第27話 シャトナー伯爵の思惑
「フム…。不味い…な」
国王派の武の重鎮、スチュワート辺境伯からの『アイラ移送』の申出。
アイラの兄たるポールによる秘密の企み。
アイラの
確かに、この策だとアイラがスチュワート辺境伯の領都にいた方が良い。
だが、彼女がいるお陰で今年の大豊作がある。
彼女の…、彼女の従魔達の加護が、この街周辺にも及んでいるから。
そして、スチュワート辺境伯の思惑もそこにある。
伯の領地は決して豊かな土地とは言えない。
国境警備の要衝だが、それを支える生産力を有しないのが辺境伯の悩みと聞いていた。
国費で防衛戦力を、近衛師団を賄っている様だが、各領主から騎士団の協力をも得ているとか。その駐留費で他貴族と揉めているとも。
アイラの存在は、その問題の全てを解決する。
あの痩せた岩礁帯が肥沃な豊穣の地へと変貌すれば、スチュワート辺境伯は独立国と成れる程の国力を持てる筈だ。
独立国。
考え過ぎだろう。
だが、どうしても一抹の不安を拭い切れない。
スチュワート辺境伯は、その野心を持ち、野心に溺れる事なく大局を見据えて実行出来得るだけの男なのだから。
「国王派の内紛…。まさかな。貴族派としては歓迎とまではいかずとも、力を削ぐに越した事はないのだが。辺境伯だと派閥処か国力を削ぐ事にもなりかねん。流石にそれを望む訳には…。フム、一度会ってみるしかないか」
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「ほう?シャトナー伯爵が我が領を訪れると?」
「それも伯自身が、との事。如何致しましょう」
「拒む理由はあるまい。歓迎する、と伝えよ」
若造と思っていたのだがな。
どうやら現実的な判断と行動が出来る様だ。となれば彼者は味方にするが得策。派は違えど我等の覇道に必要な男と言えるな。
まぁ、それも含めて会うに越した事はあるまい。
ポールにアイラ。
この兄妹は、真に良き縁をもたらしてくれる。
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「そうか。会って下さるか」
「はい。歓迎するとの仰せでした」
「歓迎ね。それは秘密裏にと言う事では無く…、よし、ならば堂々と街道より訪問するぞ」
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しかも極秘会談じゃなくて、急遽とは言え公表しての会談。派閥の他貴族も大騒ぎ。そう、貴族の大騒ぎが私なんかにも聞こえてくるんだから、そりゃもう大騒ぎなんだよ!
クヮアー『人間って面倒だね』ハグハグ。
「ね、キィちゃん。食べるか呆れるか、どっちかにして」
沼の畔。
元のペットサイズになってる
ちなみに
で、私は畔の石に腰掛けて
うん。
側から見たらあぶねぇー?
ギリ、許される
クヮアー『で、アイラは動くの?』
「ココ、住み良いんだけどな。だってジャン叔父様の処って、どっちかと言うと軍事拠点だよ」
クヮアー『だからこそ、豊かな街にするべく我々を呼ぶんだろ?』
「て、事だよね。それ、皆んながいれば出来るの?」
クヮアー『あぁ。3頭いれば、何処だろうと豊かな穀倉地帯に出来ると思うよ。確かに海沿いなら
「手を貸してくれそうなの?」
クヮアー『彼奴はお人好しの考え無し。我等処かアイラの頼みでも2つ返事でやっちゃうよ』
いや、4聖神獣だろ。考えてよ。
「それはともかく。シャトナー伯爵様だけじゃなくてジャン叔父様にも連絡しなきゃ。『私はココを動かない』って。動くつもり、無い!」
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