第8話 赤字との戦い……!

 想定の人数より、利用者が大幅に少なかったことで、たった2回でけっこうな赤字を出していた。

 利用者数が皮算用だったこともあるが、そもそもの原価、つまり保育スタッフ代と場所代が高いので、20名近くの人数を入れないと赤字になってしまうのだ。


「もしかして……自分だけなら、自宅でベビーシッター頼んだ方が安くて楽なんじゃ……!?」

 今更の気づきである。


 その上、追い打ちをかけるように。


「え、なくなる……!?」

「そうなの、お台場校は閉校することになって……ごめんね」


 Aさんのお台場の親子教室が、10月に閉校することになった。場所はなんとか探すとしても、相場よりかなり安く貸していただいていたから、確実に場所代が上がってしまう……!


「やっぱり無理なのかな…………」

 正直、めちゃめちゃ心が折れかけた。


 ――でも。


『切実に欲しかった!』

『ぜひ成功して欲しい!』

『久々にイベントに行けて、すごく楽しかったです!』

『ありがとうございました!!』


 今までもらった、応援や感謝の声。デザインを手伝ってくれたMさん、困ったとき助けてくれたAさん、そして、全力で背中を押してくれたJさんやNさん。


 ――――このままじゃ終われない!!



 まずは、一番コストがかかっている保育スタッフをどうにかしたかった。今みたいに別の会社に委託すると、マージンがかなり高い。


 そこで、個人で訪問保育やイベント保育をしている人を探して、直接契約しようと考えた。

 どうかいい人と出会えますように……!


 保育のマッチングサイトに条件を送ると、早速数名の応募者が送られてきた。その中でも、一番資格がしっかりしていて実績やキャリアのあるWさんという方にご連絡した。


 これが、なんと――奇跡の出会い《SSR》だった。


 Wさんは、保育のキャリアは数十年、個人でイベント保育も訪問保育もやっているベテランさんだった。経験も豊富だし、ノウハウもある。おもちゃや備品も用意できるし、保育スタッフ仲間を複数集めることもできる。


 いやチートじゃん!!?

 これぞ神引き……!!


 早速Wさんと契約して、5月と8月の託児をお願いした。

 マージンがない分、狙い通り保育スタッフのコストを下げることもできた。


 一方で、保育の質は――爆上がりした。

 これまでは委託会社から毎回違うスタッフが派遣されていたが、Wさんが信頼できる仲間を連れてきてくれるようになって、対応力とチームワークが急上昇したのだ。おかげで、自分がイベントに出ても、本当に信頼して現場をお願いできるようになった。


 次に、託児の場所だ。

 会議室系は断られまくったし、料金が大幅に上がることが分かっていた。


 だから、今回は秒で最後の手段を使った。


「Kさん、ご無沙汰しております! 実は、ビッグサイトのイベントに参加するために託児所を作っておりまして! Kさんの学童施設をお借りすることはできませんかッ!?」


 持つべきものは個人の取引先コネである。


 勝どきで民間学童を運営するKさんに、施設を相場より安くお借りすることができた。勝どきからビッグサイトはバスで一本で行けて、アクセスもいい。

 Kさんは子どものために脱サラして質のいい民間学童を起業した方で、私の挑戦を快く応援してくれた。優しい世界……!



 よし、あとは――――


 もう1つ、私はやると決意したことがあった。

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