第23話 私を巻き込まないで!

 ピィー『あの館みたい。多分何処かの貴族』


 カナが追いかけた小鳥は、どうやら伝書鳩みたい。この世界では何て言うんだろ?


 ピィー『通信鳥モルスバードだよ。離すと巣へ必ず帰る鳥だから、手紙運びに使われるんだ』


 まんま伝書鳩だわ。


 館から出て来たのは使用人?

 鳥を手に留まらせ、脚筒から手紙を出すと…、出て来たの男の人に何やら話している。

 聞いているのは、これは執事かな?

 髪の毛、後頭部に少ししか無いよ…、あ、どうでもいいか。


 ピィー『アイラ、話しから判断すると、此処はサイモン家とケンカしてるみたいよ』


 公爵お父様のライバル?政敵?

 同じ派閥での敵なのか、違う派閥か?


 クレープ美味しかったのに…。


 クヮアー『どうするの、アイラ。僕はいつでもどうにでも出来るよ』

 うん。同じ部屋にキィちゃんがいるから。

 私も今んとこ無防備に寝てられるんだけどね。


「私が逃げ出したら、あのおじさん達酷い目に合うのかな?」

 ピィー『それ、アイラが気にする事じゃないわ』

 クヮアー『僕もそう思う。どっちにしろ僕等はアイラの身を優先する。あの人達がどうなろうとね』


 気持ちは分かる。けど、政争に私を巻き込まないで欲しい。


 ほっといてよー!


 もう。寝てらんない。


 ムクリ。

「え、は?おじょーちゃん、どうした?トイレかい?」


 溜息。

「私、今も守られてるの」

「は、いや、おじょーちゃん、何を…」

「私の側に、いつだっているの。だからおじさんが通信鳥モルスバード飛ばしたのも、それが貴族の館に行った事も全部分かるんだ」

「…は、ば、馬鹿な」

「ごめんね、おじさん。貴族の人に怒られてね」


 おじさんの前に、拳大の水球。

 それが勢いよくおじさんの鳩尾にヒットする!


「ぐ、はっ」

 ドサッ。


「ごめん、コロ。遅くなったけど帰るから」

 ガォオオーン『待ちくたびれたぜ、オイラ』


 真夜中。

 流石に幼女だと眠いよ。

 コロの背に揺られて、私達は沼の畔に帰る。


 せっかくだから、カナに通信鳥モルスバードの真似事をしてもらう。

 お手紙、ギルドに届けてもらう。


 私は拉致されかけたって。


 ~後日談


 あのおじさんはギルドマスター・スレインさんに保護された。

 任務失敗の工作員は、敵に逃げ込まないと消されるんだとか。

 おー、怖。


 サイモン公爵お父様と同じ国王派の貴族で、顔役を成り代わろうと企むダッカード侯爵の手の者だったんだとか。


 この件。

 面倒なトコに飛び火しちゃったんだ…。


 ☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆


「聞き捨てならないな。ダッカード侯爵家がアイラに手を出した?」


 ヒガンザタンサラスはシャトナー伯爵家の、いや我が国有数の商都。他派閥は勿論、他国の諜報員も紛れ込んでいる。

 ポールの手の者も。


 その諜報員から火急の知らせが舞い込んできたと聞き、通信鳥モルスバードで送られてきた文を読むと…。


「父上に知られると色々不味い。アイラは独力で凌いだらしいが。シャトナー伯には弱味を握られる事になるが、この件、外部に漏らして欲しくはないな。よし、私が直接、伯と話したい。そう先方に伝えてもらえるか?」


 せっかくだ。

 積もる話もしようか、アイラよ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る