幼女が街にやって来た
第3話 辺境の街 ヒガンザタンサラス
辺境の街ヒガンザタンサラス。
この街の職員である
街の郊外にあるラズマの丘。
その中腹にゴミ捨て場があり、ある程度溜まったら埋め立てていたのだが、先日の長雨のせいで先の崖淵の山肌が崩れ、埋めた筈のゴミが露出し始めていたのだ。
崖の下には沼地があり、ゴミのせいで水が濁り始めていた。あの沼から湧き出、流れ出る水は最終的に街の中央を流れるタウナ川に合流する。まだ水の濁りが表立ってないが、それも時間の問題だ。
ゴミの見廻は私の仕事だから、他の職員は気付いてはいないだろう。でも、あの山肌の修復となると大地属性の高位魔法が必要だ。冒険者ギルドに話を持っていかないといけないが、そもそも雨で崩れる程の端に埋め立てる事が問題だ。私の管理を問われてしまう。
それに沼地の清掃も。だがこれも水属性の高位魔法が必要だし、あの沼地へと続く道はジランの森を通らないといけない。
とは言え、あの森にいる魔物はランクC~D。中堅冒険者でないと…。なんて大事に。
こうして悩んでる間にも事態は悪くなるばかりだ…。一体どうすれば…。
何の解決策もないまま、ゴミ捨て場の見廻に来て…、驚いた。
山肌が修復されている。
しかも沼地も綺麗に。水の濁りも消え、辺りの木々や草花も蘇ってる!
これは夢か?
夢なら覚めないでくれ!
うん?沼地にいるのは?
大亀?あんな魔物がいつの間に住み着いた?
それに狼?森の主なのか?
確かに街からは丘1つ隔てている。途中には『地獄の亀裂』と呼ばれる地割れもあり、吊橋で渡る様になっている。アソコは魔物達もそうそう超える事は出来ない。なので街が襲われる事はなかろう。
私の
は?あれは?
子供?それも女の子か?
どうやってあんなところに?
ダメだ。もう、助けられない⁉︎
は?狼が尻尾を振ってる?
一緒に?は?何処へ行こうとしている?
まだ私は夢を、幻を見ているのか?
私1人では、あの沼地まで行って確かめる事なんて出来ない。どうすれば…。
あの場面。女の子を見た翌日。
街の門番をしている衛士達の雑談で気になる事を聞いた。
小さな女の子がやって来て、街のギルドの場所を聞いてきた、と。
なんでもお遣いで、魔物の素材を換金して、そのお金で買物をすると。肩に紅い小鳥を留まらせた、銀髪の、ゆくゆくはかなりの美人に成るであろう女の子で、でも身なりはかなり貧しそうな、もしかしたら捨てられていた衣類ではと思える服を着ていたらしい。
門に嵌っている犯罪者確認晶石も青いまま反応しなかったので、門番は唯々不憫に思いギルドと市場への道案内をしたんだとか。
「すげぇ可愛い子供でさ。身なりはかなり貧しそうなんだが、あんな小さいのに計算も出来るみたいでお金も間違えず、お釣りもタグの親父より早く計算してたぜ」
そんなバカな。
商人か役人、冒険者でもない限り計算なんて出来る筈が?
「ありゃあ訳有りだな」
確かに。
ハッと思いついた。
訳有り…、森…あの沼地に狼といた女の子では?
私は早速、ギルドへ行って確認してみた。
「女の子が魔物の素材を換金に来たそうだが?」
「ええと、知ってる?」
冒険者ギルドの受付主任サンドラが今居る受付嬢に尋ねる。
「いえ、私は…」
彼女は知らないようだ。
「昼過ぎかしら。なら受付はレーナね。あの子は今日はアガリ?」
「いえ。上で休憩中ですが…、あ、降りて来た」
ギルドの奥の階段を降りて来た女性。
人気受付嬢と聞くレーナ。
「レーナ、小さな女の子が魔物の素材を換金に来たみたいだけど」
「あ、はい。私が受け付けて処理しました。お遣いって言ってましたが、ランクDのオーク肉や魔石、Eのゴブリンの魔石や爪を持って来ていました。処理も綺麗だったので高品質素材として処理しましたが」
そう言いながら、後ろの棚から素材の入った箱を出す。まだ仕訳整理されてない分だ。
「どれ?モノは…フーン、成る程。うん、コレは綺麗。丁寧な処理ね。高品質素材と判断して問題ないわ」
「で、その子の名前は?」
「えーと、買付帳に署名してもらったのよね?」
「はい、あ、この子です」
買付帳に書かれている文字は…。
コレは…、本当に子供の字か?
綺麗な、間違いなく教養のある字だ。
「名は…アイラ?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます