第16話

 気がつくと、岐神社の境内にいた。

 空には、蒼い夕焼けが見えている。そしてすぐに空は闇になった。

慌てて起き上がってみると、あたりには誰もいない。

 そうか、僕は、現代に戻って来たんだな。

 ズボンのポケットを探ると、スマホが出てきた。電源は入ってる。

日付は2025年、あれから3年経っていた。

 鳥居をくぐると、懐かしい街の風景が戻ってきた。

 商店街にも人がいて、聞きなれた掛け声が響いている。それを聞いていると、なぜか涙が溢れてきた。

 もう向こうに戻ることはないのだと、その時強く思ってしまった。

 それでも、記憶だけは残っている。ヒメコ様の暖かさも、ナガスネの剛腕も、ミカシキの人懐っこさも、みんなの優しさも。

 そして、アスカ。

 助けてあげられなくて、ごめんね。この身と代えても守りたかったのに。

 今まで、こんなに誰かに気持ちを思い入れたことはない。もう二度と、こんな思いをしたくない。

 このままどこかに逃げてしまうことなんか、もうできない。みんなと一緒に、戦いたかった。この気持ちを忘れるもんか。絶対に。


 少しの間、抜け殻のような身体の操作に手間取っていたが、それも長く続かず、また僕は普通の生活に戻っていた。でも、以前のような無気力な生活ではない。

1年遅れでも卒業して、作業療法士の資格を取って誰かのために役立とうと決めている。

 国家試験まで、あと3ヶ月。ここから逃げることは、ない。


「今宮、ちょっといいか?君はまだ就職先を決めていなかったな。ちょっと紹介したいところがあるんだ」

 国家試験の勉強に本腰を入れ始めると、このタイミングでアドバイザーの先生が就職の話を持ってきた。

「あ、はい。わかりました。後で研究室に伺います」

「今、空いてないか?ちょっと急ぎの話でもあるんだが」

「あ、大丈夫です」

「じゃあちょっとついて来てくれ。私の研究室に行こう」

 急ぎの話って何だろう?今は就職より国家試験対策を優先している学生が多いので、そんなに就職活動が盛んな時期ではない。

 それに、こんな時期まで就職が決まっていない学生は、ほとんどが国家試験合格に自信がなくて、試験が終わってメドがついたところで就職活動をしようという連中ばかりだ。成績優秀なヤツらは夏休み前に決まっている。

 そういう連中を尻目に、僕はあの世界で戦っていた。


 研究室に招かれ、ゼミ用の椅子を勧められると、先生が話し始めた。

「東京にある東水大学ってわかるか?」

「はい」

 そりゃ、日本で一番有名な大学ですから。

「そこの附属病院で、急に作業療法士の欠員が出て募集をすることになったらしい。自分の学生時代の同期がそこの准教授をしていて、誰か優秀な学生を送ってくれないかと頼まれたんだ。君、興味ないかな?」

「東水大学附属病院ですか?」

 あの東水大?入学だけでなく、就職だってかなり難しいと聞く。北進大学からなんてどう考えても高望みだろう。

 それに、何で僕?

「君は最近、目つきが変わったように何かに向かっている気配がするんだ。1年生の初めの頃はあまり覇気がなかったように思えたけれど、解剖学だったか、単位を落として留年してから見違えるようになった。私はその姿に可能性を感じるんだ」

