ちょっとしたサービス サイドB:2

『なに考えてんだアンタ危ねえだろ‼︎ 死んだらどうするんだ⁉︎ いや、死ぬ気だったのかも知れねえがそれはやめとけ‼︎ 事情は知らないけど他の解決方法があるだろが‼︎ 死んじゃ何にもならねえ‼︎ それに飛び降りなんて万一失敗して生き残ったらメチャクチャ痛くて苦しむんだぞ!!?』


「ドラ……ゴン?」


 ハッ‼︎

 そうだった!

 俺今ドラゴンだったわ!

 つい咄嗟に助けて言いたいこと捲し立てたけどドラゴン語だし……この子に通じる訳がねえ!

 アホか俺!


 に、してもちょっと可愛いなこの子。

 艶のある高そうな生地のパジャマ……同い年くらいか?


「私に……死ぬなっておっしゃるの……?」


 えっ? マジ?通じたの?

 完っ全にドラゴン語で喋って人語要素皆無だったけど。

 まさかこの子もドラゴン族か……?

 匂いは全くもって人間そのもののようだけど……?


「な、何よ。人間のことなんて何も分からない癖に! 死ぬのをやめて、私にどうしろって言うのよ‼︎」


 いや人間なんかい。

 ま、そうだわな。

 分かるんだなーこれが。俺も普段はどこにでもいる高校生なのよ。

 成績の良し悪し、友人のイザコザ、部活の上下関係、家庭への不満……。

 何かの弾みでふと何もかもを投げ出して死んでしまいたくなるような気持ち。

 全部どーでも良くなるような、世界でも滅ばねーかなみたいな気持ち。分かるっちゃ分かるのよな。


 よし。ちょっとサービスしちゃる。

 乗りなよ、俺の背中に。


「乗れって……?」


 彼女は躊躇してるようだった。

 なんだよ怖いのかよ。

 ってか飛び降りて死のうとしてたんだろ?今更ビビってんじゃねーよ。死んだとしてもアンタの予定通りだろうが。


「いっ、嫌よ! なんですのあなた‼︎ 今日は私にとって大事な夜ですのよ! 邪魔をなさらないで……」


 ええい面倒だ!


「きゃあっ⁉︎」


 今気づいたけとこの子、いいとこのお嬢様っぽい喋り方だな。いるんだな本当に。お嬢様喋りのお嬢様。


「ちょっ、待っ……降ろしなさい! 降ろし……」


 いいや待たないし降ろさないね。

 しっかり掴まってなお嬢様。

 ドラゴン流の夜の散歩にご招待してやるぜ。

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