第3話 証言

それから1ヶ月程して、新年を迎えた。

病院に連休はないが、年末年始だけは休みである。

年明けの申し送り事項で、私は驚愕の事実を知る。


「患者のH子さんが、自宅の浴室で亡くなっていました。」


詳細を確認すると、死因はどうやら薬の大量摂取=ODとリストカットであったらしい。

つい1ヶ月前は元気に歩いていたのに…。

と思う反面、職業柄元気だった患者が翌日には亡くなっている事も多かった。

よほど思い詰めていたんだろうな、と私には冥福を祈る事しか出来なかった。



それから更に1ヶ月が経ち、以前H子と仲良くしていた女性患者を見つけた。

すっかり肩を落としている様に思えたから、「その節は残念でしたね。」と声をかけた。


すると、彼女からは次の様に言われた。


「H子は生前、課長さんとの関係をすごく気にしてて…。」


???

私は病院の情報を外部に漏らす事はしていない。

というか、あの電話の件は私と課長しか知らないはずだ。


『どういう事ですか?』


「事務所の課長さん、よく仕事抜け出してH子の家に遊びに来てたんです。」


『そんな事ある訳ないじゃないですか。』


「本当ですよ。私、その現場によくいましたもん。今から課長さんくるから帰ってって、よく帰されました。」


課長が度々外出していたのは、私も覚えがある。


『仮にそうだとして、一体H子さんの死因と何の関係があるんですか?』


「H子は、他の患者から嫌がらせを受けていました。課長さんとの関係を知った患者が、病院に告発するぞ、と。」


私は、あの時の不可思議な電話の意味がようやくわかった気がした。

おそらく、本当に課長とH子は関係を持っていたのだろうと。


「H子はきっと思い詰めて命を絶ったんだと思います。」


私は、回答する事が出来なかった。

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