 その後、戦いに赴くようになったからなあ。あの頃は仕方なく勉強してたし。

「はあ。それは有難いお言葉なのですが、私のように留年もして成績もそんなに良くないのが東水大に行くなんて許されるのですか?」

「許されるも何も、採用試験は受けてもらうから、それで相手がどう判断するかどうかだな」

「そんな、結果が見えているのに、わざわざ玉砕しに行かなくても・・」

 結果が見えているのに、負けるのがわかっているのに、みんな突っ込んでいったな。

「受けるかどうかは君が決めることだが、もし君が断ったら、もうウチから他の学生は推薦しない。対象者がいなかったと言って断るよ」

「え、僕より優秀な現役の学生は、まだいるんじゃないですか」

「成績だけならな。でも仕事って、成績だけでするもんじゃないからな。特に医療職なんて、己との戦いだろう?修羅場を潜ったヤツの方が、持ち堪えるんだよ」

 先生は僕がどんな修羅場を潜って来たかは知らない。それなのに、どうしてそんな風に思ってくれるんだろう。たかが単位を落として留年した程度しかしらないはずだ。

 あの、悲惨な、勝ち目のない戦いを僕が見て来たなんて、知らないはずだ。

「今、決められないか?断るならそのように東水大の友人に伝えるけど」

 結果はたぶん見えている。でも今ここで引くことは出来ない。あっちの世界で一緒に戦うのだと思えば、この程度の試練など痛くもない。

「いえ、今返事をします。受けさせてください」

 先生は少し意外そうな顔をしたが、僕の目をまっすぐ見て僕に言った。

「そうか。そう来るか。うん、そう思っていたよ」

 僕には僕の戦いがあるんだ。もうあそこには戻れないけれど。


 1年前に卒業した将馬は、地元のリハビリテーション病院に、柳本さんは同じく地元の介護老人保健施設に就職した。

 僕からみれば先輩になっちゃったから、もうあまり話す機会がなくなってしまうんだろうな。

 その輪の中に入れなかったのは自分が悪いんだから、仕方のないことなのにね。


 幸い、ここに戻る前の僕は、3年間真面目に大学へ行って勉強をしてくれていたみたいだ。おかげで、1年の時の解剖学以外で落とした単位はなかった。

 そこからは、遅れていたというか、記憶にない時間を埋めるように猛勉強して、国家試験に臨んだ。就職という目標もできたので、迷うことなどなかった。

 何だかあの時代の戦いに臨む気持ちみたいだったが、こっちの戦いは命までは取られない。大切な人を失うこともない。

 人のために戦うのではなくて、自分のために戦うのだから。


 国家試験の結果は、合格だった。また、東水大学附属病院にも就職できた。就職は先生の推薦も効いていたのだろう。

 大学に入学前、下手な絵しか描けなくて、何をやっても自信のなかった僕が、これから大学病院で患者さんに関わるなんて、5年前には全く想像できなかったなあ。留年した時に、何もかも諦めてしまっていたはずなのに。

 そもそもあの時、あの背の低い、髪の長い先輩に会わなかったら、あのオープンキャンパスでスケッチブックを見なかったら、こんな人生にならなかった。

 そして、あの世界に行くことがなかったなら。


 大学病院に就職後は、2週間ほど一般研修があった。すぐに病棟でリハビリテーションをやるというわけではなく、最初に大学や病院の仕組みを学ぶ。大きい病院だから、こうした教育はしっかりしている。

 以前、将馬は、就職した途端に先輩と担当を回らされたと嘆いていた。それでも、まだ学生だった僕には少し自慢気に聞こえた。もちろん悪意はないんだけど、なんかうれしそうに話していたから。

 一般研修には、総勢70名の新規採用者が参加していた。いろんな職種がいるようで、ユニフォームを見るとおおよそどんな職種かはわかる。

 半分以上は看護師で、リハビリテーション部門は今年は僕一人だけということだった。ここのリハビリテーション部門は、厳しいが多くの勉強ができるということで人気があり、就職したらあまり辞めないと聞いている。

