第22話 美味しいクレープ
約束履行を強く
ピィー『アイラ、ホントにいいの?』
「こんなやり方、だいっきらい!」
どうしてほっといてくれないの?
私達は、ここでひっそりと暮らせたらいいのに。
騒がしくなった身の回り。
4聖神獣を意のままに操る子供がいる。
貴族の間に、そんな噂が走ったって聞いた。
その加護のお陰で、ヒガンザタンサラスは大豊作となっていると。
それは、噂じゃない。
此処に来て畑や果樹を見ると、いやでもわかる。
木々の実り。畑の隆盛。
なまじサイモンの家名を捨てたから、貴族達が私達をどうにかしようと躍起になってるらしい。
かと言って、サイモン家の名を出せば、事態は更に拗れる。
私を捨てた、死んだ者とした
公爵領は王国内ではいくつかの港を有する交易を主体とする商業領で、土地の半分は海岸に面して強い潮風が吹くから、決して肥沃な土地じゃない。
せっかくサイモン家からの刺客が来なくなったのに、蒸し返して顔に泥を塗る様な事をしたんじゃ、ますます面倒臭い話になる。
ジョーダンじゃない!
スローライフを目指す為に、これからどうしようかな?
私のそんな想いは、風に乗ってやってくる、とっても甘い香りによって遮られた。
「こ、この匂いって?まさか?クレープ?」
走って匂いの元を追いかけてみる。
そこに屋台があって、そこで焼かれていたのはクレープの生地。
薄く伸ばされた生地に果物のスライスを混ぜ込んだクリームを載っけた食べ物。
「さぁさぁ!王都で大人気のクレープ‼︎いよいよ、このヒガンザタンサラスでも新発売だぁ」
私は屋台に直様駆け寄る。
「お?おじょーちゃん、1つどうだい?」
「いくら?フルーツは選べるの?」
「銅貨5枚だ。フルーツはバナナとベリー、キゥイを選べるよ」
「バナナください」
銅貨5枚はオヤツとしては高い。
でも庶民が手が出ない金額じゃない。
うん。前世とほぼ変わんない。
強いてあげれば、チョコソース欲しい。
「うーん、甘い!美味しい‼︎」
クリームの甘さ、バナナの甘さが程良く混ざってる。何か久々にスイーツ食べたって感じ。
幸せ~!
「あぁ。おじょーちゃんのその顔が、今日1番の稼ぎだなぁ。へへっ。そんな顔が見たくって、親方に教わったクレープ、屋台で作れる様頑張ったんだぜ」
そう言われると、悪い気しないなぁ。
しかも、いつの間にか屋台に行列!
「ありがとうな、おじょーちゃん。その頬張る笑顔が1番の宣伝だよ」
西門愛衣楽が平凡な女だったから、この世界、あまり鏡見る事ないし、全然実感なかった。
アイラ=サイモン、結構美少女なんだよね、客観的に見て。公爵家の血筋と、大貴族の公爵が手を出してしまう程のメイドがブスの訳ないし。
しかも私は母似って言われてる。
CM効果抜群の美幼女の微笑み。
屋台のおじさんにいっぱいお礼言われて、もう1つクレープご馳走になった。
ピィー『アイラ、太るよ』
「なぁ、おじょーちゃん。明日までこのヒガンザタンサラスで商売しようと思うからさ。明日も来てくれよ。この街の子だろ?」
帰ろうとしたら、おじさんに呼び止められてしまった。
「あれ?違うのかい?」
「近くには住んでるけど…」
「この街の子じゃないのかい?あ、じゃあ、どうだい?今日はこの街に泊まらないか?おじさん、宿代くらい出すよ。そんだけの稼ぎが今日はあったからさ。おじょーちゃんのお陰だし」
優しげな笑顔に、私は頷く。
宿屋で。
ポシェットの中。甲羅に入った小さな状態のキィちゃんと、窓枠にコッソリ留まるカナ。
カナの目を通して、ベッドで寝ている私はおじさんを見ている。
「本当にこの子が。…お館様に報告。『例の子を確保』」
窓から飛び立つ小鳥を、密かにカナが追った。
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