へ入るのを見届けてから改めて女性の方へ向き直し

「えっと初めまして、蒼井裕翔です。取り敢えず数日ですが宜しくお願いしますね。名前でも苗字でも気軽に呼んで下さい。ほんと只のバイトなんで…」


「あっ、えっと…はじめまして?え~っと私は黒崎唯くろさきゆいって言います。宜しくお願いします。えっとじゃぁ裕翔君って呼んでも?」


ええ勿論と承諾

まぁ流石に困惑気味の挨拶だよね、解るよ…うん、俺も困惑してるもん

ってかどーすりゃ良んだ?

何する?何させる?

ん~全くも持って解らん‥‥‥まぁこんな時はアレだよねぇ


「取り合えず休憩しながら自己紹介でもしません?」

ズバリ大人の対応…先延ばし!






「え?休憩ですか…?」

私は困惑した

入社式的な?社長の話が終わったら子供の下に付けと?

しかもバイトって言ってるし‥‥‥

めっちゃわけわからん!

しかも始業から30分もたってないよ?


「あーうちはやる事やってればかなり自由なので」

子供の顔して大人の雰囲気出さないでよ!

綺麗な顔して‥‥‥

ブラックの缶コーヒー飲んでるし…

初対面だけど私年上で良かったよ!ドキドキ…



「うちって片親なんですよ‥‥‥」


そんな話から始まった自己紹介は私には衝撃的だった


初対面では何でこんな子供が?なんて思ったけど全然違った


私は今まで何もかも適当でとりあえず大学に進学して、とりあえず単位だけは落とさない様に適当に過ごしてた…おかげでやりたい事も見つからず。そして何がしたいのか解らないまま希望の会社に内定貰えず、とりあえずで採用してもらったこんな所に就職してしまったと、思ってた…


でもこの蒼井裕翔君の話聞いてたら、今までの自分が恥ずかしくなってきた…信じられなかった


この子、ほっっっっんとクッッッソ真面目なのね、色々かなり大分壊れてるけど…

笑顔で社長に感謝をつらつら言うブラック企業の社畜が存在するとは思わなかったわよ!!


これから高校生になる男の子に‥‥‥


それからちょいちょい出て来るお母さんの話は止めて貰っていいかな!?

すごく惚気聞かされてるみたいで腹立つのよ!

親子なんだろうけど彼氏居ない私には何か何かなんかぁぁぁ~~!!!!


「ん~…じゃぁ取り敢えず俺の仕事のサポートしてもらって良いですか?」


なんて言われたけど私には何が出来るか分からず裕翔君に付いて行く


「あっ…机用意されてないですね‥‥‥適当すぎんだろあのおっさん‥‥‥今椅子を用意するので少し待って居てくださいね」


と言って居なくなったけど、彼のデスクだろうPCモニターには女の私が一目惚れしてもおかしくない素敵な女性の壁紙だった‥‥‥

(えっ?めっちゃ綺麗…凄い!!でも、こんな人知らない…モデルさん?いや、でも…私が知らないだけで、凄く有名な人かしら‥‥‥めっちゃ憧れる!!)


 「お待たせしました、取り敢えずパイプ椅子ですけど直ぐに黒崎さんのを用意させますね、で、暫くは一緒の机使いましょう」


と言って椅子を広げ座るよう促されたが

「あの~この壁紙の人って私が知らないだけで有名人だったりします?」

うん、めっちゃ憧れたよ女の私が惚れたよ!こんな人になりたいよ!!


「ん?あーこれ俺の母さんですよ」


なっ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ふっっっざっっけんなよ!!

私がほっっっっんとぉぉぉに何もしてなかったと、今の今まで少ない人生だけど、マジでとってもホントに物凄く後悔した瞬間だった‥‥‥


頑張れよ!過去の私‥‥‥‥‥ホントマジで‥‥‥お願いだから…


適当しててごめんなさい‥‥‥‥‥



「あっ!今日は定時でいいですけど明日から1,2時間残業できます?」



‥‥‥‥‥定時が初日だけなんだね











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