第5話
翌朝から私は修司くんに好かれるために全部を我慢した。
修司くんが私以外の女と話していても、帰りに手を繋いでくれなくても、無理やりホテルに連れていかれてヤられても。
私は我慢した。だって彼のことが好きだし、彼が私の身体を使ってくれることで、私だけを見てくれる二人だけの世界に包まれていたから。
だから私は修司くんのためにできるだけのことをしていた。彼は私のモノだから。そして私の身体を自由にできるのも彼だけだから。
「修司くん。今日はどこ行くの?」
「ん。あぁ。そうだな。とりあえずホテル行こうぜ」
「あ、うん」
私は言われるがままに修司くんについて行った。二度と彼を離したくないから。
ホテルにつくなり修司くんは私の身体に強く抱きつき服の上からブラを外してくる。
私はそれを受け入れた。この時間だけが彼を独り占め出来るから。
「ベッド行こうぜ」
「……うん」
私は修司くんについていきベッドに寝る。そして彼の身体を受け入れた。
彼の乱暴で私の身体を何も考えていない腰振りは痛みがすごく気持ちよさなんて何も無かった。
けれど私を独占してくれていて、そして私も彼を独占できているこの時間がとても嬉しかった。
事を終わらせたあとも、冷めることなくキスをしてくれて、私がどれだけ彼のことを好き好き言おうが彼も答えてくれる。その関係が好きだった。
毎日のように学校が終わればラブホに行ってえっちをするという生活を続けていると、隆二くんと鉢合わせした。それもラブホ前で。
「隆二くん」
「よぉ。隆二」
「修司。それにそこに居るのは修司のセフレか」
私は何を言われているのか全くわからなかった。付き合っているから彼と身体を交わしていたのに、それがセフレになるっておかしいとまで思っていた。
「修司くんの彼女だよ……?」
「セフレだよ。お前修司のこと独り占めしようとしてたけどさ。修司のやつほかの女と付き合ってるぜ?」
「え?」
私は驚きから修司くんの顔を見た。すると修司くんは何故か笑った。
「なんでそれ知ってんだ?」
「……こちらにも色々と情報源ってのがあってな。大事な女守るにゃ何でも手使うんだよ」
「お前こそゴミじゃねぇかよ」
私は目の前で起こる出来事に脳がついて行かなかった。でもたった一つ分かることは、私は本当に身体目的だったんだってこだけ。
「修司くん……」
「あーあ。せっかく今日クラスの童貞どもにヤらせてやろうと思ったのに計画がパーだ。じゃあな由利香。お前との関係も本当に終わり」
私はただ好きな人と一緒に生きたかっただけなのに。
ただ私だけの彼で居て欲しかっただけなのにこの気持ちってダメなんだなって思っていた時だった。
あの前の時のような気持ち悪い音がなると同時に次は目の前で倒れる修司くんの姿があった。
隆二くんの拳には以前とは比べ物にならないほどの血がついていた。
修司くんの顔を見ると鼻から多量の血を流し泣き目になっていた。
「い、いてぇな!」
「これが今の由利香の心の痛みだ。分かったんならさっさと消えろ」
修司くんは鼻を抑えながらどこかへ走り去った。
そして隆二くんは私の元に来て、頭を撫で始めた。
「……忠告聞かないからこうなるんだ」
「ねぇ。隆二」
「ん?」
「人を、好きな人を独り占めしたいって気持ちは間違いなの?」
「間違いじゃない。俺がそうなんだからな」
「へ?」
「由利香。お前が好きなんだよ」
「……」
「今は答え出ねーだろうけどさ」
隆二くんが昔から見せてこなかった照れ顔。私はその顔で隆二くんがどれだけ真剣なのか、どれだけ私を守ろうとしてくれていたのかが伝わってきた。
私はそんな隆二くんをただの噂で毛嫌いしていた。
恥ずかしくなり顔を手で覆いかぶせた。
すると隆二くんの暖かい手が私に触れて、覆いかぶせていた手を退けられる。すると目の前に隆二くんの顔があった。
「……俺はお前を独占したい。まだ気持ちの整理なんかつかないだろうから、答えは全然後でいい。ただいま伝えておく。俺はお前が好きだ」
「……」
私はただただ黙り込んでしまったまま、隆二君から離れた。
隆二くんは追いかけようともしてこなかった。
☆☆☆
翌朝のこと私は隆二くんと修司くん二人ともを学校のある場所に呼び、話をつけようとした。
「ありがと。二人とも」
「早くしてくんね。お前に構ってる暇ねーんだけど」
「……」
私は修司くんの顔を見ながら言った。
「独占欲がそんなに悪いの?」
「うん。悪いけど?」
「……あっそ。もういいよ。隆二くん」
「おう」
私と隆二くんは修司くんの前にある機械を置いた。
「んだよこれ」
「ボイスレコーダーだよ」
「は?」
「私をレイプさせようとした証拠がある」
「……や、やめろよ」
「謝ってよ」
「は?」
「謝って」
「……悪かったよ」
隆二くんは態度が気に食わなかったのか、修司くんの顔にビンタを入れる。すると修司くんはキレて胸ぐらを掴みあげた。けど結局自分が悪いと思ったのか、胸ぐらから手を離して次は私の方に目を向けて言った。
「……本当に悪かったよ。もうお前には手出さないよ」
「うん」
これで修司くんと私の縁は切れた。
独占欲ってそんなにダメですか?
束縛ってそんなにダメですか?
そう自分に問う。けど答えは見つからなかった。
でもたった一人の男の子によってそれは解消された。
「独占欲は悪くない。好きな人を独り占めしたいって気持ちは間違いじゃない」
その言葉で私は決めた。遅かれながら隆二くんと私は付き合うことにした。
数年後私はモデルとして売れた。横にはマネージャーとして、隆二くんがずっと居てくれた。
「隆二くん」
「由利香」
様々な経験を出来たおかげで、私は今幸せを掴めた。
隆二くんも私をずっと独占してくれている。
彼を独占したい私と縛られたくない彼 徳田雄一 @kumosaki
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