生誕
誰も知らないことだ。
不吉な夕暮れに染まる建物の中で「それ」は生まれた。赤い手足。蒼白い顔色のそれ。水晶のような目は顔半分を占める程に大きい。鼻は低く、口には唇がない。頭部はつるつるとしていて、手触りが良さそうだ。
僕はそれが生まれるところを見た。
「リリー」
僕はかつて共に暮らした少女の名前を呼ぶ。リリー。あの夜、お前を見た最後の夜に現れた男は司祭なんかじゃなかった。忌まわしい錬金術師だったんだ。リリー。お前の銀髪はすっかり消え失せてしまった。
「素晴らしい機会を与えて下さったことに感謝します」
リリー。不治の病はお前から去り、その代償に汚れた永遠を与えられた。詐欺師が僕の手に金貨を押しつける。
目眩がする。
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