10.私の色はどこいった

『私は生きているんでしょうか。死んでいるような気がします。心臓は動いていて、呼吸はしているけれど、生きているとは思いません』


 暗い部屋の中、唯一の輝きを持っているディスプレイの前で、ただ無感情にキーボードで文字を打った。


 生きるってなんだろう。私は生きているのか、それとも死んでいるのか。


 椅子が軋んで部屋に響く。誤字を確認した後、とあるネット掲示板に向けてエンターキーを押した。

 私だけが持っていた感情を言葉に変えて、電子の海に放ってあげる。


 嬉しい気持ち、悲しい気持ち。悲しい気持ちを感じることの方が、ずっと多かったけれど、今では何も感じなくなってしまった。


 嫌な言葉を投げかけられても、横を通るだけで舌打ちされていても、もう何も感じない。


 私と同じ年の子は、学校に通っているか早めに社会に出ているか。私みたいに一日中ベッドに寝転ぶだけの毎日を過ごしている人間は、世界から見ればいらない存在なのだろう。


 何をするにもやる気が起きない私は、本当に生きているのだろうか。


「返信は……何もない」


何度も何度も更新しても、私の文字だけが虚しく居座り続ける。


 自分の気持ちを理解してほしいと思うことは、もしかしたら期待しているか。


 誰かの反応が欲しいのは……。


 けれど、興味を持たれない。見向きもされない。

 

 私から徐々に色が抜けていく。 

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