第19話 だってぇー、しょうがないじゃん

 ピィー『アイラ、オークの集落にギルドマスター達が行った』

 クヮアー『あらら、バレてんじゃん』

 ガォオオーン『オイラ達のせいじゃないよね』


「やっぱ換金は早まったか?でもなぁ、あれだけの素材、置いとく訳にもいかないでしょ」


 グレートボアを倒した数日後、私達はオークの群れと偶然出会ってしまった。

 オンナを認めたオーク達に執拗に狙われたから、集落毎群れを退治する事にしたんだけど、結構大きな集落だったから、素材の量も莫大になっちゃって、部屋に置いとける量じゃなくなったんだよね。


 とは言えヒガンザタンサラスに持ってくのは流石にヤバい。持ち込まれても不思議じゃない大都会って事で、私達は此処の御領主、シャトナー伯爵の領都エルトプライムバーグへ持って行く事にした。


 換金はスムーズにいった。

 これだけの大都会だ。幼女の動きなんて誰も注意は払わない。しかも今回、私はなけなしの一丁羅を着て換金に望んだ。

 思惑通り、貴族の子がお使いで換金に来たと思われ、全てはスムーズにいった。

 結構大金になったので、せっかくの大都会だし色々買い物して過ごしたんだ。

 久々に思っ切り買い物したぞー。

 うん、余は満足じゃ。


 ピィー『アイラ、オッさんぽい』


 誰も何も言ってないし、オークの集落はヒガンザタンサラスにバレてないんだ、って思ってたんだけど。

 換金は兎も角、食材調達に行かないといけない状況になってるんだよね。


「とりあえず買い物いくよ。もし、なんかあったらその時考えればいいよ」

 クヮアー『本当に考えてる?アイラ』

「そんなの、当たって砕け…ちる!」

 ピィー『だから散っちゃあダメなんだって』


 で、街に繰り出したんだけど、私達はまたギルドに拉致されたんだよねー。

 クヮアー『絶対、危機感無いよね、アイラ』


 ギルドの奥の部屋。ちょっと豪華な応接間。


 テーブル挟んで、真向かいに、あの人確かギルドマスターのスレインさん。と、コッチの人は役場の人だったっけ?確かヘイスティングさん。


「先ずはお礼を言うよ、アイラちゃん。グレートボア退治、それにオークの集落撲滅。この街が壊滅するかもしれなかった事態を未然に食い止めてくれた。本当に感謝するよ」


 頭を下げるスレインさん。

 そんな、恐縮しちゃうよ。それにグレートボアは美味しく頂いたし。


「多分、だと思うけど、はっきりアイラちゃんの口から聞きたいんだ。2つあるんだけど、君はアイラ=サイモンで間違いはないのかな」

「その家名は捨てました」


 否定はしない。でも、その姓を名乗る事は絶対にしない。その名の幼女は、もう数ヶ月前に死んでいるんだから。


「家名は捨てた、か。その答えで充分だ。正直に答えてくれてありがとう。もう1つは、アイラちゃんは『聖獣使い』なんだよね。共にいる3体の魔物は4聖神獣。その認識で間違いないかな」


 頷くしかない。


「間違いないんだね。それにしても凄い才能スキルだ。アイラちゃんは神の御使なのかな」


 それは流石に否定する。

 私は神の御情けで、この世界に転生させてもらったしがない小市民です。尤も異世界転生については隠し通すけど…。


「只の子供か。うん、アイラちゃんを只の子供と呼ぶのは、私の中の何かが全力で否定するよ」


 うー。ここは納得するしかないか。

 どうしたものかな。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る