藤子・F・不二雄 SF短編コンプリート・ワークス 1巻 ミノタウロスの皿

 藤子・F・不二雄の『SF短編コンプリート・ワークス』がけっこう前からリリース中です。

(全10巻予定で、現在6巻が出たあたりでそれ以降は予約注文になってます)


 1巻の『ミノタウロスの皿』が発売されると、直ぐ買ったのですが、そういえば感想文的なことはなにも書いてなかったな……と。


 すこし書きます。


 わたし、昭和の末に発売された中央公論社の分厚い『SF全短編』全3巻を今なお持ってますので、読めればいいし、愛蔵版的なものは特にいらないかなと思ってました。


 でも初回特典に見事に釣られてしまいましたw


 特典は、なんと『ミノタウロスの皿』の加筆修正が入ってない1969年のビッグコミック掲載版の冊子でした!


 それを知った瞬間、即Amazonポチってました。


 なにがすごいのか。

 わたし『ミノタウロスの皿』は、特に好きな短編で、でも大幅加筆修正版しか読んだことがなかったんですね。


 そっちは36ページありますが、ビッグコミック掲載時はなんと、22ページだったんです!


 わずか22ページであの話が入って、成立!? 読んでみたいじゃないですか。

 どう考えても22ページだと、かなりむりがあるんじゃないかとしか思えなくて。

 どんな構成になってるのかなど気になりました。


 

 そして……。

 もう読んでからだいぶ経ちましたが……加筆修正版が正解なのか、初出のほうが正解なのか……わからん! という感じです。


 わずか22ページで、あの話を収めてしまう手腕は見事でした。


 けど、やや詰め込み感はあります。

 今まで読んできた加筆修正版と比べると、加筆修正版のほうは、わたしの主観ではありますが、加筆し過ぎ……のような印象も受けるよう見方が変わってしまいました。


 極限まで削ぎ落とされた22ページのほうは、タイトな美しさを感じます。

 さすが、ご自身を〝短編作家〟だと仰ってただけのことはあります(大長編ドラえもん描く直前の話)

 短くまとめるほうが難易度は高いでしょう。

 

 けど、加筆されたほうは確かに、より後半の衝撃度が高いです。

 詰め込み感もなくなり、ゆったりとしています。


 一般的には、やはり大幅加筆修正版のほうが良いと言われるかと思います。

 人に勧めるなら、どちらかと問うならば、やはり大幅加筆修正版のほうです。


 でも、わたしには、どっちが正解なんだか、わかりません! 読んでしまったら悩んでしまうこととなってしまいました……。


 36枚。

 わたし的には、そこまで、枚数を割くネタでもない……気もするんですね。

 たぶん、F先生『猿の惑星』を観て、そういう感じも入れたかったんじゃないかと。 


 あ、ちなみ『ミノタウロスの皿』ですが、主人公の名前が出てきません。

『21エモン』の主人公が大人になった後日談としても機能してると思います。

 主人公に名前がなかったのは、それを意図してたんじゃないかと思いました。

『21エモン』は子ども向けとして描かれましたが、割とブラックなネタもあります。


 藤子・F先生もまったく罪な人です。いや、小学館に振り回されてるような……。

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