第4話 いてはいけない子

 棚に並ぶお塩や胡椒。

 へへへ。思わずニヤついてしまうわ。


 ピィー『アイラ、変!』


 「ちょっと、カナ?言い方!」

 今は4聖神獣かもしんないけど、元はペットなんだよ?私は飼い主!皆の世話をしてたの私‼︎


 何はともあれ、無事、魔物の素材換金とお買物が出来ました。子供のお遣いも、稀にあるみたいで、門番の兵隊さんも、まぁ憐れんでくれてる気もするけど、ギルドや市場を案内してくれた。

 ギルドも市場の人も、普通に接してくれたから、私みたいな子供がやって来るのも、それ程珍しい事じゃないんだと思う。


 ついでに、市場で種も買う事が出来た。

 これで、ちょっとした畑も出来ると思う。


 コロに聞いたら、大地を耕すのは「お茶の子さいさい」って。今時使わないよ、その言葉。


 ココ、陽当たりもいいし。いい畑になると思うんだ。


「カナ、外に行くよ。コロが畑耕してると思う」

 ピィー『さっきやってたから、もう出来たんじゃない?』

「さっすがー!仕事早いねー‼︎」


 沼の辺り。陽当たりの良い場所が程良く耕されてる。そこへ野菜の種を蒔いていく。


 ガォオオーン『オイラ達の加護があるから、とっても美味いモノになるよ、アイラ』

「お、それは楽しみ」


 この世界に来てまだ数日。

 私は野性に染まりつつある。1人じゃ本当に心細かったと思う。でもこの子達がいる。コロ、カナ、キィちゃんがいるから、以前の日常のままでいられる。

 皆んなとともに、この世界に連れてきてくれた神様に感謝。


 ピィー『そうだ、アイラ。その神様から伝言があるんだ』

 ガォオオーン『そうそう。ちょっと面倒なんだけど』

 クヮアー『僕らもフォローするから』


 何々?え?せっかくのんびりロビンソンクルーソーやってたのに?


 ピィー『アイラの、その姿なんだけど』

 クヮアー『実は、この世界のある女の子の姿。丁度都合が良かったんだ』


「都合?これ、私の身体を変えたんじゃなくて」


 ガォオオーン『この世界の、とある事情で亡くなってしまった女の子の身体を器として転生したんだ』


「じゃあ、私は意識だけ?心だけこの世界に来たの?」


 ピィー『少し違う。その子は器。そこにアイラという生命を注ぎ込んだ。その身体には心、知識は勿論、アイラの経験、人生も宿ってる。だからアイラがやって来た家事をスムーズに出来てる』


 よかった。中身は全て私自身なのね。


「で、面倒って?」


 ピィー『その子の素性。実はその子の名前も"アイラ=サイモン"なんだ』

「待って、待って!この世界の姓持ちってお貴族様だって言ってたわよね?は?何で貴族の子が1人で?」

 ガォオオーン『アイラ、その子…つまり君は、この世界で珍しい才能スキル無しなんだ。いや、本当はあるけど、唯一無二だから、才能スキル判定晶石が反応しなかった。能無し落ちこぼれとして貴族家から追放されちゃったんだよ』

「こんな子供を?じゃあ、この身体の子が亡くなったのは?」

 クヮアー『1人じゃ生きていけないよね』


 唯一無二の才能スキル

 それって?


 ピィー『うん。アタシ達の事。「聖獣使い」なんてこの世界に今迄無かったから』

 ガォオオーン『確かにアイラには力も魔力も何も無い。剣を振るう事も難しいし、魔法を唱える事も出来ない。でもオイラ達の加護があるんだ』

 クヮアー『僕の加護が防御。カナのが癒し。コロが恵み。だからアイラはケガしないし、しても直ぐ治る。飢える事も無い』


 別の意味でチートだわ。


「それが才能スキル。でも判定に出ない。じゃあステータスとかにも?」

 クヮアー『出ないかもね。だから「鑑定」受けても「才能スキル無し」になっちゃう』


 才能スキル

 この世界では人生そのもの。


 人は5歳の誕生日に教会で「鑑定」を受ける。

 そこで神より授かりし「才能スキル」で人生=職業が決まってしまう。

 確か、貴族なら高位才能スキルが殆ど。

 才能スキル無しなんて…。


 本当に面倒だわ。

 捨てられた、存在しちゃいけない貴族の事って事だよね。益々街では暮らせないわ。

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