第6話 泣きまねって恥ずいんだからね!

 冒険者ギルドの一室。

 門番さんに拉致された私は、今この部屋に門番さんといます。


 ここは不安げな幼女の表情カオで。


「あぁ、その。なぁ、本当にただ話を聞きたいだけなんだ。なぁんも怖い事ないから」


 不安げな表情カオ、継続中…。


「お遣い、感心だねぇ。その、何処の村から来たんだい?エシス?それともミンタナかな?」


 近場の村だ。この1週間でその位は把握した。


 子供の足で来れる場所って、そんなもん。そして、その村にはギルドは無い。村長さんと話して、そこからこの街に連絡がいく事になってるみたい。

 緊急の時には、早く連絡出来る様に魔法の手紙鳥もあるとか。コレって書いた文が折紙の鳥になってギルド迄飛んで行く擬似生命紙。

 ただでさえ高価な紙に魔法を掛けたとんでもない代物。でも、この辺の御領主様は「念の為」と各村の村長さんちに数枚渡してるんだって。


 領民の事を考えてる、凄い良い領主だよね。


 私が転生して、この辺に送られてきたのもそれが大きいってコロ達に聞いた。4聖神獣の加護があるとしても、やはり良心的な貴族の元が住みやすいだろうと。

 素直に普通の貴族の子でも良かったんじゃ?


 ピィー『それじゃアタシ達の居場所がないよ、アイラ』


 だよねー。


 そういう事を思い出しながら、不安げな表情カオ続行中なんだけどね。門番のオジサン、私を笑わそう、和まそうと一生懸命に話しかけてくれてる。


 くれてるんだけどね。

 門番って、外に睨みを利かせる役割もあるからかな?途轍もなく厳つい顔してるの。モミアゲからアゴ、鼻や口周り含めて凄いお髭もあって、童話に出てくる人喰い鬼もかくや、って人相だから。声も低くて太いし、大きいし。


 素の私でも見た目は充分怖い。

 せめて声くらい小さければいいのに。


 何か怒鳴られてるみたいで、もう泣いちゃうよ。

 私の瞳がウルウルしてきたからか。門番さん、慌て出して…。


 と、そこへドアが開いて。

「おい、何怒鳴ってるんだ?お前、子供を泣かせてどうするんだよ」

「い、いや、その。私はただ話を聞こうと…」

 入ってきたのは確か…、ギルドのお偉いさん?

 それに?誰?若いけど…、何?お役人風の男の人と、あ、こないだ受付にいて換金してくれた人だわ。え~と、そう、レーナさん。


「顔、怖いし声も大きいんだから、もっとその辺意識してよ、お父さん」


 は?

 こ、この門番さんて、レーナさんのお父さん?


 似てねぇー!

 レーナさん、お母さん似なんだろうな。


「ごめんなさいね」

「いえ、その…」

「ううん。実の娘アタシがあやされても号泣したって聞いてるから。あの顔は怖くて当然。『お前の父ちゃん、人喰い鬼オーガ』って子供の頃散々だったんだから」


 マジで人喰い鬼呼ばわりされてたのか。

 そんなのを幼女の相手さすなよ、ったく。


「でね、アイラちゃん。お姉さん達、聞きたい事あるの。さっきお父さんも聞いてたけど、何処の村から来たのかなぁ?」


 本当に親子か?

 共通のパーツが1つも無いよ?


「歩いてきたんだよね?なら、エシスかミンタナだと思うんだ。どっちなのかな」


 泣きまね続行!


 コロ達経由で、神様からサイモン家の事、聞いたんだ。

 この何たら世界の大きな大陸にある何ちゃらって王国~うん、今私達がいる街も含まれてるって事なんだけど、この国の大貴族なんだって。

 つまり私は、その貴族の領都からこの辺りに捨てられたという事。


「わかんない」

 被りを振って、そう答えるしかない。


 5~6歳児。地理を把握してる子なんてそうはいない。それはレーナさんも納得出来るんだろう。

「うーん。じゃあしょうがないなぁ。ね、あの素材、とても綺麗な処理してたけど、あれ、お父さんがしてくれたのかな?」


 被りを振るしかない。

 捌いたのはカナで、洗ったのはキィちゃん。

 ホントに魔法って凄い。

 ありえなーい、うそみたーいって感じで、解体され、洗って磨かれて。

 それをキィちゃんの格納魔法でしまってた。

 そのキィちゃんがポシェットにいるから、私がポシェットから素材を出してる様に見えてたんだ。


 そんなの言えないよ。

 なので泣きまね続行中!


 さて、どうしたものか。

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