妖怪百鬼夜行 マンガ家アシ編 2

2023.10.31


 私、一旦商業デビューした後、師匠のアシスタントを辞めた。

 マンガ1本、それも読み切り短編ばかりじゃ食えなくてアシと二足のわらじに戻りたかったんだけど……。


 師匠は、お子さんお二人いらして、奥さん専業主婦だし、連載が1本しかない状態も多く(恐ろしいことに、全く仕事がない月もあった……)

 そんなアシ雇うような余裕って、本当はなかったというかキツかったんじゃないかと思う。


 それと、めっちゃ売れてるマンガ家さんのアシスタントも経験してみたかったので、師匠とは別のマンガ家さんのところで仕事しようと考えた。


 丁度、ある売れっ子マンガ家さんがアシを募集していたので、応募してみた。


 後で聞くとかなりの数の求人が来ていたらしい。

 私は一次通ったので、そのマンガ家さんの仕事場で面接を受けた。


 面接を待ってる間、碇ゲンドウによく似た感じの男性が珈琲を淹れて、出してくれた。


 もし受かったとしたら、ゲンドウはパイセンになるのかと思った。


 それで、背景メインのアシスタントとして採用されたのは、私一人だけだった。

 そんなに求人が多いと、落とされるだろうなと思ってただけに、採用されたことに驚いてた。


 でも、要は求人の殆どは妖怪だったというだけだったw

 別に私が特別使えるアシスタントというわけではありません。


 それくらい酷い求人ばかりが現れたそうです。そう、そのマンガ家さんは苦笑しながら愚痴っていた。


 てか、面接受けた日、私に珈琲出してくれた、碇ゲンドウは? 見掛けないけど?

 そんなことを臨時で仕上げのみを手伝いに来る女性に聞いた。


「えっ? そんな人居ませんよ。アシスタントはここに居るだけですけど」


 えっ? ゲンドウパイセンは?


 常時仕上げ担当のアシの女性1人と、臨時の仕上げ担当の女性が3人……。

   

 それと、私のみ。


 碇ゲンドウは追っかけ的なファンなのか、落とされた求人か、妖怪だったようだ。


 その後、ゲンドウは読者との交流イベントを行った時の打ち上げに、また現れたw

 懐かしいと思ったw


 相変わらずゲンドウに似てたことから、女性たちには割とウケてました。

(もしかして、当時、コミケに居たゲンドウのコスプレをしていたそっくりさんの方と同一人物? だとしたら当時は、その筋では割と知られてた人とか)


 まぁ、そんなヤバい妖怪でもなかった。ちょっとしたことなら、無償で手伝ってくれるとかなので、むしろ有益?


 ちなみに、仕事場は戸籍上男というのは、私だけでした。

 そのマンガ家さんは男性ですが、仕事は別の部屋でした。


 そのマンガ家さんの作風が少女マンガに寄せた感じというのもあったのか、歴代でも専属のアシで戸籍上男というのは私だけかも。

 臨時で手伝いに、男性の方(別のプロのマンガ家さんだったと思うけど名前覚えてないです)が来たことはあったらしいけど。


 女性しか居ない仕事場でした。そのマンガ家さんは、別部屋だし、居ないことや行方不明になってたこともありましたし。


 締め切りとっくに過ぎてて、ヤベえ! ってなってる時に、どう処理して良いのか分からない箇所があり、そのマンガ家さんの部屋へと聞きに行くと、そのマンガ家さんは、ファミ通を読んでいた……ということもありました。


 まぁ、資料として必要だから見てたということにしておきます。


 話が逸れました。

 碇ゲンドウのような妖怪だったら、良いんじゃないかと思います。

(誰も、特に迷惑してなかったと思うので)


 にしても、妖怪って何なんでしょうかね?


 たぶん、クリエイター職じゃなくて、一般的な会社員とかなら、問題なく仕事すると思うんですけどね。何かしら合ってる仕事はあるかと。

 私に珈琲出してくれたし。

 


 一般常識は持ってるけど、仕事ぶりが、著しく感覚的に逸脱してる、ズレてるだけというパターンもありましたし、

 まぁ、何とか使えんこともない感じでも、大先生をはじめ、誰にでもタメ口とかも居てびっくりしたこともあった。


 

 箸の持ち方が、擬似生命体だった妖怪に関しては、今思えば発達障害の協調性運動障害かなという気がする。

 マンガ家は座りっぱなし、運動不足になりがちなので、時折り気分転換にキャッチボールなどもしたけど、その時も擬似生命体と呼ばれた妖怪は、ろくにキャッチボールすらも出来ないというレベルの運動音痴だった。


 師匠とキャッチボールの相手をしていたその妖怪は怯えてましたね……(投げるボールに殺意がこもってたのもかもw) 

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