第26話 ジャン・リューク=スチュワート辺境伯
フリュガリア・ラグナス連合王国辺境。
東の国境近くが、スチュワート辺境伯の領地。
そこの領都であるリスタルブライズへ、
ジャン=リューク・スチュワート辺境伯。
父ニコライ=サイモン公爵の従兄弟。
子のレクス=スチュワート次期辺境伯とは学友であり、とても気の合う相棒的存在になってる。
勿論、伯自身も我等兄妹と親しく、ある意味父上よりも隠し事や相談の相手になってもらっていた。
「アイラが?あの子は亡くなったと聞いていたが…」
「はい。公式の届けを出している以上、サイモン公爵家の庶子としては死別した妹という扱いになります。ならばこそ叔父上に相談したいのです」
「蘇り…、然る後の貴族籍の復活か。これは俺でもかなり難しいと言わざるを得んぞ」
「この地は国境緩衝空白地帯があり、隣国との衝突も度々だとか。また魔物の襲来も多く、だからこそ軍事力もですが医療分野においても他領より発展していると聞きます。この地で秘かに病の回復を行っていた、そういう話に持って行きたいのです」
「であったにしてもだ。尚の事公式の死亡届の意味が大きくなる。王国を欺いていたと言う事になるからな」
「ですので、この地での治療療養を父上は知らぬ事にしたいのです」
「ほう。つまり俺の方に
返す言葉が無い。
これまで私は、これが最善の策だと思っていた。
が、これは
「いや。確かにポールとしては最善だろう。少なくとも俺に代案は思いつかん。そこでだ」
叔父上が意味有り気に笑う。
「
辺境伯領の問題と言えば…、軍事費?
隣国に山賊、魔物と、この地の防衛力は王国でも重要性を増してる。でも、この地は生産には向かない。岩塊の多い土地の為に農業は厳しい。また産業にしても辺境過ぎて原料輸送等コストが大きすぎる。税収と軍事費とのバランスが取れてないんだ。その為国境駐屯兵を王国内各地から派遣する事で賄ってるけど、地方領主の中には、それを不服として駐屯遠征費を出す様王国に働きかけている者もいるとか。
「父はその件に関しては余りにも無関心です。国王派より貴族派の方が、叔父上に理解を示しているようにも思えますし」
「まさにな。ポールの言う通りだ。ならばこそ国王派を今少し動かして欲しいのだよ」
気持ちはわかる。子供の立場でも。
だが、子供の身では対処しようもない大事だ。私では何の返事も出来ない。
「まぁ、大きな事は言わん。公爵が『前向きに検討しようかな』程度を態度として表してくれれば…」
「言うだけならば父を説得できるかも…。いや、でも…」
一応善処を約束する。
また、叔父上もアイラの件を確約してくれた。
私は、これを成果として帰宅したのだが…。
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「帰ったか」
「はい。ポール様としては目的を果たされた、とお思いでしょうから。それにしても、お館様」
「あぁ。まさか向こうから来てくれるとは。ダッカード侯爵が手を出していた『聖獣使い』。本当に居たとはな」
公爵の確約とかより、
「アイラを手中に。この辺境の地を豊穣の大地に変える『神の娘』なのだからな」
そうすれば、緩衝空白地帯をも開拓出来る。
その軍事力と生産力があれば、この地を公国とする事も可能なのだよ。
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