新宿午前一時
憂鬱なイントロダクションを8ビートでよっつ数えて、黒髪の少年は目眩く魅惑の世界へと単身ダイブする。銀色のピックとF社の愛機だけを抱き込んで、操って、乗り込んでゆく。光の速さで。冷えた空気を自分の熱で掻きわけて進む。後方に置き去りにされたものたちの悲鳴が、一台のアンプから奔流となって迸る。
夜の街には諸手を挙げて歓声を送るファンの群れなどない。ただ、あちらこちらに佇む人影が、我知らず彼に無言のメッセージを送る。聞かせてくれ。もっと、もっと。さらに速く。深く。潜り込んでゆく。彼の両手が歌声の代わりに謳う。涙、怒り、秘めた恋の結末が鮮やかなメロディーになる。夜空震わすマイナーコード。かき鳴らすギター。
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