19.鳥籠
昼から夜に変わる時間。この時間が好きだ。
中途半端に生きている私にはちょうどいい。
家の近くにある公園で遊んでいた子供達は、帰る準備を始めている子、まだ遊びたいと駄々をこねている子もいる。古ぼけたベンチに腰をかけながら、私は二時間近く、意味のない時間を過ごしていた。もうすぐこの公園には私一人しか残らない。
公園の側にある街灯が暗くなった道を照らし始め、帰るべき所を示しているみたいに見えた。けれどその道標に沿って帰る気にもなれなくて、ただベンチに身を任せて時間を浪費していく。
「家に帰りたくなぁ……」
心から滲み出た言葉は、空へと溶けていく。
部活に入れば時間を潰せるかもしれないが、そんなことを許してくれるはずもなかった。
私が解放されるのは、学校と家の間。この逢魔時みたいな、曖昧な時間だけ。
一日で何分もない時間だけが、私を縛らないで自由にしてくれる。
「帰るか……」
私は重い腰を上げ、街灯に沿って歩き出した。委員会で遅くなると理由をつけて置いたが、もうそろ限界だ。早く家に帰らないとまた罰が下される。
そのせいでプール授業もまともに受けることができなかったのだから。
「ただいま」
私はまたこの家に戻ってくる。自由のない鳥籠へ。
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