第2話 実情
外来の患者の中には、取り立ててきれいな女性もいる。
見た目で言えば、20代の女性患者も多く、中には入院生活を送っている人もいる。
パッと見は、若くきれいな容姿であるから、ハッキリ言って小太りで髪も伸ばしっぱなしの私の方が、よっぽどか小汚く思う事も多々あった。
だがそういった若い女性患者には、絶えず変な噂が付き纏っていた。
患者同士で体の関係にある…とか、酷いものだと看護師と関係にある…とか。
私は、そういった類の噂を一切間に受けなかった。
だってここは精神科であって、妄語や虚言なんて当たり前の空間であったから。
ある日、病院の外線に一本の電話が入る。
「おたくの病院の課長が、患者H子と体の関係にある。今すぐ事実を確認しろ。」
電話を取った私は、いたずら電話だと思い、当初間に受けなかった。
確かにH子は存在する。
よく外来をうろうろしており、歳は30歳前半くらい。ショートカットの金髪で、ガリガリの体型をしており、服装はもちろん、マニキュア、ピアスまでとてもパンクな格好をしている人だ。
寡黙な人であったが、怖い感じの人ではなく、どちらかと言うとシャイな女性だったと思う。
かたや、うちの課長は40歳前後。
勤続20年近くの大ベテランではあるが、どう良く言ったって「カッコいいくいだおれ人形」が関の山で、女性職員からモテるどころか気持ち悪がられているような感じだ。
仕事は、本来出来るのだろうが、あえて手を抜いてだらだら仕事しているイメージ。
しょっちゅう銀行や役所に行くとかで外出しているが…どこかでサボっているのではないかと、私でさえ感じていた。
私は、電話の内容があり得ないと思いながら、万一事実なら大問題だと思い、こっそりくいだおれ人形に確認してみた。
課長は「ないない」とうんざりしたように答え、私もやっぱりただのイタズラであったかと自分を納得させた。
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