同人イベントに行きたすぎて託児所を作りました

第5話 場所がない!?

　「借りられない!?」

　私は思わず、電話口で叫んだ。

　一番肝心な、託児をするための会場。当初の想定は、ビッグサイトの会議室だった。ところが、いざ予約しようとしたら。

「申し訳ございません、この日は空いておりません。イベント主催者様が使用するため、会議室も全て貸し切りとなっておりまして……」

　そ……そうなんだ!?　甘かった……!!

　慌てて他の施設の会議室や、周辺の保育施設まで色々と調べて問い合わせたが、どこも利用を断られてしまった。騒音だとか安全性だとか、色々な理由で、託児はダメだというのだ。

　レンタルスペースも検索したが、ビッグサイト周辺は施設が少なくて、いい場所がなかなか見つからなかった。

　くッ…………仕方ない。

　最後の手段を使うしか…………!!

　私は意を決して、あるところに連絡をした。

「え？　漫画やアニメのイベント……ですか？」

「はい、あの、実は……私、あるアニメが大好きで。完全に個人的な趣味で、ビッグサイトのイベントに参加したいのですが、託児所がないので自分で作ろうと考えた次第でして……」

　それは、個人事業主としてやっている、マジメな仕事の取引先。当然オタバレもしてない。　

「でも、どうしてもいい場所が見つからなくて。Ａさんが運営してらっしゃる親子教室を、有料でお借りすることはできませんか……!?」

　突然のプライベートな相談、しかもイベントのために託児所を作るというガチオタ発言。正直、どう思われるかめちゃくちゃ不安だった。

　でもＡさんの親子教室は、お台場の大きな商業施設内。ビッグサイトからアクセスもいいし、広さも十分。ここが使えたら理想的なんです……！

　祈るような気持ちで、お返事を待っていると。

「そうなんですね！　実はうちの子もアニメ大好きで、先日娘に付き合わされてコミケに行って、同人誌を買わされたんですよ～（笑）

　ぜひご協力させて下さい！」

　いや神か？？？？？？？

　てか、伝わらないと思って同人って言葉は伏せてたのに、こんな奇跡ある???

　ありがとう娘さん……!!

　　そんなわけで、同人イベントに理解のあるＡさんに、ビッグサイトにアクセスがよくて、託児にピッタリの施設を安く貸していただけるという、驚くほど理想的な環境をゲットできたのである。