第4話 異常

課長とH子の関係が事実であったのか、私は確認するつもりがない。


なぜならば、私が聞いた話でさえも、虚言の可能性があるためであり、仮に本当だとしても、故人の名誉の為にも、明らかにするつもりはない。


しかし、私が病院を去った後に、同僚から聞いた事であるが、課長には黒い噂が前々からあったらしい。

地方から上京してきた実習生の、心細さにつけ込んで関係を結んだり、患者の相談に乗るフリをして近づいたり。


その全てが事実であるのか、もはや確認する術はないし、する必要もない。

だが、もしこれらが事実であるならば、本当の病気は心身の障害ではなく、弱い心につけ込む異常さだと思う。


「人間が行き着く最終地点」


せめて私は、そこには辿り着かない様に、自らを律し続けたいと思った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

精神に巣食う魔物 かぬち まさき @jhons

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る