第33話 僕がロラン=ラグナスなんだ

 金髪碧眼。やっちゃそうに見えて、でも気品溢れる感じで…。歳はアイラと同じくらいかな?


 って、何言ってんだろ?


「ホラ」


 先を指差す。

 城門の手前、懐かしく会いたかった人達が。


 リディアお姉様。

 ポールお兄様。

 そして、フェリアお継母様。

 思わず駆け出してしまっていた。


「「「アイラ!」」」


 数ヶ月振りに、私は母に抱きしめられて。


「あぁ、アイラ。本当に、本当に貴女なのね?こんなに元気そうで」


 この柔らかさ。この香り。この暖かさ。

 母だ。


 出産していないから、私は継母フェリアの母乳は与えられていない。でも、それを感じさせない程抱かれてミルクを与えられた。元のアイラにある朧気な記憶…いや感覚だ。


「お継母様」

「まだ、私を母と呼んでくれるの?」


 ギルドカードを出す。

 そこにある名前…『アイラ=サイモン』を。


フェリシア女神様も、名前を戻せって」

「本当だ。前に見せられた時には、そこには『アイラ』としか表記されてなかった筈。そして才能スキルも」


 文字化けしていた才能スキル名。

 今はしっかりと『聖獣使い』と記されてる。


「みんな!」

 私の呼び掛けに応えて3頭が元の姿を表して。


 大地魔狼ガイルフェン、コロ。

 霊鳥鳳凰フェニックス、カナ。

 瑞獣霊亀スピリッツタートル、キィちゃん。


 ガォオオーン『よろしく』

 ピィー『私達、アイラの』

 クヮアー『三銃士だよ』


「うゎあー!本当に4聖神獣のウチの3頭がいる。凄いや」


 そう言えば、居たな。

 私達の再会を優しく見守ってくれてたけど。


「殿下」


 は?お継母様?今、何て?

 まさか?この子、ロラン=ラグナス王子?


「そう言えば名乗ってないね。僕がロラン=ラグナスなんだ。よろしくね。あ、勿論、こんなトコにはって事でね。偶々子供が居合わせたんだ」


 跪こうとした私達に、和かに語り掛けてくる王子様。やば。メッチャ好感度高いじゃん。


「そんな事おっしゃって。レイリア王妃は何とおっしゃるかしらね」


 そう言えばお継母様と王妃様は、幼い頃からの友人だと聞いた事が…。

 うん。流石は国王派の重鎮たる公爵家だわ。


「え、そんな。母上に言う事は」

親友レイリアに嘘ついたり隠し事したりは出来ませんよ、殿下」

「わかったよ。あ、その、ポール、リディア、それに…アイラ!また後で」


 ロラン王子は軽く植え込みを飛び越すと、堀の方へ駆け降りていった。


「アッチって?母上?」

 不思議がるお兄様ポール

「内緒よ。あの先に秘密の出入口があるの。殿下はそこからお城を抜け出していたのね。貴女に会いたかったのかしら?アイラ」


「え?」

 お継母様の悪戯っぽい微笑みは、幼女の私から見ても若々しいって言うか、もう子供っぽい。

 そんな無邪気さすら、今はただ懐かしくて。


 いや、それよりもロラン王子だ。

 わざわざ、本当に私に会いに来たの?


 お城、抜け出してまで?


 あぁ、もう!

「王子様も王子様ですけど、企みましたね?お継母様⁉︎」

「あら?私ですか?」

「ロラン殿下が1人で此処へ動けるとは思えません。お継母様がいるから!そう王様たちに進言されましたね。私と殿下を、偶然に、そして印象的に出会わせる様に」

「…ね、本当に5歳なの?アイラ」

「お継母様の教えのお陰ですわ」


 お継母様の才能スキルは賢者。

 この賢さ、妙な方へ尖ってると思うのは私だけじゃない筈。


 クヮアー『親子だよなぁー』

 ピィー『血は全く繋がってないのに』

 ガォオオーン『それな』


 だから!

 偶には私の味方してよ‼︎ あなた達!

 

 

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