異端めがすこしは売れたいと考える その2

 私は当時、マンガを描いたら、月刊漫画ガロ以外に持ち込むところは無いくらいに思っていた。


(その時点で、完全に売れるマンガというものに背を向けていた)


 ところが、ガロに持ち込むためのマンガのペン入れ中に、気が付いた。


 月刊漫画ガロは、原稿料が出ないということに。

 原稿募集要項をよく見たら、その旨が書かれてた。小さな字で……。


 ――もっとデッカく書いとけよ! 表紙の雑誌名のロゴと同じくらいデッカく!!


 私は、ガロしかないと思ってただけに暫く路頭に迷った。


(藤子・F・不二雄『未来の想い出』に、1人、ガロにマンガを描きたがってるキャラが出て来るが、そういうタイプに近い感じでした)


 私の師匠は言った。

「アフタヌーンに持って行けよ! 載るよ! たぶん。わざわざマイナーに行かなくても……」


 師匠はアフタヌーンの四季大賞を受賞してデビューし、連載を持っていたことから、色々アフタヌーンの怖い話を聞かされていて、私はどうも尻込みしていた。



 そんな中、1冊の本と出会った。


 駕籠真太郎さんの『人間以上』だ。

 当時、尖った人向けの音楽雑誌などでも紹介され評価されていた、マニアックなマンガだった。


 出版が久保書店だった。

 えっ、レモンピープルってこんなマンガ描いていいの!? 楽しそう!! とまた勘違いをやらかしたのである。


 駕籠真太郎さんのマンガは帯文に、現代美術家の会田誠のコメントが書かれてたりするような次元の違うものだ。

 端的に言ってアート寄り。


 でも、レモンピープルって、エロマンガ誌じゃね? と思い、念のためサービスカットのエロシーンも盛り込んでおいた。


 当時、自分はエロマンガを描いていると思い込んでいた。

 

 極端な話だが、ガロがダメなら、もうエロマンガでも良くね? と思ってしまい、割り切って描くことにしたのだった。


 けど、ワニマガジンなどのゴリゴリのエロマンガ誌に持ち込まないのは賢明な判断だった。

 ありがとう! 駕籠真太郎さん!


 当時、もう白夜書房の漫画ブリッコは、ホットミルクになっていた。

 ちなみに師匠は、アフタヌーンでデビュー以前に、別名義で、ブリッコにも描いていた。



 師匠はネーム(絵コンテ)書いたら、見てくださる方だった。

 そこでも、ネームを書いては見せを延々と繰り返した。

 つい楽しくて……。


 師匠は、割とハッキリ感想やアドバイスを言ってくださる方だったので、それに甘えてしまったのだった。


「いい加減にマンガ完成させて、持ち込みに行け!」

 師匠のお言葉は胸に刻んでおります。



 エロマンガの定義としては、私的には、今は内容の8割ほどはエロシーンで埋め尽くしたものと考えている。


 そうじゃないと難しいかもしれない。

 あるいは、投稿神として知られる三峯徹さんのお眼鏡にかなうものとか。


 当時、私がエロマンガだと思って描いてたものは、エロシーンが全体の2割くらいしかなかった……。


 当然、編集さんからはエロマンガと見なされておらず「エッチなものは描かないんですか?」と言われた。


「えっ、描いてるじゃないですか!?」


 そう言うと、編集さんに笑われてしまった……。


 その時からようやく、あれ? 私の描いてのってもしやエロマンガとは違う? と思い始めた。


 いやいや、エロさでならヤンマガに載ってるものに負けるレベルだ。

 最近だとジャンプに載ってた『ゆらぎ荘の幽奈さん』にだって負けるだろう。

 エロさで、ジャンプに負けてるってどうなん?

 

 レモンピープルは、別にエロを描かなくても良かった。漫画ブリッコもそうだったんじゃないかな?

 ただ、編集さん的には描いて欲しいと思ってはおり、やんわりとしか言われなかった。


 ていうか、どんなネームを提出しても、そのまんま通ってしまい、実質ネームチェックの意味あるん? と思ってた。


 感覚としては、原稿料が貰える同人誌?(ヒドイ言い方)


 でも、ウケてるんだかさっぱり判らんという手応えの無さは、少しやり難かった。


 現在、エゴサーチしてもデータベース的なものしかヒットしないので(海外の違法アップロードと) ウケてはなかったのだろう。


 けど、ほんのごく少数には刺さることもあるみたいで、アンケートハガキに好意的な感想を書いてくださった読者が4人ほど……はいた。


 それと、たまたま読んだという同業者の方の感想を、編集さんづてに聞くこともあった。


 昆童虫さんというマンガ家さんとは全く面識が無いのだが、昆童虫さんも面白いと仰ってたということも聞いた。


 何らかの下心があるとか、社交辞令じゃないので嬉しかった。


 昆童虫さんは、更にご自身のマンガの中で、私のことをちょろっとネタにして下さってた。

(そこの箇所って、ヨーロッパで刊行されたものはどのように訳されてるのか気になる……修正してるかな?)


 本当にお礼申し上げたいと思いつつ、面識ないもんだから現在まで言えずに至ってる。ツイッターにも居ないっぽい。


 あと、昆童虫さん、ローリングストーンズのアルバムからタイトル持ってきたもの描かれてたけど、もしや私がその前に盛大にビートルズのパロディ描いたから?

 

 レモンピープルで、ロックネタってどうなんだろう。

 オタクの人って、あんまりロックに興味無さげなイメージが……。

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