異端めがすこしは売れたいと考える(創作メモ&ドボンなエロマンガ道) その1 特殊エロマンガで初の原稿料貰う

 あまり認めたくないものだが、私というのは、無自覚・天然・鈍感と三拍子揃っている。


 念のため発達障害の検査を受けたことがあるが、診断基準は満たしてはいなかった。

 脳機能は辛うじて普通のラインらしい。フルスケールIQなんかも日本人の平均値だ。


 IQ検査には懐疑的で、そんなもの著しく低くなければ、どうということはないとも思っている。

 ちなみにアンディ・ウォーホルのIQはWikipediaでは86とある。ネタじゃないのか? と思うが、マジだったら結構大変だっただろう。境界知能スレスレというのは。



 私は割と早くから自分にマンガの才能が無いことに気が付いていた。

 

 なのに、何故マンガ家になろう――いきなり直ぐ生活は無理だろうから、アシスタントで修行しつつ――などと思ったのか。


 答えはシンプルで、社会不適合者だから他に選択肢が無かったのである。

 

 ヒット作を生み出し、ビッグになって故郷に錦を飾りたいなんて野心も無く、フツーに生活出来ればそれで良いといった志の低さだった。


 マンガを舐めてるとも言えるし、実際そう言われたりもした。

 また、同じような考え方でも、苦労の末、そこそこ成功したケースもある。



 専門学校卒業後、直ぐゲーム会社に就職し、デザイナーをやっていて、つくづくもう自分にはマンガ家しかないと思った。


 会社を辞める時、社長に「あと幾ら欲しいんだ?」と言われた。

 いや、給料をそこそこ貰えていてもお金の問題じゃなかった。

 心の底からつまらな過ぎて、地獄だった。

 クリエイター感のある人なんて音楽担当の人くらいなもんで、後は殆どDQN集団だったと思っていい。


 当時まだ社畜という言葉は無かったが、本当に会社に飼われているような気分だった。

 よく精神科行かなかったなと思うくらい、鬱っぽくノイローゼぎみだった。

 ゲームに興味も失い、辞めてからも3、4年ほどゲームしてない空白期間がある。


 会社が耐えられないほど苦痛なのは、向いてない、つまりそっちの世界での才能はないということだと思う。


 マンガ家さんのアシスタントを始めると、そこから一気に沈んでいた気分は吹っ飛んだ。

 一気に貧乏にもなったが。人間関係にもつくづく恵まれることになった。


 気質的にもそっちの方が合ってるなと思った。


 アシスタントの募集に応募するなら、背景カット数点持参するのが、割と当たり前なのだが、私は会社ではセクシーな女の子キャラばかり描かされていた。

 

 多少は背景の入ったものも描いてたが、それだけでは足りなかったので、JR高円寺駅を描いてきてと課題を出された。


 その頃、私はつくづく若く青くて……。

「見てろよ! 大友克洋のマンガのようなクールでかっこいいの描いてやらあ!! びびるがよい!! フハハハ!!」


 と思って描いた。


 ……そのモチベの高さと有り余るエネルギーだけは評価出来るかもしれない。


「おお、いいじゃん! 大友っぼい。使わせて貰うよ」

 と、確かに褒められはした。


 でも……。


「これ、描くのどれくらいかかった?」

 

 そこで、しまったとは思った。けど、嘘付くわけにもいかないので、正直に答えた。


「……3日です」


 呆れられたが、採用はされた。


 そりゃ、背景1点に3日もかけたら、それなりのもの描けて当たり前なのである。


 マンガで言えば、1コマに3日もかけるようなものだ。

 3時間程度で描かなきゃダメだろ。

 ゲーム会社でも納期はあっただろ、バカ。


 それがデカいキャンバスにアクリル画で背景を描くとなると話は別だが、マンガの原稿用紙にモノクロのペン画だ。



 その1年後には、私は商用のものとして初めてマンガを完成させるのだが、僅か20ページの短編で3ヶ月もかかった。


 幸いそれで原稿料を貰えたが、14万ほどにしかならないのに何を考えてたんだか。

 14万だったら、ひと月ですら生活するのも足りんだろ! どうやって生活するんだよ! w

 よく生きてたな、私……。


 原稿料について、見ず知らずの人にリプを貰ったことがあるけど、出版社の規模や発行部数などでなんとも言えない。

 まぁ、新人1ページ、平均1万と考えていいんじゃないかな。

 

 私の聞いた限りでは、永野護が90年代に1ページ7万貰ってたたとか(ソースは、ガイナックスのスタッフから)

 最も安いなと思ったところは、少女ホラー系で、私の半額以下。

 TLなんかも新人だと私より安かった。



 クリエイター業界あるあるかもしれないが、いつも「ここからが描いてて更に楽しくなるううう!」っていう良いところで、大抵描いてた絵を持って行かれてしまう。


 もっとちゃんと描き込ませろおおおッ! と本当に常に欲求不満だった。

 時間を気にせず、じっくり描き込みたい。


 そんな思いをぶつけまくって描いた……とてもくどい処女作であった。


 アシスタントの経験で、ここまで描いたら潰れてしまい印刷には出ないというのが判りそうなものなに、所々潰れるまで、描き込んだりスクリーントーン貼りまくったバカ!


 今思い出しても、やたらと楽しかったが、よく変なモチベと集中力が途切れなかったなと、そこしか褒められるところはない。


 まぁ、数をこなさないと上達はしない。失敗から学ぶしかないだろう。


 ちなみにその処女作という名の黒歴史は、海外サイトに違法アップロードされ、晒されている……。

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