第2話 対人関係
そんな私であったから、小学校6年の頃にはそれなりに悩みが出来ていた。
側から見れば、私は学級委員を任され、友達からも面白くて優しいやつと見られており、友人関係も幅広かった。
しかし、私自身は決してそれが本当の私でない事を自覚していた。
親世代からリアルな体験談を聞いて育ったのである。周りの友達はとても大好きであったが、心のどこかで信用しきれない思いがあった。
それは、女子に対しても同じであった。
気になる子やかわいいなと思う子がいても、心の底では、日本人であると言う思いが消えなく、果たして自分は仲良くなってもいいのだろうか、と常々感じていた。
極端な事を言うと、もし日本と韓国が戦争になった場合、私はどちらにつくのか疑問であった。
もちろん、本心は韓国人として生きていきたい。しかし、本当に有事となった際に、私は友人を敵とする事が出来るのだろうかと、いつも考えていた。
もちろん、日常ではそんな話は一切しない。
親にはもちろん、うっかり友人に相談をしてしまってそれまでの関係にヒビが入ってしまうのも嫌であった。
まして、こんな話をした所で、誰もが困ってしまうだろう。
私は、いつも通り友達とゲームの話をしたり、部活に励んだりしていたかったから、あくまでも対人関係においてはお調子者も私を貫き通していた。
幼少期に形成してしまったこの性格は、大人になった今でも抜け切らない。
そのおかげで、以後散々な苦労をすることとなるのだが、それはまた別の話としておく。
こんな調子のまま、私は中学3年生まで順調に成長していった。学力は悪くなかったが、もともと難しい問題は後回しにする性格である。
宿題や課題を一切やらずに、答えを丸写しするのはもちろん、自分にとって大切な「日本人と韓国人」と言う問題でさえ、考えない様にしていた。
むしろ、考えても答えが出ない事なのだから、向き合う事から逃げていたのかも知れない。
友人関係に置いても、特に問題はなかった。
からかわれる事こそあっても、いじめられる事はなく、どちらかと言うと人気はあった様に感じる。
そんな私に、最初の運命が訪れる。
中学3年生の時、クラスメイトの女子に一目惚れしてしまったのである。
今にして思うと、思春期特有のもので、彼女の何がよかったのかわからない。
もしかしたら、恋と呼ぶにも程遠い、憧れに近い存在であったかも知れない。
しかしながら、当時の私には彼女はあまりにも可愛く見え、見ているだけで緊張してしまうような、そんな存在であった。
私の中学校は全校生徒1000人と、中学規模にしてはやや大きめで、一学年に300人以上は生徒がいた。
とはいえ、小学校からの繰り上げや、友達の友達といった関係も出来上がるため、中学3年になる頃にはほとんどが顔見知りになっているのだが、私はクラスメイトの彼女の事を3年生になるまで知らなかった。
同時に、もう1人新しい友人ができる。
クラスメイトのS君であった。
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