異端めがすこしは売れたいと考える その5 完結編
問題だ!!
私の最も好きな藤子・F先生の『モジャ公』が売れず、不遇な扱いを受けてるなんて。
……まあ、ドラえもんの光があまりに強過ぎるし、そのギャップで内のブラックさ際立ってしまう。
「自殺フェスティバル」だとか、メインキャラの3人組が自殺しちゃうショッキング描写もある。
作中では、様々な惨い自殺方法まで色々とアイデアが出されるといった始末で……もう、そんなの、今だと完全にアウトでしょ! なんてネタがあったり、大残酷な映画監督ヤコペッティをモデルにしたキャラなんかも登場。
作中でも、映画監督と言う設定でタコペッティというキャラだ。
まぁ、ドラえもんにも残酷ショッキング映画の影響入ってる回あるんだけどね。
そのタコペッティさんが重要な役割を担う回の、シャングリラという星へ行くところは、少しマニアックかもしれない。
いや、そうは言っても、そこはF先生だ、小学生にでも理解出来るよう、分かりやすく描くというのが非常に巧みだ。
シャングリラという星の設定が、今で言うと映画『マトリックス』を69年という年にして既に先取りしているようになっている。
仮装空間をきちんと描いてるのである。どういったロジックで成立しているのかまで、丁寧に。
てか、『マトリックス』みたいな映画が制作されるのが遅過ぎるとも言える。
69年という年は、日本でフィリップ・K・ディックの『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』が刊行された。
ディックとしても絶好調な時期なのであった。
サイバーパンクものは、ディックの遺伝子を引き継いだ作家たちによって80年代に誕生した。
ジェイムズ・ティプトリーJr.なんかも72年か? その辺りで、サイバーパンクの先駆的かつ、映画『アバター』の元ネタなんじゃないの? と思うようなものを書いてたりしていた。
つまり、『マトリックス』のルーツは、ディックということになるだろう。
ディックとしても、十八番のネタだ。
F先生は、早川のSFマガジンを創刊当時から愛読していたと語っていた通り、『モジャ公』のシャングリラの設定は、ディックに触発されたのではないかと推測する。
『モジャ公』にも、サイバーパンクの先駆的ネタが描かれていたのである!
そう言う感じで、考察するといささかマニアックになってしまう。
ディックも今でこそ、小説が沢山映画化しているが、ディックはSF作家の中でも
映画化一発目の『ブレードランナー』の完成を観ることなく、生涯を閉じた。
更に言うなら、SF作家ではなく、純文学作家になりたかったが、ディックの生涯で刊行された純文学作品は1本だけという不遇さだ。
(それ、映画化されてるけど、DVDにすらなってない。なんとかして!)
F先生も、何故『モジャ公』が売れなかったのか散々考えたはず。
ドラえもんなど売れたものとの大きな違いはまだある。
舞台が現代、馴染みのある日常じゃないといった点だ。
まるっきり異世界になっちゃってるところも大きいのかなと。
そう言っても、今溢れてる異世界ファンタジーのようなテンプレのある異世界じゃないから、入り難いのかも。
しかも、ファンタジーではない。
ガチ異世界 w
『異世界に旅立ったら、しずちゃん枠のヒロインのことすっかり忘れてて登場しない件』
ラノベにするなら、そんなタイトル? なわけはないが。
ガチ異世界と言っても『風の谷のナウシカ』ほどではないか。
ナウシカも原作は今ひとつマニアックなんだっけ? 読み難いとは言われてる。
逆に私は、ナウシカはアニメ版の方はあんまり観てなくて、専ら原作派。
面白過ぎるじゃないか!
『モジャ公』は、もはや、すこしふしぎじゃなくて、すげえふしぎ……なのかもしれない。
何気ないところに、すこし不思議なことが起こるという設定になってはいない。
F先生テンプレから、著しく逸脱ってところだ。
でも、売れてなくて、あまり読まれてないだけで、読んだ人は概ね面白い! と言うと思うんだけどな。
フツーだよ、フツーにバツグンに面白い。
ノって描いてただけに、演出もキレッキレ!
めちゃくちゃすげえ! 今だと、このマンガがすごいで紹介される感じだろう。
フツーだけど、マニアックな感は確かに否めないというだけで。
やはり、エゴの配分が多いのだろうか。
結局、売れるには『モジャ公』ではなく、ドラえもんを書くようなスタンスで取り組まねばならないのだろう。
ドラえもんは、ドラえもんで、大長編ドラえもん以前のまだ作風が安定してない頃がとても愛しい。
まず、第1話で、かなり爆笑した。
のび太には、ジャイ子と結婚する未来が待ち受け、そんな描写があったり、余程要領が悪いのか、どこにも就職出来ず。
なら自ら会社の社長になるという落語的な展開からの(違うバージョンもある)、その会社が火事で丸焼け、結果借金地獄に陥る。
ジャイ子との子どもまで居たのに、どーすんだよ!
数えたら6人も子ども作ってた。
あと、大人になったのび太のキャラデザが、しずちゃんと結婚した世界線ののび太とは著しく違っている。
とことん、どうにも冴えない大人となっている。
同一人物に見えねえよ!
ちょっとどの巻の話か忘れてるけど(てんコミ7巻、手元に無くて『ウルトラミキサー』だったと思うけど違うかも)
秘密道具で、和式便器と冷蔵庫をミックスさせるというエピソードがあった。
便器の中に、冷蔵庫の中の食品類が収納されているのである。そんなことをして喜ぶドラえもんとのび太。
それを見て、仰天するのび太のママ。
そんなところだけ摘んで書くと、鬼畜系マンガかよ! と突っ込みたくなる。
すこしふきんしん……どころじゃねえよ!
ともあれ。
すこしふしぎ――それは、SF好きであるとか様々なエゴは少しだけという意味もあるのかもしれない。
F先生は、人気マンガ家になるには、どうすればという問いに答えている。
怒られない程度に、引用してみよう。
「ひとつの考え方として、普通の人であるべきと思うんです。その上で、なにか自分だけの世界を1つは持ってるべきじゃないか」
私には、『モジャ公』で辛酸を舐めた反省とも受け取れる。
ていうか、兎に角そんな発言を知った時、私は心底……絶望したよ!!!
普通の人であるべきなんて、私には逆立ちしてもムリゲーだもの。
普通の人が楽しめるようなものは、私には楽しめない、な。
例えば映画『レオン』なんて観ようとも思わないもの。
『タイタニック』すら観る気がせず、そのまんま現在に至ってる……とか、ちょっと怒られるか、呆れられそうだけど。
基本、少年ジャンプのマンガも読まない。
ロックなら、ニルヴァーナも特に? 興味ないななんて……本当に重症かもしれない。
私は、セクシャルマイノリティだけど、それよりそう言った感性のクッソマイノリティさの方が、とことん生きづらいよ!
話しの合う人が本当に居ない!
そんな悪の秘密結社ショッカーに改造人間にされてしまったような、もはや普通の人間の感性には戻れない私だけど、でも、割り切ってエロマンガを描け、それでも楽しいとも思えるし、今後はエゴの配分も少なくしようかと考えている。
〈おわり〉
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