第2話
私は翌朝から修司くんと一緒に登校し始めた。
「お、おはよう修司くん」
「ん。おはよう」
修司くんから発される言葉一つ一つに優しさを感じていた。そして耳に心地よいイケメンボイスに私はただ満足していた。
私は修司くんの優しさにもっと触れたくて、手を繋ごうとしては、腕を引っ込めて出して引っ込めてを繰り返していると、修司くんはそれを悟ってくれたのか無言で私の手を握ってくれた。
察し能力の高い彼に私はますます凄いなと感じていた。今の場合は私が分かりやす過ぎただけなのかもしれないけれど。
そうして普段なら長く重苦しく感じていた登校時間も、凄く短く感じた。
すると修司くんは学校に着くなり私の手を離し、早歩きを始めた。私は必死について行こうと歩くスピードを修司くんに合わせていると、修司くんは少し冷たい眼差しで私を見つめながら言った。
「俺のスピードに合わせなくていいよ。俺話したいヤツら居るから先行く。後でな」
そう言い残し私の前から彼は消え、高校の中へと入って行った。私は少し寂しさと心細さを感じながら校内に入り、教室に入ると私の席の周りで談笑する修司くんの姿が目に映った。
私はそそくさとそこまで行き、私の席に座ろうとあたふたしていると、修司くんは私と談笑していた仲間を見ながら言った。
「ここ、お前の席だっけ」
「う、うん……」
「悪い悪い。退けるわ」
そういうと修司くんは他のメンバーを連れてどこかへと行ってしまった。私は付き合っている感じなど今朝よりも無く、少し悲しげに机につっ伏すと、ヒヤッとした感覚が首元に襲った。
「ひゃっっ!」
思わず変な声が出てしまい、後ろを振り向くと修司くんがスポーツドリンクを持ちながらにこやかな笑みで私を見つめてくれていた。
「さっきは冷たい態度でごめんな。これやるよ。飲んでくれ」
「あ、ありがと」
「おう!」
すると修司くんは私の頭をぽんぽんと撫でて、どこかへ行った。私は自分がちょろいなって感じつつ、ぽんぽんとされた喜びと、修司くんからもらったスポーツドリンクをギュッと掴みにやけてしまった。
すると、私の顔を見て、修司くんとつるんでいる姿を見たクラスメイトが私の元に寄ってきていた。そしてスポーツドリンクを奪った後に私の頭の上からかけてくる。そして言い放った。
「くそビッチ。次は修司くんなの?」
「……」
「まじサイテーなんだけど。帰れよ!」
肩を押され、私は無気力に倒れる形で椅子から落ちた。そして掃除箱に椅子がぶつかり、ガンッッと言う音とともに教師、そして何故か修司くんが私の元に寄った。
「お、お前ら何してる!」
「先生なーんも?」
教師は女子生徒の言うことを鵜呑みにし、濡れている私に目もくれずその場を立ち去った。そして女子生徒たちは近くにいた修司くんの元へ行き可愛こぶりながら、あの女が〜と言い始めた。
私は何も出来ない悔しさと、修司くんに情けない姿を見せてしまったことから涙を流しかけていた。
するとフワッといい匂いがしたと思ったら、次はぽんぽんと修司くんの大きい手が私の頭を襲った。
「大丈夫か?」
「……平気」
「無理するな。とりあえず俺のブレザー羽織っとけ」
修司くんはそういうと私の濡れている身体にブレザーをかけてくれた。私は慌てて返そうとしたが、その時には修司くんはぶりっこ女子生徒たちを冷たくあしらった。
「お前らみたいなのとつるんでた俺が馬鹿だったよ。もう近づくな。俺とつるみたかったら、他の子にも優しくするんだったな」
「え。修司くん?」
「俺の名前を呼んでいいのは、玲於と竜也、そして俺の彼女の由利香だけだ」
「はぁ?!?!」
女子生徒たちはそう言われただ立ち尽くしていた。その腹いせに私の元へ来るかと思いきや、女子生徒たちはその場に座り込み、修司くんに振られたことでショックで泣き始めた。
泣きたいのはこっちだよ!
そう言いたかったが、何を言っても女子生徒たちからの恨みは強くなるし、当たりもきつくなるとビビって私は何も言えずじまいで授業時間を迎えた。
授業中でも周りのイジメは続き、消しゴムが投げられたり、シャープペンシルの芯で背中をつつかれたりなどが数時間続いた。
私は苦しさから保健室に逃げた。
「あらどうしたの〜?」
「具合悪くて……」
「あらそう。ベッド用意するからちょっと待っててね」
保健室の先生は、ベッドを用意し始めた。私はそれを見ながら俯き、ただただ学校を辞めたいと思っていた。
そしてベッドの準備が整い、私はベッドに寝転がり毛布に顔を埋めながら貯めていた涙を零した。
なんで私だけこうなったんだ。そう思いながらずっと泣いていると、保健室の先生が誰かと話していた。
「あら、珍しい。どうしたの?」
「すんません。教師からここに来た由利香の様子を見て来いって言われまして」
「今寝ているかも。私ちょっと職員室行くから、待っててくれるー?」
「うす。了解っす」
修司くんの声がした。そしてカーテンがシャーっと開く音がした。私は泣いている姿を見られたくなく、寝ているフリをしていると修司くんは私の頭をまた撫で始めた。
「ゆっくり寝ろよ。俺はお前の味方だ。今日帰り一緒にカフェでも行こうや」
そう一言だけ残し、修司くんは居なくなった。
私はただ修司くんの優しさに依存にも近い想いを抱き始めていた。
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