第34話 謁見

 緊張だよー。


 目の前に、和かに微笑む男性。

 溢れる気品、でも暖かい笑み。

 多分、ってか絶対!王様だよね?


 そして…、


 アイラと同じ銀髪、ライトグリーンの瞳を持つ厳つい表情の壮年男性。


 公爵様お父様…。


「アイラ」

「ご無沙汰しておりました、お父様」

「それは儂の短慮故の事。謝るのは此方だ」


 それにしても、父と国王陛下のツーショットは圧が凄いよ。コッチ、幼女だって分かってんの?


 等とヨユーあるのは、今私の居場所がお義母様フェリアの膝の上だから。お義母様としては、前回の『鑑定の儀』について行かず父が私を病死と偽り遺棄した事、2度とあんな悲しみを味わいたくは無いと言う事で。まぁ、父と私を2人だけにさせない!って事らしい。

 流石の父も、今後私をどうこうする事は無いと思うんだけどなぁ。


 でも、5歳の幼女が母親と共にいる事を国王も咎める訳にもいかず。それに王妃レイリア様の幼い頃からの大親友であるお義母様は、国王陛下にとっては鬼門とも言える存在らしく。

 本来なら有無を言わせない程の亭主関白である父も、私を遺棄した事へのお義母様の追求の強さに今回若干引いてる感もあるんだよねー。


「さて、はじめまして、と言っておこうか」

 気さくに微笑みかける国王陛下。

「陛下にはご機嫌麗しく、サイモン公爵家が次女、アイラと言います」

 お義母様の膝の上ではあるが、頭を下げる。

 アレ?コレって不敬?

「ほう。本当に5歳児か?ロランよりはるかにしっかりとしておるぞ」

「自慢の愛義娘まなむすめですわ、陛下」


 そう言うお義母様も「本当に5歳なの?」ってさっき聞いてきた様な?私の気のせいか?


「そのロランに会ったそうだが?」

「相変わらずの腕白盛りの様ですわね、陛下」

「全く、困ったものだ」

「あら?陛下のご幼少の頃よりは、はるかにマシと思えますが」


 うわぁー!

 成る程。お義母様が陛下にとって鬼門と言われるのは、こういう事か。


 確か、陛下は王妃様のまた従兄で幼馴染と聞いてる。その幼馴染の大親友おかあさまもまた陛下を昔から知ってるって事だから…。


「フェリア、その辺で」


 いつもなら怒声をあげるお父様も、今日は歯切れが悪いし。それくらい、今日のお義母様は強気って言うか、はっちゃけてる。

 とは言え、流石にお義母様も微笑んで頷く。


「ロランをどう思う?アイラ」


 ど直球ストレート

 いやまぁ、幼女相手に腹芸も無かろうが。


「まだ1回、それも瞬間と言える位しか会えていませんけど、私はとても好感持てました」


 今後の王者教育で気品や立ち振る舞い、色々変わるとは思う。でも、人の根っこはそうそう変わらない。あの気さくさと機転は、素として残ると思うんだ。


 って、陛下、喜色満面だよ。


「それは何より。それで…」

「この国から出奔る気はありませんが、今の私は冒険者稼業の身です。この気楽な生活を手放す気にはなれない事、ハッキリとお伝え致します」


 被せ気味に伝える事、此方の決意はわかると思う。


 うん。目に見えて落胆したよ、陛下。


「…ニコライ?」

「何せ、1度遺棄してしまいまして。好きにしろとしか言えぬ立場としか」


 ふーん。

 ま、ありがとう、お父様って思っとこう。

 お義母様も頷いてるし。


「フム。余の味方は居らぬようだな」

「この件に関しましては。とは言え、公爵家が国王派の重鎮にて王家への忠節高き事、他家へ劣る事無しと、主人ニコライは元より私も自負してはおりますわ、陛下」


 えーと。

 清々しい満面の笑みが、かえって怖いわ、お義母様。


「いや、その事、疑う余地無しと余も思うておるが…の…。うん、のう、アイラ。今の言、と言う意と捉えては」


 そんな誘導にはのりません。


「確かに。この子の人生はこれからが長いですからね。成長とともに状況も変わるでしょうし」


 あれ?お義母様?


「公爵家令嬢を忘れさせる気もありませんよ、アイラ」


 マジで、その微笑みが怖いわ、お義母様。

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