第6話 炎上回避ッ!!

 なんとか準備が整って、託児用のツイッターアカウントを作成した私は、告知ツイートに悩んでいた。


 もちろん、集客できるかという心配もあった。でも、それ以前に心配だったのは――「炎上しないか」ということだった。


 このサービスはあくまで、「ママ・パパの趣味のための託児」だ。

 人によっては、ネガティブな反応をされる可能性もある。


 だけどそれ以上に、喜んでくれる人も絶対に多いはず。同人を愛するママ・パパさん達のためにも、告知を成功させなくちゃ!


 そして、2016年11月24日。

 私は、とうとうツイートボタンを押した。


『同人イベントのための出張託児です。ママになっても同人イベントを楽しみたい!そんな方のために企画しました。

【ぴったりの日時に】【会場のすぐ近くで】【プロの保育スタッフが】お子様をお預かりします。お申込み受付中です!』


 個人垢で予告していたこともあって、告知ツイートは瞬く間にRTされ、バズり状態になった。ジャンル仲間の皆ありがとう!!


 そして。

「きたか……」

 しばらくすると、予想通りネガティブな反応が届き始めた。


 こういうときのネガティブな反応には、2種類ある。


 1つ目は、ターゲットとなる同人好きなママ・パパさんなら絶対しないような反応だ。「趣味のために子どもを預けるなんて……」とか、そういうやつ。

 でも、私は他の価値観を否定したいわけじゃない。こういう系のリプや引用には反応しないと、心に決めていた。


 問題は2つ目である。つまり、実際言ってくる人が誰かは別として、同人好きなママ・パパさんでも同じことを思うかも、という反応だ。

 例えば「法的にどうなの?」という批判的なリプがあった。これは企画段階で確認していたが、確かに説明していなかったので、きちんと対応したかった。


 まず、リプは返さないと決めた。短文で回答すると誤解されやすいからだ。代わりにHP上にQ&Aを作成して、疑問や不安に対する丁寧な回答をそこに掲載し、そのURLを告知した。


 そんな作戦で対応していたら、だんだん批判は少なくなってきた。

 よしっ! 炎上回避ミッションコンプリートッ……!!


 その一方で。

 ポジティブなリプや引用には、反応したくてもし切れなかった。

 何しろ――もっとずっとたくさん、山のようにいただいていたから。


『本当に神!!! 絶対必要な方いるもんね!!』

『わーーーすごい! 切実に欲しかった!』

『え、これ私のためのやつ!?』

『時代を感じる。ママの趣味も大事だよね』

『感無量。ぜひ成功して欲しい!』


 本当に嬉しかったし、とても励まされた。

 これなら利用者も集まりそう!



 ただ。

 このとき、私はまだ気づいていなかった。

 「賛同」と「利用」の間には、大きな壁がそびえ立っていることに。

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