第4話 抵抗するよ
――霧の塔4階――
3階は開幕魔物部屋だったので慎重に階段を登り、こっそり4階に上がった。
「……ふぅ、魔物は居ないね」
最初に出た部屋は小さな部屋だったが特に何もない。
しかしいきなり通路が二箇所あり、左と右に分かれていた。
「じゃあ時計回りに……」
私は時計回りに左から進むことにした。
すると扉が見えてきた。
「あれ? 行き止まり……じゃないよね」
扉には紙が貼られており、何か書いてある。
『この先、コボルトが居る』
「コボルト…… コボルトね……」
コボルトとはさっき戦った魔物のことだろう。
しかし、何でこんな張り紙がしてあるんだろう。
「まぁ良いか、よし」
私は剣と盾を構えて、ゆっくり扉を開ける。そして中を覗くと……。
「……」『……』
杖を持ってフードを被った魔物が一匹だけ居た。
「コボルト居ないじゃん!!」
つい大声で突っ込んでしまった。そして魔物に気付かれた。
『<マジックアロー>』「わひゃあああ!!」
突然杖を持った敵はこちら杖を向けて攻撃してきた。
「あうっ!?」
不意打ちを食らい、ダメージを受けてしまう。
<マジックアロー>は威力が低いため、
威力は大したことないが連発だとダメージが蓄積するので厄介だ。
「こんのー!あうっ、痛い……」
その魔法使いみたいな敵に向かって一歩踏み出したら、
また<マジックアロー>を向けてきてダメージを受けてしまう。
これは厄介だ。移動するたびに魔法を食らってしまう。
「えっと、こういう時は……」
マジックアローは直線にしか飛ばない魔法だ。
つまり迂闊に射線内に入らなければ回避できる。
「とうっ!!」
私は斜め前に走り出して、
魔法使いの正面に立たないようジグザグに走り出す。
「これでどうだ!」
敵の魔法使いは魔法を使い続けるが、
やはりこう不規則に移動されると弱いようで当たらない。
そして、そのまま接近して、剣を振りかぶる。
「てぇぇぇ!!」
魔法使いが反応するより早く、私は袈裟斬りにした。
「やった!!……ってうわぁあ!!」
喜びも束の間、私は背後からの気配に気付き慌てて振り向いた。
するとそこにはもう一体同じ格好をした魔法使いが立っていた。
「ちょっと!魔法使い二人はズルいよ!!あうっ!?」
理不尽さを感じてつい怒ってしまったけど、
後ろに居た魔法使いの<マジックアロー>を受けてしまった。
「もう許さないからね!!雷の杖よ――!!」
つい怒って雷の杖を発動、
もう一匹の魔法使いの魔物は感電してそのまま倒れて消滅した。
「ああっ、折角の切り札だったのにまた使っちゃったぁ……」
これで雷の杖の残り回数は2回だ。5階まで温存する予定だったのに……。
「でいうか、あの張り紙は何だったの!?騙された!!」
もうこれからはダンジョン内の張り紙は信用しないようにしよう。
「<オープン>……ああ、結構HP削られちゃった……」
今の攻撃魔法3発で大体残り体力の半分くらい削られてしまったみたいだ。
「<ファーストエイド>……<ファーストエイド>」
私は温存していた魔法力を消費して魔法を二回連続で唱える。
<ファーストエイド>は応急で使う回復魔法だ。
消費が少ない代わりに回復量も低い。回復ポーションと比べたらその回復量は半分にも満たないため、ポーションの代用程度の性能しかない。
「んー、回復量が少なすぎて戦闘中は使えそうにないなぁ……」
仮にさっきの魔法使いと戦いながらだと、
<マジックアロー>→<ファーストエイド>→<マジックアロー>
→<ファーストエイド>→ループ
こんな感じでMPが尽きるまで回復しないといけなくなる。
それに私の場合、魔法を使いながら移動とか器用な戦い方は難しいと思う。
「ううん、考えても仕方ない。探索探索!!」
私は難しいことは考えずにまずこの部屋の探索を開始する。
部屋の中には机と椅子と本棚があり、特に変わった様子はない。
「あれ?何もない?」
宝箱もない。ただの部屋だろうか?
「よし、こっそり調べちゃおう」
私はまず机を調べて、置いてあった銅貨2枚を頂いて、次は本棚を調べた。
「えっと、世界の歴史と地理と算術と魔法理論かぁ……
さっきの魔物の持ち物なのかな?」
何にしろ私には難しすぎて持っていく意味が無さそう。
しかし、一冊の緑の本が手に止まった。
「お、なになに……?
子供でも分かる自然干渉魔法の使い方……これって……魔導書だ!!!」
私はその本の中身をペラペラと捲った。
「<ファイア><アイス><エアレイド><ライトニング>……」
この本に載っていたのは【初級攻撃魔法】の基本四属性だった。
一つは私も習得済みだ。残りの魔法を習得出来たらもっと強くなれるかも……?
