第3話白髪の魔術師
私は彼を撃ち抜いた。彼は魔術が何かを知らないフリをしていたようだったが私の魔術を若干防いだこと、#師匠__ねこ__#に教えてもらった魔術と私の魔術を防いだ魔術の構造が似ていたことから彼であるのは間違いなかったのだ。意図せず魔術を発動した元一般人としても既に殺してしまった以上どうしようもない。
「悪いとは思うわ。でも仕方がないのよ…って!?」
私は彼の襟を使もうとしようとしたのだが彼の身体からの熱気が手に触れた。
「君…まだ生きてるの?」
死体(仮)に向けて言うが返事は返って来ない。確かに心臓に魔力を込めた弾丸を打ち込んだ。
死んだか確認するのだが、下手に触ると何が起こるかわからないので触らずに隣から呼吸をしているか胸や腹の動きで確認したが3分全く動かないため呼吸は出来てない。
多少熱くても我慢する事に決めた。襟元を掴み引きずる形で体育館から抜け出そうとした。
「そこだ」
声とともに魔力の弾がカネヒロ君の襟元を掴んでいる手首に当たりカネヒロ君が投げ飛ばしてしまった。
「いったぁ!誰!?」
私は当てられた方とは別の手で人差し指を擬似の銃にし声のする方へ向ける。そこにはツナギを着て腰まで髪を伸ばした白髪のスラリとした女性がステージ上の先程まで私がいた所にいた。
「誰とは私のことかな?それなら答えよう。私は善良な魔術師だ。これで充分かな?」
「善良なら人に向けて危害を加えてはいけないくらい分からないのかしら?」
「おやおやその歳で人を殺した後だと言うのにその元気…人を殺したのは初めてではなかったのかな?」
「うるさいわね!初めてに決まってるわ!出来れば殺したくなかったわよ!」
先程少年に向けて放たれた魔力の弾丸とは比にならない程の威力の弾丸が激情に駆られ白髪の魔術師に向けて放たれる。
しかし弾丸は軽く手で払われた。
「出来れば殺したくなかったか…さすが魔術師の卵だ、物騒だね。さて、私は武力行使より対話を望むのだが話す気はあるかい?」
(私の割と本気の魔弾を軽くいなされた。おそらく身体強化のみで払ったようね。相手の術式も分からないし、私より格上の魔術師かもしれない、ここは話にのろうか)
「いいわ。その前にあなたの目的を教えてもらおうかしら」
「私はその少年の遺体が欲しいだけよ」
白髪の魔術師は体育館の入口近くに飛ばされたカネヒロ君の遺体を指さした。
何故?と考えたところで所詮魔術師が遺体を求める時はその遺体に特別な力が宿った器官が生きてるからそこだけ取り除き実験及び自分の目的のために何かするくらいだろうと考えるのをやめた。
私も魔術師の端くれだが流石に同級生の身体を弄るのは気が引けるので師匠に任せるつもりだった。
「あなたこの少年に何が起こってるのか知ってるの?」
「その質問に答えたら大人しく引き下がってくらると約束してくれるなら良いだろう」
(奥の手を使って相打ちまでは持っていけそうだけとりあえず今はこの白髪の魔術師の事を師匠に伝える事だけを考えるか…)
「良いわ。望月の名に誓って私は貴方に危害を加えないわ」
白髪の魔術師をカネヒロ君の遺体まで通した。そして少しカネヒロ君見た後改めてこちらを向いた。
「交渉成立ね。この子は…」
「この子は?」
「フフっ。君もしかして嘘をつかないと信じてたのかい?君に教える気はないよ」
そう言い終わるとともに白髪の魔術師はカネヒロ君と共に消えていた。
「逃げられたか…」
魔術で逃げられた事がわかり後を追えない事を確認した後私は白髪の魔術師がいた所をしばらく眺めていた。
死んだ俺は魔術師に成る 清白瀬見 @naduka
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