第4話 奇遇な女性

天候は晴れ、気温は33℃、サイズは6フィート、風は北西弱、手前の波でボデイーボーダーが5名奥の波ではロングボーダーが6名、ショートボーダーが3名いた。サイズは大きくないがきれいにブレイクしている。横から回り込みピーク近くにポジショニングする。

ロコのようだが顔なじみではなかった。ヒカルもクリフスへは初めてだった。だいたいはウインドのポイントである為、波があって風の無い時しかサーフできない。今日は特別だ。ヒカル愛用のシチズンダイバーズウオッチのベゼルを長針にあわせてから1時間経過した。風もオフからオンに変わり、さっそく引き上げる。今日はバイトを休んだので、夜は久々裏通りのケインズ・バーへ足を運んだ。バドワイザーから始まりお気に入りのバーボンを注文した。


その時、バーの入り口が開き金髪のロングヘアーの女性が入ってきた。よく見るとどこかでみたようなアメリカ人の女性だったが、二つ隣のカウンターに腰をかけた。バーボンのロックを注文した瞬間、ヒカルの脳裏にノエルという名前が浮かび上がった。

もしかしてノエルか?まさか・・・

ノエルがなぜここにいるのか不思議でたまらなかった。確かオーストラリアに住んでいるはずなのに・・・


「ノエル?」と小さく声をかけてみた。するとこちらをふりむき「オーヒカル?」と返してきた。やはりノエルだった。広島ではバーのウエイトレスをやりながらサーフィンをやっていた。よく千畳苑で見かけたが、かなりの腕前で女性では彼女の右にでるものはいなかった。


そんな彼女も2年前にオーストラリアに旅立ったはずなのに、なぜハワイに?そしてなぜケインズ・バーへ来たのか?こんな奇遇な事などありえるわけがない。


話を聞くとゴールドコーストに1年、シドニーに1年いたがもの足りず、やはりサーフィンのメッカであるハワイに1週間前に来たという事だった。これから冬を向かえるノースでいち早くビッグウェイブに慣れておこうという魂胆だ。さすがプロサーファー。昨年よりプロに転向したそうだ。この一週間はコンドミニアム泊りでレンタカーでパイプライン、バックヤーズ、サンセット辺りを攻めていたそうだ。オーストラリアではゴールドコーストのキラビーチやシドニーのボンダイビーチをベースに各地を転戦していたとのこと。


ここのバーは地元サーファーにすすめられてたまたま立ち寄ったとの事だった。そのノエルとの再会から半年、また偶然にもケインズバーで出会った。


明日コナウインドが吹けば朝方ノースはオフでグッドコンデイションになる。その為1時間で切り上げノエルとコンドミニアムへ戻っていった。


途中、ストリートパフォーマーのジャックに声をかけコナウインドが吹くかどうか聞いてみた。まちがいない。明日ノエルのフォードに便乗させてもらい3時に出発することにした。


やはりコナウインドが吹いている。ワイメア、サンセットとチェックするがワイメアがヒットしていた。サイズにして20フィート。いち早いビックウェイブの到来を感じた。ヒカルとノエルはおおはしゃぎで早速着替えて波の様子をうかがっていた。

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