 こんな僕で本当によかったんだろうか?周りに迷惑をかけないで、仕事についていけるかな。

 同じ職種もいないので、誰とも話をせず俯いて指定された席に座っていると、隣の席に人が座ったようだった。

 その人は、僕にはっきりした声で挨拶をしてくれた。

「あ、おはようございます!」

 ぼーっとしているところに急に声をかけられたので、こちらも慌てて挨拶を返して、声の主を見る。

「私は秋津紫野。看護師です。あなたは?その色はどこかな?」

 え。

「君は、ア・・」

 そっくりだ。

 僕は思わず立ち上がって、相手の肩をつかんで顔を凝視した。

「はい?アキツシノって発音するのよ。昔の彼女さんと似てて、間違えた?」

 いや、違うのか。そうだよな、現代にいる訳ない。

 あの時、本殿の天井が崩れたし。

 秋津さんはゲラゲラ笑っている。笑い方もよく似ている。

「ごめんなさい。よく知っている人に、そっくりだったから・・」

 慌てて僕は彼女の肩から手を離し、非礼を詫びた。

「なあに、新手のナンパかな、あはは、大胆だね!」

 この病院は部門でチームカラーが決まっていて、それを覚えておけばどこの部門の職員かが大体わかるようになっている。リハビリテーション部門は濃いネイビーのスクラブだ。ユニフォームの色から、この人は看護師であろう。

「作業療法士の今宮陵です。リハビリテーション部門です。よろしくお願いします」

「今宮くんね。就職して初めて会った人だから、覚えておくわね。私が君の彼女さんに似てるみたいだし」

 その看護師は薄いピンク色のユニフォームで、この人の明るい顔に似合っている。

「あ、いや違います!彼女なんて、いたことがないから・・」

 うわ、僕は何て恥ずかしいことを言っているのだろうか。あ、でも、この世界では、ってことになるのかな。

 彼女はニコッと笑って前を向いた。横顔も瓜二つだ。

「それでは、ただ今から新入職員の一般研修を始めます。みなさん席についてください」

 事務職員の声に促され、会場が静まり返った。


 最初の週は挨拶やら講義やら、座学が中心で、後半は少し退屈気味になった。でも2週目からの研修は、講義とグループ演習が織り混ざっていた。

「これからグループ演習を行うのでグループになってもらいます。1グループは7人です。ここに掲示するので、各グループに集まって座ってください」

 講師の先生が、スクリーンにグループ分けの表を映し出す。

 リハビリテーション部門はどうせ一人だけだから、あまり誰がいるとか気にせず自分のグループ番号を探した。

 あった、第5グループだ。

 そこに、見覚えのある名前があった。秋津紫野―。

 第5グループの場所に机を移動すると、秋津さんが僕を見て声をかけてきた。

「今宮くんも同じグループだね!よかった、よろしくね」

「はい、ありがとうございます」

 よかった、と言われて、思わずお礼を言ってしまった。


 2週間後、一般研修を終えて部署に配属されての専門研修となった。ここでは、先輩の作業療法士がチューター役として半年間、指導してくれる。この間に、作業療法士としてやらなければならない仕事を、全部覚えることになる。

 確かに、これだけていねいに教育される病院はあまり多くない。忙しい職場だとは聞いていたけど、これならすぐに辞める人はいないだろう。

 最初は、文字通り目が回るほど覚えることがたくさんあって、家に帰ったらそのままベッドに倒れ込むように寝てしまったものだが、2週間くらい経つと身体も慣れてきて、家に帰ってから少し本を読んだり勉強したりできるようになった。