私はそこで少し本を読んでからマジックボックスに仕舞った。
「よし、これを貰っていくぞー!」
それから私はランラン気分でダンジョンを探索し始めた。
途中何度か魔法使い系の魔物に遭遇はしたけど、
ジグザグ移動で回避しながら倒せた。
「ふふん、どうだ!」
でももし通路で魔法使い系の魔物と出会ったら絶対厄介だよね。
避けようがない。いくつかの部屋を回って回復アイテムと魔石を入手してから中央の部屋に進んだ。
「よし……突入だー!」
部屋に入っていくと魔法使い一匹とコボルトが二匹待ち構えていた。
両方の特徴を一言で言うと、魔法使いは直線遠距離攻撃持ち、
コボルトは1回の行動で私の倍の距離接近してくる。
正直この相手だと分が悪い。
それなら一回通路に逃げて一匹ずつ相手にしようか。
「でもなぁ……もし魔法使いが通路に来たら厄介だし……そうだ!!」
さっきの魔導書の魔法で対処できるかも、
そう思って私は初めて使う魔法を詠唱した。
「標的は魔法使い……<アイス>!!」
私は一旦剣を右の剣を仕舞って右手で魔法を発動した。
<アイス>の魔法は少し離れた魔法使いに直撃し、その足元を凍らせた。
「これなら動けないでしょ!撤退ー!!」
私は背を向けてそのまま通路に逃げた。
そして素早いコボルトだけ廊下に出て追っかけてくる。
「わぁ!?来たぁ!!」
コボルトは予想通り凄い勢いで迫ってくる。
このままだと追いつかれる……私は鞘から剣を抜き迎え撃つ。
「たあぁぁ!!」
通路はあまり広くない。
こうやって大きく構えて立ちはだかればコボルトも窮屈な行動しかとれないはずだ。私は左手の盾で正面のコボルトの攻撃を防いで、右の剣でもう一匹の攻撃を軽く受け流す。
やはり通路が狭いようで、もう一匹のコボルトの攻撃は浅くしかしてこない。
これなら剣で簡単に止められる。
「うりゃああ!!シールドバッシュ!!」
私は手前のコボルトにバックラーで殴りつけて突き飛ばす。
すると奥にいたコボルトに突き飛ばされたコボルトに押されて壁に衝突した。
「今だ!てやっ!!」
そのまま正面のコボルトを剣で斬りつけて、
勢いのまま壁にぶつかって朦朧しているコボルトにも斬りかかった。
「これで終わり!!」
二体のコボルトはそのまま魔石だけ残してて消えていった。
「ふう、何とかなった……」
危なかった。やっぱりこういう戦闘になると動きにくい。
しかし広い場所となると囲まれたら面倒だし、
通路での戦闘にもっと慣れた方が良さそう。
私はさっきの部屋に戻り残った魔法使いの魔物と対峙する。
さっきの<アイス>の効果はほぼ溶けているようで、
足も自由になっているようだ。
「でも貴方単独ならどうにでもなるよ!!」
私はジグザグ移動で距離を詰めて魔法を避けながら接近する。
たまに<マジックアロー>と違う風の魔法を使用してきたが、
吹き飛ばされる程度で済んだ。
そして接近したところを剣で――
斬ろうとしたのだが、その前に魔法使いが杖で殴りかかってきた。
「――いったああああ!!!」
魔法使いの杖は私の後頭部にガツンと当たりたんこぶが出来てしまった。
「このぉ!!よくもやったなー!!!」
私は怒りのあまり盾を投げ捨てて魔法使いを既に殴りつけた。
そのまま剣も投げ捨てて両手でボコボコに殴りつけて、
そのまま魔法使いは倒れた。
「――はっ!しまった、つい昔の癖で!!」
昔近所の子供達と遊んでた時に喧嘩して、
ボコボコにして親を呼ばれた時と同じ事をやってしまった。
「まあいっか、それより何か落としたよ!!」
私は魔法使いを倒して手に入れた杖を<ルック>で調べた。
【名前:風の杖(4)】
効果:使用するとエアレイドの効果を発揮する魔道具。回数制限あり。
魔法が使えない人でも()内と同じ回数使用可能。
威力は低いが、風の魔法で敵を吹き飛ばすことが出来る。
「へぇ、こんな便利な魔道具だったんだ」
もしかして、さっき使ってきた風の魔法はこの杖の効果だったのかも。
「あとは……あ、何か銀貨が落ちてる」
どうやらこの魔法使いの私物のようだ。銀貨3枚手に入れた。
そしてこの部屋に次の階に行く階段があったので、
私はさっき入手した魔導書を読んでから進むことにした。
――現在の状態――
【名前:サクラ 職業:冒険者見習い】満腹度30/100
レベル 7 HP 28/55 MP 16/36 攻撃力29(+7) 魔力 26 素早さ 24 防御力11(+10)
装備:ソード+1(+7) 皮の服(+5) バックラー(+5)
所持技能:剣の心得Lv3 盾の心得Lv1 挑発Lv1 投擲Lv0 素手の心得Lv1
所持魔法:マジックアロー、ファイア、ファーストエイド、New アイス
特殊魔法:霧の魔法(ルック、マジックボックス、オープン)
所持アイテム:10/20 銀貨37枚 銅貨2枚 魔石9個(低質)
【霧の魔導書】【初級攻撃魔法の入門書】【ショートソード】
【回復ポーション3個】【ゴブリンの棍棒】
【雷の杖(2)】【風の杖(4)】【毒消し草】
New skill
【素手の心得】素手で殴る。
レベルが上がると素手での攻撃力と命中率が上昇する。
New magic
アイス:【初級氷魔法】消費MP4
初級氷魔法、敵単体を凍らせる魔法。
威力が低めな代わりに敵を足元を凍らせて動きを止める効果がある。
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