第4話

 翌朝から私は校内のどこへ行こうが、授業中にしようが修司くんの隣に居続けた。校内ではバカップルだと言われ続けていた。


 修司くんはそんな噂に嫌気がさしながらも、私を不安にさせないようにずっと傍に居てくれていた。友人と話す時もできるだけ私の傍に。


 私は満足していた。修司くんを独り占めする訳では無いけど、修司くんと一緒に居れることに。


 そして、数ヶ月が経った頃。今までの流れで言えば別れる時期が訪れたが、私は別れるつもりもなく、修司くんとなら一緒に居れる。そう思っていたがそのぶん、何故か修司くんが他の女と話している時、同性の友達と話している時、嫉妬してしまうようになっていた。


「修司くん」

「……なんだよ」

「こっち来て」


 修司くんはこの時期から冷たくなってきていた。傍に居てくれはするものの、態度や言葉の節々から鬱陶しいというオーラが湧き出ていた。


「ね、ねぇ。私」

「……お前鬱陶しいんだよ。俺は縛られたくねーの」

「し、縛ってなんかないよ?!」

「……いいからどっか行けよ。俺に一人の時間よこせよ!」


 修司くんは怒ってどこかに行ってしまった。私は追いかけようとしたが、別れたくなくて追いかけなかった。


 数時間後授業が全て終わり、修司くんの元へ行こうとした時だった。修司くんは女の子と楽しげに会話をしていた。私にもあまり見せたことない笑顔をしながら。


 私はその時何故か怒りが湧き始めた。好きな人の笑顔ほどいいものなんてないのに。

 ここで私は気づいた。彼は私のものなのにって嫉妬していることに。


 気づけば修司くんの腕を掴みながら、私はせかせかと校外に出ようとしていた。


「離せよ。由利香」

「修司くん」

「んだよ」

「……ほかの女と話さないで。私だけのものになって」

「……きもちわる。独占欲強い女無理なんだよね」

「え?」

「別れよーぜ。俺と」


 私は思いがけない言葉に驚きを隠せずにいた。そして修司くんの胸ぐらを掴みながら私は泣き叫んでいた。


「捨てないでよ。悪いとこ治すから!」

「全部だよ。ちょーっと優しくしてやったらこれだ」

「……え?」

「テメェの身体目的で付き合ってやってんのに、結局ヤらせてくれる素振りもなけりゃ次は俺を独占しようって。笑わせんなよ」

「……修司くん?」


 気づけば私は修司くんに顔を殴られていた。


「離せよ。全くよ」


 そう言い修司くんが私の元を去ろうとした瞬間だった。


 バギッッと骨の折れるような変な音とともに、私の目の前に尻もちを着く修司くんの身体があった。そして目の前には拳に血をつけた隆二くんの姿があった。


「修司。独占欲の何が悪い。テメェを愛してくれてた証拠だろうが。テメェこそ本物のド畜生で気持ち悪いぜ」

「……隆二」

「だからやめとけって言っただろうが。由利香」


 修司くんと付き合って。やっと何かを探しているような感覚が失われたと思いきや、この事態。私は何が何だか分からず、ただただその場で泣いた。


 隆二くんは優しく私を撫でてくれた。

 修司くんは私に謝ってくれた。


「……修司くん」

「由利香。俺とやり直してくれ」


 隆二くんは黙って見つめていた。私の答えを待っていた。


「わ、私も悪かったところがあるから……」

「おう。俺も言いすぎた。ごめんな」


 修司くんと私は再び関係を取り戻した。と思っていたが、隆二くんは顔をしかめて私を睨んだ。


「……何も分かっちゃいねぇよ。由利香」

「な、なにが!」

「もういいわ。お前がどうなっても知らねーから」


 私はこの忠告を聞くべきだった。

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