 部門に所属後、一般研修で親しくなった他部門の同期と交流会をやろうということになって、演習でグループを組んだ7名で食事会をすることになった。

 くじ引きで、僕はその幹事に当たってしまった。

 幹事なんて大学でも一度もやったことがないのに。どんな場所を選べばいいんだろうか。

「今宮くんは、あまりこういうことやったことがないの?リハの人って、宴会好きそうな人が多いって看護の先輩から聞いたけど」

 幹事にはもう一人、秋津さんがくじに当たっていた。

「うん、あまり友達もいなかったし」

「そうなんだ、そんな風に見えないけどな」

 あの世界では、そうじゃなかったけれど。みんなと笑って、ご飯を作って食事したりしてたから。

「僕、大学を1年留年しているので、みんなと歳の差があってうまく中に入れなかったんだ」

「へえ、そうなの?留年があるなんて厳しい大学だね。何を落としたの?」

「解剖学」

「あー、それって入学して割と早めに習う科目だよね?だったら1年目で?」

「そう」

「なるほどー。そうすると残り3年間ズレるもんね。それはかわいそうだね」

 年下の秋津さんにかわいそうと言われると、余計辛い・・。

「まあ、1年くらいどうってことないんじゃない?それに、だからこうして出会えたんだし・・」

 何を照れているのか話の脈絡が見えないが、秋津さんの顔がほんのり赤くなっている。

「コホン。それじゃあ、お店探しをしましょう!」

「うん、そうだね」

 今日は二人とも勤務のない日が同じだったので、何件か候補の店に実際に行こうということになった。

 交流会のことで秋津さんとメールでやりとりしているうちに、なぜかこうなってしまった。

 ネットで探してそのまま予約すればいいのに、と思ったけど、秋津さんが実際に食べてみなきゃわからない、と言い出した。

 最近忙しくてまともな食事を取っていなかったから、まあいいけど。

 もしかして、これって、デートかな?

 いやいや、秋津さんが僕にそんな感情持つはずないし。

 これは、あくまで懇親会の会場探しだから。そうそう。それ以外の意味、ないでしょ。

「7人だから、4人と3人で隣り合う席でもいいよね?」

 最近は、会食の人数制限がある店が多い。なんか急にしきたりが多くなった。

「和食や居酒屋がいいのかな?それとも女子はイタリアンとかオシャレな店がいい?」

 秋津さんに聞いてみた。女子はどんなところを喜ぶのだろうか。7名中4名は女子だ。この際、野郎どもの意見は無視していいだろう。

「うーん、いろいろじゃないかな。女子とか男子とか、もう関係ない時代でしょ」

 確かに、もう女子と男子しかいない社会ではなくなったみたいだよね。

「私は、焼き鳥とか、おでんとか、好きだな」

 秋津さんは、イケメンだ。あんなに可愛らしいのに、言うことがカッコいい。女性の看護師さんって、結構カッコいい人が多いかも。

「もちろん、イタリアンやフレンチとか、おしゃれな店も好きよ。あー、好きな人と二人ならね・・」

 後半はごしょごしょと、よく聞こえないくらいの声の大きさだったけど。

「今回は7人いるので、少し大きめの店にしようよ。それにまだみんな給料も安いしね」

「あはは、それもそうね」

 よかった。今二人でと言われても、どうしていいかわからない。

「あの焼き鳥屋さんは?安くて美味しいって評判よ」

「うん、そうなんだけど、いつも混んでて席が取りにくいって先輩が言ってたよ。それに、活気があるから賑やかだし。もう少し静かに話せるところがいいなあ」

「あら、意外とデリケートなのね。わかったわ、もう少し探してみましょうか」

 確かに、考えがハッキリしてる秋津さんから見ればデリケートかもね。でも、周りがうるさいと気になってしまうから。

「ここは?ちょっと雰囲気が良さげよ。値段もそんなに高くなさそうだし」

 秋津さんがスマホで検索をかけて、新しい店を見つけた。

「どんなところ?」

「ここ」

 僕にスマホの画面を見せようと顔を近づけてきて、僕も画面が小さく見えにくかったので顔を寄せると、頭をぶつけてしまった。

「痛あ!」

 お互いにそう言って、それから同時に笑い始めた。

「もう、画面だけ見せてよ」

「ごめんなさい、つい夢中になって」

 二人とも笑っているけれど、心臓はドキドキしていた。こんなにドキドキしたのは、久しぶりかも。

「じゃあ、これから行ってみる?ちょっとお腹も空いてきたし。下見ってことで」

「あ、うん。そうだね。行ってみようか」

 ドキドキしたのは、秋津さんと頭をぶつけたからだ。それだけだ。

 お店に着いて、何名様ですかと店員さんに聞かれて、秋津さんが指を2本立てて言った。

「二人です」

 いや、7人入る場所を探しにきたんだから、ここは事前にそう説明すべきなのでは?

