箸休めエッセイ 1 白人のイケメン

 難波のタワレコの前を通りかかると、誰かと待ち合わせでもしていたのだろうか。

 そこで立ち尽くしていた白人男性が唐突に声をかけてきた。


 20代半ばくらいだろうか。清潔感があり、割とイケメンだった。

 

 なんだろうと思いつつ、やりとりするものの英語は通じない。どこのお国の言語かわからなかった。


 言葉が通じないので、身振り手振りでジェスチャーしてくるイケメン。


 どうやら、わたしの持ってるタバコを1本おくれと言いたいらしい。

 

 イケメンにタバコを差し出した。

 わたしの吸ってたのは、メビウスのオプションパープルの1ミリ。メンソール。

 そんな軽くてメンソールでもいいのかな、と思いつつも、イケメンは1本受け取った。


 すると、今度は自分の吸ってたタバコを1本、わたしにくれた。


 タバコをくれと言ってるのではなかった。

 タバコを1本トレードしようと言いたかったようだ。日本のタバコを吸ってみたかったとか?



 交渉成立すると、イケメンは満足げにニコっと笑みを浮かべ、拳を差し出してきた。


 わたしは、イケメンとグータッチをし、その場を立ち去った。



 〈完〉

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