「どうしたの?」

 少し慌てた表情をしている僕を見て、小首を傾げて聞いてきた。

「7人入る場所を探しにきたんだよね?それなのに二人って・・」

「今日は二人っきりでしょ。それは後で尋ねればいいじゃない。どうしたの?何か緊張してる?」

「あー、いや、そんなことないけど」

「変なの」

 秋津さんはクスッと笑って、店員の後ろを付いていった。

 二人用の席に案内されて、メニューを開いた。

「基本は和食なのね。パーティーコースもあるみたい。まずは、いろいろ頼んでみましょうか」

「うん」

「今宮くんは、何が好きなの?洋風?和風?」

「僕はあまり食事に興味がある方じゃないので、秋津さんが好きなものを頼んでよ」

「えー、ここは、これが美味しいよ、とかリードしてくれるものじゃないの?」

 秋津さんが小悪魔のように笑っている。

「ま、今宮くんがそんなことできるような人だったら、二人で来ていないけれどね」

 うーん、今、絶対馬鹿にしてきたよな・・。

「じゃあ、私の好きなものにするね。お願いしまーす!」

 秋津さんが店員を呼んで、注文をする。

「まずは、ビールね!それと、肉じゃがと、この焼魚、それと鶏肉の炭火焼きをお願いします」

 え?それって。

「何よ、まだ何か頼む?好きなもの頼んでいいって言ったのは、今宮くんなんだからね」

「あ、いやそれでいいです」

 店員が去った後、もしやと思って尋ねてみた。

「今のメニューは、秋津さん自分で作れるの?」

「え、ああ、できるわよ。大した手の込んだ料理じゃないし」

 さっきのメニューは、最後の日に作ってくれたものと同じだ。

「えっと、それで、それを誰かに作ってあげたことって、ある?」

「え?誰かって、彼氏とか?いやだ、何言ってるの」

 秋津さんが僕をみて笑っている。

「あるわけないでしょ。彼氏なんかいた試しがないもの。あー、でも」

「今宮くんになら、作ってあげようかな」

 そもそもこの時代にいるはずないし、もしいたのなら以前のことを覚えているはずだし。だから、そんなことは絶対にあり得ない。これはデジャブなのか、何なのか全くわからない。

 少し、落ち着こう。

「わー、それはありがたいな。僕もこういう素朴な味なら好きだよ」

 余裕のある返答をしたけど、顔の表情は引きつっていた。

「そうなんだ」

 秋津さんはそれを見てクスクス笑っている。

 そうこう話しているところに、注文した料理が運ばれてきた。

「うん、美味しい!」

「本当だ、美味しいね」

 運ばれてきた料理を食べながら、二人で普段の仕事のことや友人のことなど話していた。

秋津さんは今、救命救急部に配属されていて、とにかく毎日が忙しいという話をしていた。

「それでねー、もうとにかくー、やることがいっぱいでー」

僕は緊張もあって、普段よりビールを飲むペースが早かったけれど、全然酔わない。

 秋津さんは、何杯もビールを飲んでいい気分になってきているようで、眠そうだ。普段の仕事で疲れているんだろうな。

「秋津さん、眠いのかな?そろそろお開きにする?」

「うーん、まだ大丈夫・・」

「いや、眠いでしょう。もう身体が揺れてるよ」

「じゃあ、今宮くんの肩を貸してよ・・」

 何かをなぞるように、場面が同じように進んでいく。違うのは、いる時代と配役だけ。

 でも、もう会えないんだよな。

「ねえー、次行こー、次」

 本当に、カッコいいな。

「もう疲れてるんだから、今日はこれくらいにしようよ。会場探しはできたんだから」

「えー、まだ飲み足りないのー」

 向こうでお酒が飲めていたら、きっとこんな展開になっていたんじゃないだろうか。

「また今度、二人で来ようか」

 あ、しまった。向こうの世界でなら言えた言葉だったかも。

「ほんと―、絶対らよー、覚えてるからねー」

 きっと明日には覚えていないだろうから、大丈夫だね。

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